2019年10月24日 第43号
連邦総選挙は21日に自由党の少数派政権で終了したが、これに納得しない一部の保守党支持者が西カナダ独立を目指して選挙が終わると同時に活発に活動を始めた。
フェイスブックやツイッターでは#wexit(イギリスのブレクジット同様にウエストとイクジットをもじった造語)がトレンドなり、フェイスブックではアルバータ独立運動を推進するサイトの立ち上げを宣言していた。フェイスブックのwexit参加メンバー数は、選挙直後の4千人から22日零時現在で20万人を超える数になっている。
背景には連邦政府がアルバータ州を蔑ろにしているという州民の被害者意識があるという。アルバータ州民には、カナダの主要産業である石油・ガス産業が盛んなアルバータ州がカナダ経済の基盤を支えているという自負がある。それにもかかわらず自由党政権は、パイプライン建設を停滞させ、東部カナダには潤沢に支援しているにもかかわらずアルバータ州が苦しんでいるのを見過ごしている、東部カナダへ連邦政府が支援できるのはアルバータ州の石油産業の利益があるからで、それを無視してアルバータ州には恩恵どころか感謝の言葉もないと非難している。
そんな自由党が再び少数派とはいえ政権を取ったことで、アルバータ州民、特に石油関連に就く州民の不満が爆発し、そんな政権なら独立した方がいいと選挙終了後から一気に火がついた。今回の総選挙でアルバータ州では新民主党が1議席を獲得した以外は全て保守党が当選し、自由党候補は閣僚経験者も含めて全て落選している。同様に天然資源産業が盛んなサスカチワン州でも、自由党が1人も当選しなかった。
専門家は現実問題としてアルバータ州がカナダから独立することは決してアルバータ州の石油産業にとって現状が改善するとはいえないが、独立を本気で呼びかけるくらいに州民は連邦政府に置き去りにされているという意識が強いのだろうと分析している。
アルバータ州経済は、2014年の原油価格下落の影響を受けたまま、いまだに立ち直れないでいる。失業率も高く、経済的な不安が拭いきれない。にもかかわらず、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画は遅々として進まず、他の2本のパイプライン建設工事は白紙撤回、うち1本はアルバータ州からケベック州を通って東海岸に抜ける計画だった。しかしケベック州が猛反対したため計画は白紙となった。ケベック州は優遇するのにアルバータ州は軽視しているとのストレスが爆発した。
ジャスティン・トルドー首相は開票直後の勝利宣言で、「アルバータ州とサスカチワン州の痛みは十分に伝わっている」とメッセージを送ったが、アルバータ州民には届いていないようだ。