2019年10月17日 第42号
マニトバ州では依然として多くの住宅で停電が続いている。10日から11日にかけて猛吹雪が同州南部を襲った。多いところでは一時20センチメートル以上積もったところもあった。10月のこの時期にこれだけの雪が降るのはマニトバ州でも珍しい。
しかも強風を伴ったため、木々が倒され、同州最大都市ウィニペグでも大きな被害となった。電力会社マニトバ・ハイドロによると、12日の朝には一時5万3千戸が停電したと報告している。
12日にはブライアン・パリスター州首相が緊急非常事態を宣言し、電力会社や州職員が迅速に対応できるよう対策を取ったことを発表した。
13日になると雪が落ち着き、被害の状況が徐々に明らかになってきた。今回の猛吹雪の影響を最も受けたのは、ウィニペグから西に約90キロメートルのポーティジ・ラプレリーで、電気だけではなく水道も使えない状況と市が報告している。
サンクスギビングで3連休だった週末の前に襲った猛吹雪の影響は大きく、14日になってもウィニペグをはじめ停電状態が続いている住宅があり、復旧には10日以上かかる可能性があるとの予測をマニトバ・ハイドロが明らかにした。
原因は猛吹雪により電柱や送電線を支える鉄柱が折れ曲がっているためで、少なくとも2千本の電柱が折れているという。これらを全て取り替える必要があり、マニトバ州に電力が通って以来、最大の被害となっていると発表している。
ただ町と町が離れているため、まだ被害の全容は明らかになっていない。
2019年10月17日 第42号
いつも人間の心に寄り添って人々を癒し続けた警察犬が勤めを終え、無事退職となった。
警察犬からペットへと戻ったのは、ブリティッシュ・コロンビア州デルタ市警察に勤めていたケイバー。カナダ初の癒し警察犬として2010年に任務に就いてから9年間、2千人以上の傷ついた人々に寄り添ってきた。
役目は、事件の被害者や心的外傷を負った人々に寄り添って、彼らの傷を癒す手助けをすること。デルタ市やメトロバンクーバーに留まらず、2016年アルバータ州北部フォートマクマレーで起きた大規模の山火事の時や2017年アメリカ・ネバダ州ラスベガスでの銃撃事件にも出向いて活躍した。
犬には無条件に人に愛情を注ぎ、心を癒す力があることは今ではすでによく知られている。癒し犬は病院などでも活躍している。ケイバーはカナダではその先駆け。
事件事故の被害者だけではなく、裁判所にも出向いて証言者の心を鎮める役目なども任されていた、まさしくスーパードッグだった。
そして今回晴れてお役御免となったケイバー。これからはペットとしてゆっくりと過ごすと飼い主は語っている。
2019年10月17日 第42号
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の州都ビクトリア市で市長や市議が、寄港するクルーズ船への温室効果ガス排出と廃棄物の量を制限する提案を発表した。
大型クルーズ船での旅は世界で人気を博しているが、BC州がある北米西海岸でも根強い人気を誇っている。
中でもアラスカクルーズは人気で、BC州バンクーバーやアメリカ・ワシントン州シアトルを起点に夏には毎週多くの巨大クルーズ船が航行している。
その途中寄港地として人気なのがビクトリア。グレータービクトリア港湾局によると、カナダで最も寄港するクルーズ船が多い港だという。その数は年々増加し、2002年には110隻、約16万人が立ち寄ったが、2018年シーズンには250隻、約64万人に増加したと発表している。
寄港するクルーズ船や観光客が増加すると同時に増えるのがゴミや温室効果ガスである。ビクトリア市リサ・ヘルプス市長らは、寄港するクルーズ船に停泊している間の電力供給を市の職員が調査すること、クルーズ船の環境への影響をビクトリア港湾局が市に報告すること、温室効果ガス排出量と廃棄物の問題が解決するまで寄港するクルーズ船の数を増加させないことなどを提出するとしている。
ビクトリア市は気候非常事態を今年2月に宣言し、2030年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量と吸収量のバランスが取れている状態)の実現を、2050年までに排出量ゼロを目標に掲げている。
今回の市長らの提案は、この目標を実現するために必要な環境政策の一環としての転換に過ぎないとしている。
ただ経済界からは、ビクトリアの経済に大きな影響を与える可能性があるため、市とは協力しながら環境問題を解決する方法を模索していくことが最善として、クルーズ船への規制には反対の声が上がっている。
2019年10月17日 第42号
スウェーデン出身16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんがアルバータ州を訪問すると自身のツイッターで12日に発表した。
今年8月、アメリカ・ニューヨークで開催された国連気候行動サミットに出席するために、イギリスから飛行機を使わずヨットでニューヨークに到着し、ティーンエージャーの環境活動家として一躍時の人となったが、サミットでの涙ぐみながら気候変動への思いを訴えた姿が注目され、今や環境問題を真剣に捉える若者の象徴的存在となっている。
サミットでは気候変動危機に真剣に取り組まない権力者や企業を非難したため、16歳の環境活動家を批判する首脳まで現れるほど注目を集めている。
トゥーンベリさんがカナダに来るのは2回目で、前回はケベック州モントリオール市を訪れた。その時モントリオールでは環境対策を訴えて30万人がデモを実行。この時、ジャスティン・トルドー首相とも面会し、「カナダの対策は不十分」と伝えた。
トゥーンベリさんのツイートによれば、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州と訪問し、アルバータ州入りするという。日時や場所は明らかにされていない。
アルバータ州といえば天然資源産業、特に石油・ガス産業が盛んな州で、カナダ国内でも最も温室効果ガス排出量が多い州。州政府は広報を通して、トゥーンベリさんのアルバータ州訪問を歓迎するとの声明を発表し、世界の主要石油産油国に比べてアルバータ州の石油会社が環境に優しいことが分かってもらえると思うと語っている。
ただジェイソン・ケニー州首相がトゥーンベリさんと面会するかについては言及していない。
2019年10月10日 第41号
投票日を目前にした6党首による党首討論会が7日、ケベック州ガティノーで行われた。全党首が揃う公式な党首討論会は2回開催が予定されているが、今回は第1回として英語で行われた。
あらかじめ討論される内容が決定しているが、質問はその場で視聴者もしくは司会者から出される。
どの質問にどのタイミングで誰が答えるかの決定は司会者に委ねられているが、各党首とも限られた時間で自分たちの政策を主張した。
最も激しい討論となったのは、次期政権を争っている与党自由党ジャスティン・トルドー党首と野党第一党保守党アンドリュー・シェア党首。
シェア党首は外交問題を聞かれた最初の質問からトルドー党首を攻撃。質問には答えずに、トルドー党首は顔を黒く塗った写真が問題になったが、彼は自身の政策でも国民を支援する振りをするだけの偽善のマスクをかぶっていると非難。先住民支援、SNCラバラン問題、女性支援、中間所得層支援、どれも口先ばかりの支援で内容が伴っていないと言い、「ほら吹き」で「詐欺師」だと面と向かって非難した。そんな人物にカナダを治める資格はないと言い放った。
時間切れのためトルドー党首にこの発言への反論時間はなかったが、今選挙最大のライバルとみているシェア党首に対して、環境問題や富裕層優遇政策などで反撃した。
トルドー・シェア両党首の応酬があまりにも激しく途中では2人が何を言っているのか分かりづらい場面が何度もあった。
そうした時に介入するのは新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首で、2人が環境問題で言い争っている時に割って入り、テレビ目線で国民に直接訴え、「何もミスター先延ばし(トルドー党首)、ミスター否定(シェア党首)のうちどちらかを選ぶ必要はない。他にも選択肢はある」とNDPがあることを強調し、視聴者の注意をひきつけた。
トルドー党首はシング党首に対してケベック州で可決した法案21について、なぜシング党首は連邦政府として介入すると言わないのか、自由党は介入する用意があると攻めた。ケベック州の法案21は、州内では教師や消防士、弁護士など公的機関に従事する者は仕事中に宗教的シンボルを身に着けることを禁止する法案で、ケベック州では宗教的公平性を保つためと支持されているが、ケベック州以外では差別的法案として批判する声が多い。宗教的シンボルはイスラム教やユダヤ教信者が身に着けるベールや帽子などが対象で、インド系カナダ人でシーク教徒のシング党首が頭に巻くターバンも対象となる。自身ですら対象になる法案に対してなぜ介入すると明言しないのかを問われたシング党首は、法案に対しては100パーセント反対だが、すでに裁判所に提出されているため政治が裁判に介入することはしないと語った。
トルドー首相が多宗教を推進しているように聞こえる質問だが、顔を黒塗りして謝罪した党首が、インド系シーク教党首として毎日のように差別的な批判を受けているシング党首を攻撃するのはお門違いと言う声も上がっている。ただケベック州で劣勢なNDPをさらに追い込むためにシング党首をこの問題で攻撃するのは、自由党がNDPも脅威に感じ始めたからではないかとの見方もされている。
そして今回の討論会で最大の争点となった環境問題ではグリーン党が勢いづいた。スウェーデン出身の16歳環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの言動が注目を集め、気候変動問題についての関心が高まる中で、各党とも環境問題対策について熱弁をふるった。若い層の取り込みを狙ってのことだが、最も環境問題に詳しいグリーン党エリザベス・メイ党首は、自分たちこそが環境対策を実現できる政党と自負するトルドー党首に対して、保守党前政権が定めた削減基準さえもクリアできないにもかかわらず、パイプラインを承認してさらに悪化させようとしていると批判。グリーン党は、パイプライン、石炭、石油・ガス開発の承認はせず、グリーンテクノロジーによる経済発展を目指しながら自由党が目指す2030年までに2005年比で30パーセント削減よりも30パーセント温室効果ガスを削減すると語った。
また、フェミニストを自称するトルドー党首が妊娠中絶に反対するシェア党首を攻めている場面では、シング党首が男性2人が女性の選択の権利について言い争うのはおかしいと介入すると、唯一の女性党首であるメイ党首が、これまで女性が懸命になって築いてきた女性の権利を1インチでも削減されることは絶対に許されないと強い口調で語った。
選挙は10月21日に実施される。