2016年11月17日 第47号

 連邦保守党は9日、党首選が始まって以降初めての党公認討論会をサスカチワン州サスカトゥーンで行った。この時点で党首選に立候補しているのは12人。予め用意された質問にそれぞれの持論を展開した。

 注目を浴びたのは、ここまでの党首選で先頭を走っているとされているケリー・リーチ議員。立候補して以降、移民に対し「カナダ人的価値観」を審査する制度を導入すべきと主張し物議を醸している。前日にはアメリカ大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け「カナダにも取り入れるべきエキサイティングなメッセージだ」とトランプ氏の移民への差別的発言を支持するかのようなサポーターに宛てたフェイスブックや電子メールメッセージが、他の候補者からカナダでは相容れないと批判を浴びた。

 討論会では、NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、パイプライン建設などを含む経済政策では概ね意見は推進で一致していたものの、炭素税を含む環境対策、リーチ議員の発言を受けた移民政策では意見が分かれた。

 13日にはオタワ南部の町でその選挙区が主催する討論会が行われた。参加候補は9人。リーチ議員は自宅への不法侵入を予告するような出来事が数日前に起こっていたため、この日の討論会は欠席した。

 今回は前回のように質問が予め用意されているわけではなく、この日集まった党員からランダムに質問を受ける形が取られた。党員の関心は、銃規制から、安全保障予算、原子力エネルギー、承諾年齢(結婚が可能になる年齢)まで幅広く、さらにコミュニケーション戦略、州政府との関係、若者へのアプローチなども質問された。

 討論会は今後、党公認が4回予定されている。12月6日のニュー・ブランズウィック州モンクトンでの開催は英仏両語での討論会となり、フランス語のみでの討論会も1回予定されている。ここでは通訳なしで候補者のフランス語能力も試されることになる。

 党首選立候補は来年2月まで受け付けられる。今後も少なくとも2人が立候補する予定で、ビジネスマンでテレビ出演でもおなじみケビン・オラリー氏の動向も注目されている。

 次期党首を決める投票は来年5月27日に予定されている。

 

2016年11月17日 第47号

 バンクーバー市は9日、非居住住宅に対する課税を1パーセントとする提案を発表した。市議会で承認されれば、来年1月から実施される。

 バンクーバーでは住宅価格が高騰し、すでに一般市民には手の届かないところまで到達している。海外からの投資家による介入が不当に価格を吊り上げているとの指摘があり、ブリティッシュ・コロンビア州政府は今年8月2日から海外購入者税15パーセントを導入し、鎮静化を図っている。

 さらにバンクーバー市では独自の対策として、市の試算で現在約1万800戸あるとされている所有者がいながら居住者のいない非居住住宅に対してバンクーバー市内に限り課税すると今夏発表。そうすることで所有者に空家住宅を賃貸契約するよう促し、現在0・6パーセントしかない賃貸可能物件数を3パーセント以上に増やしたいとしている。その課税率の提案が、この日発表された。

 市は今回の措置は歳入増が目的ではないと強調し、課税実施にかかる費用はその歳入分から相殺され、歳入分の残りは住宅対策に還元される。

 対象は所有者が主要な生活の場としていない住宅で、1年で6カ月以上入居者がいない物件。グレゴール・ロバートソン市長は、「これだけ供給(住宅)が少ない中、投資を主要目的とする住宅は受け入れられない」と記者会見で語った。

 課税は来年1月から実施されるが、実際に税金を支払うのは2018年からとなっている。

 

2016年11月17日 第47号

 ジャスティン・トルドー首相は15日夜キューバに到着、ラウル・カストロ国家評議会議長の出迎えを受けた。

 今回のトルドー首相キューバ訪問は、同国の海外資本導入制限緩和に向けて興味を示しているカナダ企業に貿易機会を得るためのもの。

 カストロ議長は2015年4月にアメリカのバラク・オバマ大統領と会談。国交回復を実現し、今年3月にはオバマ大統領が88年ぶりにキューバを訪問し、両国関係がようやく改善する方向に動いている。

 これに対し、カナダとキューバの関係は1976年1月、現トルドー首相の父ピエール・トルドー元首相が、当時の西側職としては初めてキューバを訪問して以来、友好関係が続いている。当時のフィデル・カストロ議長と友好を深め、公私ともに親交があった。

 この日、トルドー首相はカストロ議長に、「議長の家族と私の家族の友好関係は親密なものであります」と語り、「しかし、カナダ国民とキューバ国民との真の友好関係はそれ以上であり、今後もこの関係を継続できることを期待しています」と述べた。

 カナダ統計局によれば、昨年1年間でキューバを訪れたカナダ人観光客は約130万人。キューバの統計局の報告では、キューバへの観光客の約3分の1がカナダ人で最多数と発表している。

 今回の首相のキューバ訪問は約24時間と短く、この後、アルゼンチンを訪問し、APEC(アジア太平洋経済協力)会議が開催されるペルーを訪問する。

 

2016年11月17日 第47号

 連邦政府ジム・カー天然資源相は15日、カナダの石油輸出先としてアジアを重要視している発言をし、トランスマウンテン・パイプライン拡張計画承認への布石かとの見方が広がっている。

 この日カー天然資源相は、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まったことを受け、キーストーンXLパイプライン計画が承認される可能性について記者に聞かれると、「それでもカナダの石油がアジア市場に輸出されるわけではない」と述べ、「カナダ政府としての目標は輸出市場を広げることだ」と語った。

 連邦政府は12月19日までにキンダーモーガン社のトランスマウンテン拡張計画承認の是非を決定しなければならない。そのため、今回の発言は承認に向けての布石ではとの見方が出ている。

 トランスマウンテン計画はアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー近郊までの現存するパイプラインを拡張する68億ドルをかけた工事で、完成すれば現在の3倍のオイルサンドを輸送することになる。この計画については環境活動家をはじめ、バーナビー市、バンクーバー市なども反対を主張している。

 

2016年11月17日 第47号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのイーストサイドで13日、現金自動預け払い機(ATM)から残高以上の現金が引き出せる状態が数時間続いた。

 この現象は、バンクーバーが本社の銀行バンシティ傘下の低所得者向け銀行ピジョン・パーク・セービングスのATMで発生した。バンシティが行っていたシステム更新が原因とみられている。

 同市イースト・ヘイスティングスで、簡易宿泊施設や食料、更生プログラムなどを提供しているユニオン・ゴスペル・ミッションのジェレミー・ハンカさんによると、まわりはこの話で持ちきりだったという。

 一度に引き出せた額は20ドルから80ドルと、決して高額ではなかったが、中には現金の引き出しに何回も成功した人も。

 どうせ銀行のエラーなのだからと、良心の呵責もなくプレゼントのように現金を引き出している人も多かったが、同団体ではそうしないよう、説得に当たったとハンカさん。結局返納しなければならなくなるから、残高以上に現金を引き出したり、そのお金を使ったりはしないよう伝えたと、取材に話していた。

 また彼は、そうした「あぶく銭」が、こうした人々のアルコールや薬物からの更生を遅らせることにもなりかねないことを危惧していた。

 なおバンシティは、トラブル原因はすぐに解決され、この影響を受けた顧客数は多くないとのコメントを発表。残高以上を引き出した人に対しては、どのようにその状況を解決するのがベストか話し合いを持つことにするとしている。

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。