2016年11月17日 第47号

 ブリティッシュ・コロンビア州北部沿岸の町、プリンスルーパートの南にある島レル・アイランドに建設が計画されている、パシフィック・ノースウェストLNGプロジェクト。

 この施設が環境に及ぼす影響は、従来見積もられていたものより深刻だとする研究結果が、同州バンクーバーのサイモン・フレーザー大学(SFU)から発表された。

 レル・アイランドが河口となっているスキーナ川はカナダで2番目に大きな流域面積を持つ。この川で生まれたサケの稚魚は、太平洋に出る前に真水から塩水に体を順応させるため、この河口付近にある期間、滞在する。

 カナダ環境アセスメント・エージェンシー(CEAA)はかつて、この期間はきわめて短いものだとしていたが、今回のSFUの調査結果によると、長いものでは数カ月に及ぶことがわかった。

 調査研究を指揮した同大学のジョナサン・ムーア生物学教授によると、稚魚はほとんど河口に逗留することなく海に出るとするCEAAの説明は、データに基づいていないと指摘する。そして今回の結果は、パシフィック・ノースウェストLNG側の環境アセスメントが無視しているリスクを明らかにするものだと説明している。

 ムーア教授ら研究チームは、スキーナ川のサケ―マスノスケ(chinook)、カラフトマス(pink)、シロザケ(chum)、紅鮭(sockeye)、ギンザケ(coho)―250匹以上を捕獲、体内の同位体元素のレベルを測定することで、同河口に逗留する期間の長さを割り出した。

 その結果、例えばマスノスケの75パーセントは3週間以上、河口で逗留していることがわかった。またサケ類の中ではマスノスケが最も逗留期間が長いこともわかり、ムーア教授によると他の研究からはこの種は環境の変化に敏感であることがわかっており、今回の結果は重要な意味を持つと話している。

 また別の研究からは、海洋に出た後の稚魚の生存率は体の大きさに比例することがわかっており、河口での逗留期間中にどれくらい成長できるかが、その後のサケの回帰率を左右すると、研究報告書は指摘したうえで、パシフィック・ノースウェストLNGプロジェクトのような大規模施設が、騒音や照明、また化学物質の流出の危険性など様々な要因で、サケの繁殖環境に影響を及ぼす可能性があるとしている。

 

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