2016年11月24日 第48号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで19日、パイプライン増設計画に反対するデモ行進が行われた。

 このパイプラインは、アルバータ州のオイルサンド採掘地からバンクーバー・ハーバーの積み出し港までを結んでいるキンダー・モーガン・パイプライン。68億ドルをかけて輸送量を現在の3倍に引き上げる計画は、今年5月にカナダエネルギー委員会の認可を受け、最終的な政府の許可を待つ段階になっている。

 この政府決定の期限である12月19日が迫るにつれ、カナダ全土でこの計画に反対する声が上がってきており、今回のバンクーバーのデモ行進もその一環。

 先住民代表や連邦議会議員、環境活動家のほか多くの市民がバンクーバー市役所に集まり、「気候変動対策のリーダーを務める者は、パイプラインを作らない」、「ジャスティン(トルドー首相)、私をブルドーザーの前に立たせるようなことをしないでくれ」などと書かれたプラカードを掲げ、環境問題に対する公約を実行しないトルドー内閣を非難、キャンビー橋を渡り市中心部までデモ行進した。

 参加者の1人は、化石燃料からの脱却を目指すパリ協定を批准したカナダ政府は、パイプラインの増設を認めることは偽善であると認識すべきだと、メディアに語っていた。

 主催者側の発表では何千人もの人が参加したという今回のデモ行進。このパイプライン増設計画に長年反対してきたラニヤ・デューブさんは、こうして多くの人が集まることで、参加者はいかに多くの仲間がいるかということを再認識でき、より活動に積極的になれると話していた。

 グレゴール・ロバートソンバンクーバー市長は、今回のデモはまだ前哨戦にしか過ぎず、これからさらに規模の大きいデモが続くだろうと予告している。

 

2016年11月24日 第48号

 オンタリオ州トロントの地下鉄に、11日朝乗り合わせていたサルマ・ハミディさんが、車内で見かけたカナダらしい光景をメディアに紹介した。

 ハミディさんは、乗り込んできた乗客が座るなり、頭を抱えて困惑している様子を目撃した。朝の通勤時間ということもあり、最初は彼に気をとめるような人はいなかったが、何分かするとまわりの人が声をかけ始めた。

 最初は、強いロシア語なまりの男性が大丈夫かと問いかけた。それに対しこの男性は、ひどい頭痛に見舞われている上に、これから始まる仕事の面接に遅れそうだと答えた。

 それを耳にしたハミディさんは、持ち合わせていた鎮痛剤を彼に与えた。彼は喜んで受け取ったものの、飲むための水がなかったため、後で飲むと伝えた。すると、近くにいたヒジャブに身を包んだイスラム教の女性がすかさず、子供のために用意していたテトラパックのジュースを差し出した。自分のものになるはずだったジュースが、見ず知らずの男性に渡されてしまったため、その子供は少し不服そうな顔をしていたが、とハミディさんは付け加えていた。

 この男性はまわりの人の好意に感謝するとともに、自分はしばらく仕事に就いていなかったため、面接に対して緊張していたと話し始めた。

 最初のロシア語なまりの男性は、自信を持って面接に臨めば大丈夫、ただその髪型は何とかしたほうが良いとアドバイス。すると今度はアジア系の10代の女性が、ヘアゴムを差し出した。

 その後も、まわりの乗客らによる面接のアドバイスは彼の降車駅に着くまで続き、皆が彼の成功を祈って送り出した。

 この光景を自身のフェイスブックに書き込んだハミディさんは、「これこそカナダならではの経験」とコメントしている。居合わせた人すべてが、見ず知らずの人に対しても快く接するその光景は全く違和感なく自然に発生したとハミディさん。この国の人すべてが、かつては移民だったことがその理由なのだろうと、彼女は付け加えていた。

 

2016年11月24日 第48号

 路上生活者のために特別にデザインされたバックパックが、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーとサレーで配布された。

 アメリカではすでに3万5千人に配布された実績があるこのバックパック。サレーの自動車ディーラー、ウルフ・オートグループと共同で750個を配布したのは、アメリカ・イリノイ州シカゴにあるチャリティ団体シティパック。また、このバックパックの製造は、ハイキング用バックパックなどアウトドア用品を製造しているアメリカのメーカー、ハイシエラが行った。

 バックパック本体には、通常のナイロン生地の5倍の強度を持つバリスティック・ナイロンを使用しており耐雨性もある。また就寝時などに腕や足首にベルクロテープで巻きつけておけるストラップが縫い付けてあり、これをはがす際の音が置き引きなどの警告になると、同団体の創始者ロン・カプランさんはバックパックの特徴を説明している。

 また証明書などの貴重品を収納する防水パウチや、毛布や寝袋をバックパック下部に吊り下げるためのストラップを装備するほか、バックパックのポケットに収まるサイズのポンチョも付属している。

 バンクーバーでの配布場所となったイーストサイドの慈善団体ユニオン・ゴスペル・ミッションで取材に応じた1人は、今までは身の回りの品々を持ち歩くのに簡単なエコバッグを使っていたが、このようなバックはとてもありがたいと、取材に答えていた。

 カプランさんは、バックパック一個あたりのコストは明らかにしなかったほか、ウルフ・オートグループも寄付した額については触れなかった。

 カプランさんはもともと音楽業界で働いてきたが、長距離自転車旅行の際に貴重品を収納できる防水パウチをデザインしたことから、こうしたバックパックのアイデアを思いついたという。

 また彼はマウイでの自転車旅行の際に、ウルフ・オートグループの副社長マイク・ハッカードさんと出会った。その時、バンクーバーのホームレス状況を憂えていたハッカードさんが、カプランさんに対しバンクーバーでのバックパック配布のための資金提供を申し出てきたという。

 

2016年11月24日 第48号

 オンタリオ州ハミルトンのハミルトン劇場に18日夜から、上演作品に対する非難がツイッターで寄せられるようになった。

 同劇場のツイッターを担当しているリアン・レオナルドさんは最初、普通の観客からの反応だろうと思っていた。しかし20日には「劇場はこの人権侵害の責任を取るべきだ」という過激なコメントをツイートされる事態になり、彼女は一体何が起こったのかと、ソーシャルネットワークを探ってみた。

 そしてわかったことは、このコメントは同劇場(@HamiltonTheatre)に向けられたものではなく、アメリカ・ニューヨークのブロードウェーで上演されている人気ミュージカル『ハミルトン』(@HamiltonMusical)に対するものだったということ。

 ブロードウェーの『ハミルトン』は、アメリカ建国時の立役者の1人で、孤児から身を起こしてアメリカ合衆国初代財務長官にまで上り詰めた、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカル。

 このミュージカルで第3代アメリカ副大統領アーロン・バーを演じているブランドン・ビクター・ディクソンさんが18日の上演後、ミュージカルのスタッフや出演者を代表して、マイク・ペンス次期副大統領を非難するコメントを公表したことから、今回の騒ぎが始まった。

 ディクソンさんはトランプ次期大統領とその政策チームは「私たちをはじめ、私たちの子どもや親、世界も守ろうとはせず、また私たちの侵すことのできない永久の権利も保護しようとしない」と訴え、ペンス次期副大統領に対し、アメリカの価値を認めるとともに、全ての人々のために職務を全うするよう呼びかけた。

 これに対しドナルド・トランプ次期大統領は20日ツイッターで、これはペンス次期副大統領に対するハラスメントだと攻撃、同ミュージカルのメンバーからの謝罪を要求した。

 これに便乗する形でトランプ派がツイッターで非難を繰り広げたが、誤ってオンタリオ州のハミルトン劇場のツイッターアカウントにツイートしてしまったというのが、騒動の真相だった。

 レオナルドさんは、そのうちのいくつかには対応したものの、この終わりのない争いに巻き込まれるのは願い下げだと取材に語っている。アカウントのプロファイルを見れば、このアカウントが「ハミルトン・オンタリオ・カナダ」であることがわかるとしたうえで、これはインターネット上に撒き散らされる憎悪の表れで、彼らは理由もなく怒り狂うと感想を述べていた。

 

2016年11月17日 第47号

 アメリカ大統領選挙で共和党候補ドナルド・トランプ氏が予想外に勝利したことで、カナダへの悪影響を懸念する声が上がっている。そんな中、トランプ次期アメリカ大統領が決まった翌日の9日、ジャスティン・トルドー首相はトランプ氏に祝辞を送り、次期共和党トランプ政権と協力していくと語った。

 オタワでWEデー(若者の権利について語り合うイベント。2007年トロント発祥で、現在はカナダ全国をはじめ、アメリカ、イギリスでも行われている毎年恒例イベント)に参加していたトルドー首相はトランプ次期政権について、これまで通り二国間関係の強い結びつきには変わりはないとして、これからも隣国として、友人として、同盟国として、貿易、投資、国際平和、そして安全保障で協力していくことを期待していると語った。

 しかし自由党政権が発足して以降、トルドー首相はオバマ民主党政権と親密な関係を築き、NAFTA(北米自由貿易協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの自由貿易を含む経済政策、安全保障、環境対策などで緊密に連携していくことを強調していた。

 今回、これらの政策への反対を主張して勝利したトランプ氏が次期大統領に決まったことで、こうした政策への先行きの見通しが立たず、米加間の関係に大きく影響するのではないかとの声が上がっている。

 トルドー首相はNAFTAに反対しているトランプ氏に対して話し合いに応じる用意があると語り、強力に継続を求める構えを見せている。

 また環境政策では自由党政権がすでに発表した炭素税導入について、トランプ次期政権が否定しようとカナダでは導入を目指して進めていくと語った。

 トランプ氏が勝利したことで、2国間で唯一確実に前進するとみられているのが、キーストーンXLパイプライン建設計画。カナダでは保守党政権時代に協力に推進していたアルバータ州と米テキサス州を結ぶパイプライン建設で、環境問題を理由にオバマ大統領が建設停止を決定した。しかしトランプ氏は同計画を再開すると選挙戦で公約し、トルドー政権も計画を後押ししている。野党保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、トランプ次期大統領とできるだけ早く話し合い最優先で進めるべきと語った。

 10日の記者会見では、前夜にトランプ氏と電話会談し、大統領選に勝利した祝辞を述べるとともに「カナダに招待した」ことも明かした。会談時間は短かったが、これから建設的な関係を築いていく最初としては十分だったとも語った。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。