2016年12月15日 第51号

 オタワで開催されていた全国州首相会議で9日、ジャスティン・トルドー首相が10州中8州で合意に至ったと発表した。

 毎年開催される同会議の今年の最大の議題は、連邦政府が全カナダ的に導入を進めている炭素税。全ての州が合意するか注目されていた。

 結果は、これまでも声高に反対していたサスカチワン州と、さらにマニトバ州も合意せず、8州のみとなった。サスカチワン州ブラッド・ウォール州首相は、同州の天然資源産業の国際競争力を弱めると反論。特に、アメリカ次期大統領に決定したトランプ氏が環境対策に消極的なことから、アメリカはカナダにとって最大貿易国でもあるが経済的にはライバルでもあると語り、炭素税はアメリカとの競争でカナダに不利に働くとの持論を展開した。

 会議後の記者会見でトルドー首相は、カナダの環境政策は誰がアメリカの大統領に就任するかで決定するものではないと反論。炭素税導入は、カナダの経済と環境に好影響を与えると語った。

 連邦政府が導入する計画では、2018年に1トンにつき10ドルを課し、毎年10ドルずつ増加、2022年50ドルまで引き上げられる。合意した州は炭素税制度か、オンタリオ州とケベック州が導入するキャップ&トレード制度を導入して対応することができる。

 この日はアメリカのジョー・バイデン副大統領が会議前にオタワを訪問。アメリカは大統領が変わっても環境問題に取り組んでいくことは間違いないと州首相らに語った。

 連邦政府が炭素税を導入してまで環境対策に乗り出す理由にパリ協定の実現がある。カナダは2030年までに2005年比で温室効果ガス排出量を30パーセント減少させることに合意した。しかし現在のままでは実現は困難と環境省が調査の結果をすでに発表している。

 トルドー首相は以前の記者会見で、州が自主的に合意に達しない場合は、強制的に炭素税導入を政府が進めると語っていた。

 

2016年12月15日 第51号

 カナダ銀行は7日、金利を据え置くと発表した。これは市場の予想通りで、トロント取引株式市場は特に大きな変化は見られなかった。

 原油価格が急落して以降、カナダ経済は停滞を続けている。カナダドルも下落し、輸入品の値上がりが心配される中、輸出産業は政府が期待したほどの経済効果をもたらしていない。

 カナダ銀行は今回の発表で、第3四半期に景気の緩やかな回復の兆しが見えたものの、設備投資や非エネルギー産業の輸出に大きな伸びはなかった。

 それでも今回は、今年10月に発表した悲観的なトーンから少し離れ、ポジティブな口調となっている。

 

2016年12月15日 第51号

 世論調査会社アンガス・リードが毎年恒例の全州首相支持率調査結果を13日、発表した。1位はサスカチワン州ブラッド・ウォール州首相で58パーセント、次いでマニトバ州ブライアン・パリスター州首相50パーセント、ブリティッシュ・コロンビア州クリスティ・クラーク州首相が35パーセントで続いた。

 4位にアルバータ州レイチェル・ノテリー州首相で31パーセント。ノバスコシア州スティーブン・マックニール州首相と同数だった。

 2015年5月にアルバータ州で大勝した新民主党(NDP)党首ノテリー州首相は、就任当時は53パーセントの支持率があったが、今回の調査では不支持が59パーセントとなった。

 背景には、原油価格の急落から未だ州経済が低迷している中、炭素税導入への積極的な参加などがあるとみられる。今月2日にはアルバータ州エドモントン市の州議事堂前で炭素税反対を訴える集会が行われた。そこには、炭素税が直接影響する中小企業経営者や石油事業関係者など千人が集まった。その集会中にはノテリー州首相を「投獄しろ、投獄しろ」と声を揃えて叫ぶ場面も見られた。ただノテリー州首相は今月6日にジャスティン・トルドー首相が発表したパイプライン建設承認を評価するなど、石油産業を推進している。

 一方、同じく天然資源産業が盛んなサスカチワン州、マニトバ州のウォール、パリスター両州首相は、連邦政府の炭素税導入に反対を表明している。特にウォール州首相は以前から声高に反対し、炭素税強制導入をされれば連邦政府を提訴する構えも見せている。

 その他、ケベック州フィリペ・クイラード州首相は30パーセントで5位、オンタリオ州キャサリーン・ウィン州首相はわずか16パーセントで最下位だった。

 

2016年12月15日 第51号

 ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドの商店街で、バックギアと勘違いして発進した車が店に突っ込む事故が5日、起こった。

 場所は同市内のシーフェア・ショッピング・センター。ペット用品を扱うコンパニオン・ペット・フーズ・アンド・サプライズの表にある駐車スペースに止めてあった黒いセダンがいきなり前進、そのまま店の正面のガラスの壁を突き破って突入、車の前半分が店の中に入ったところで止まった。

 店主のカレン・ジョージリンさんは2分ほど前までその場所にいたが、そのあと棚の整理で別の場所に移っており難を逃れた。また店の外にも人はおらず、けが人はでなかった。

 このショッピングセンターでは過去にも2度ほど同様の事故が起こっており、ジョージリンさんはいつか自分の店にも起こるのではないかという不安を覚えたことがあったと、取材に答えている。

 店に突っ込んだ車の運転手は高齢の男性で、警察の調べに対しギアがバックに入っているものと信じたまま、アクセルを踏んだと供述していたという。警察は翌日に、運転手の操作ミスという調査結果を発表した。

 

2016年12月15日 第51号

 ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドを流れるフレーザー川にかかるつり橋、アレックス・フレーザー橋が雪のため、何度か閉鎖された。

 12月に入り、平地でも何回か雪に見舞われているローワーメインランドでは、アレックス・フレーザー橋とポート・マン橋で、橋を吊るワイヤーについた氷雪が落下して、通行中の車を直撃する事故が頻発。5日には同橋を通行中の35台が、フロントガラスが割れるなどの被害を受けた。

 9日夜から降り始めた雪による被害を防ぐため、アレックス・フレーザー橋は10日午前11時43分から午後5時47分まで、約6時間閉鎖された。これは同橋が30年前に竣工して以来、初めてのこと。また同じ理由から12日の日中もほとんど閉鎖された。

 ポート・マン橋は2012年冬の大雪で、こうした氷雪落下による車の被害が240台に及び、橋を4時間ほど閉鎖せざるを得なかった経験から、同橋をつるワイヤーには除雪用の滑車が装備された。ワイヤーへの着氷があるたびに、滑車を上端から滑らせ雪氷を落とす対策が取られてきた。今回もこの滑車が活用され、9日からの降雪では車への被害は出なかった。

 

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