2016年12月8日 第50号

 ブリティッシュ・コロンビア州メトロバンクーバーを走るスカイトレインの新ライン、エバーグリーン・ラインが2日、開通した。全長約11キロ、6駅が新設され、バーナビー市にあるミレニアム・ラインのローヒード・タウンセンター駅に接続し、東に向かってポート・ムーディ市を通りコキットラム市のラファージ・レイク‐ダグラス駅が終点となる。

 エバーグリーン・ラインは、2009年に開通したバンクーバー市ダウンタウンとバンクーバー国際空港・リッチモンド市を結ぶカナダ・ラインを2010年バンクーバー冬季オリンピック開催に間に合わせるために先送りされるなど、何度も完成が遅れた。

 今回も予定では今年7月29日に完成だったが、トンネル工事の遅れから10月31日にずれ込んだ。開通も2017年1月との発表が一時はあったものの、なんとかクリスマス前の開通にこぎつけた。

 建設費は14億3100万ドルの予算だったが、実際には7億から8億5千万ドルで済む予定とBC州政府は発表している。BC州が5億8600万ドル、連邦政府が4億2400万ドル、メトロバンクーバーの公共交通機関を管轄するトランスリンク社が4億ドル、残りをその他のパートナーが出資している。

 エバーグリーン・ラインの利用者は2021年までは一日7万人とトランスリンク社は予測している。

 この開通に伴い今月19日から、関係する22のバス路線でルートが変更される。詳しくはトランスリンク社ホームページを参照。

http://www.translink.ca/en/Schedules-and-Maps/Transit-Service-Changes.aspx

 

2016年12月8日 第50号

 ブリティッシュ・コロンビア州政府クリスティ・クラーク州首相は11月30日、トランスマウンテン・パイプライン拡張計画について条件さえ満たせば反対しない意向を示した。

 ジャスティン・トルドー首相は前日、国内で計画されている3つのパイプライン建設計画について政府としての承認の是非を発表。BC州が関係する2つのパイプラインのうち、キンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張計画については承認すると発表した。

 これを受け、この日からパイプライン建設反対派がバンクーバー市などで反対デモを実施。計画時点から環境活動家や先住民族だけでなく周辺市町村からも反対が強かった同計画は、これからも反対派の運動が活発になるとみられている。

 そうした中、この日クラーク州首相がBC州政府の立場を改めて表明した。これまでにもBC州政府が提案していた5つの条件を満たせば、州政府としては反対しない意向を改めて発表した。特に今回は、海洋でのオイル漏れ事故の迅速な対応とパイプライン拡張によるBC州への経済的恩恵についての条件が満たされることを強調した。

 この日の記者会見では、連邦政府はそれほど時間がかからないうちにこれらの条件を満たすだろうとの認識を示し、来年5月9日に実施される州議会議員選挙前には条件は満たされていると予想していると語った。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張計画は、アルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市まで延びている現在使用されているパイプラインを拡張し、オイルサンド輸送量を3倍にするという計画。石油需要の高いアジアに向けて輸出を拡大することを目的としている。しかし、パイプラインの破損や海路でのタンカー数が現在の7倍に増加することによるオイル漏れ事故の増加、輸出量の増加に伴うオイルサンド産出量増加で温室効果ガスが増加するなどの環境への影響から、BC州では反対の声が根強い。

 

2016年12月8日 第50号

 トランスマウンテン・パイプライン拡張計画承認で揺れるブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市を、アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相が5日訪問した。2日間の滞在でBC州クリスティ・クラーク州首相とは面会しなかったものの、同州野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首と会談した。

 会談後ホーガン党首は、ノッテリー州首相は同じNDPであり、20年来の友人ではあるが、トランスマウンテン計画には賛成できないとの立場を発表した。BC州では来年5月に州議会議員選挙が控えている。

 ノッテリー州首相は2日間の滞在中、ほとんどをメディアとのインタビューに費やした。その中で、同じNDPとしてBC州NDP党首と会談することは重要だったと語ったが、ホーガン党首がパイプライン計画に反対を表明したことについては、事前に分かっていたことだし、BC州NDP党首としての立場があると理解を示した。

 天然資源産業が盛んなアルバータ州は2014年に石油価格が急落して以降、経済が不安定で、失業率が急速に悪化するなど、厳しい状況が続いている。そんな中、2015年にはそれまで40年続いた進歩保守党を破ってNDP政権が誕生した。以降、経済の立て直しと共に環境対策にも力を入れることを宣言し、炭素税の導入などを発表している。

 今回のバンクーバー訪問でパイプライン計画がアルバータ州だけでなく、カナダやBC州経済にも好影響を与えることや、アルバータ州の環境対策を訴え、理解を求めている。

 

2016年12月8日 第50号

 連邦政府マリアム・モンセフ民主機構相は2日、前日に国会での自らの発言について「失言だった」と謝罪した。

 モンセフ民主機構相は、前日の国会で選挙制度改革について議論を続けている選挙改革制度諮問委員会が、現在の選挙制度の代替案ではなく、国民投票の実施を推薦したことについて、「我々が期待していたほど真剣には議論してくれなかった」と発言した。また「委員会に難しい選択を迫ったが、委員会はそれを回避した」とも語った。

 これに対して野党からは批判の声が上がった。保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、「侮辱に値する」と批判した。グリーン党エリザベス・メイ党首は、「大臣が委員会に対し、なぜそのような失礼な言葉を選んだのか理解に苦しむ。国民を間違った方向に導くものだ」と語った。新民主党(NDP)ネイサン・カレン議員は、議員が時間を割いて委員会で議論した内容をそういう言葉で表現されるのは聞くに堪えないと語った。

 自由党は選挙戦から選挙制度の改革を公約として掲げており、政権を取った場合は、2015年の選挙が現在の小選挙区制を採用する最後の選挙にするとしていた。

 現在は党を越えた12人の国会議員による選挙改革制度諮問委員会で代替案などが議論されている。メイ党首やカレン議員は委員会委員として参加している。その委員会の報告書が提出され、その中にこれまでの小選挙区制がいいのか、比例代表のような代替案がいいのか、国民に問うための国民投票を実施してはどうかとの提案が含まれていた。

 今回の件を受け、自由党政権は5日から選挙制度について国民の意見を聞くためのサイトMyDemocracy.caを立ち上げた。今月末まで参加できる。しかし、その内容について早くもそれを利用した国民からはソーシャルメディアで、内容が分かりにくいなどの批判が相次いでいる。

 このサイトで集まった情報を政権がどのように活用するかは明らかにされていない。

 

2016年12月8日 第50号

 ノバスコシア州ハリファックスのダルハウジー大学の研究者による食料品価格報告書が5日発表された。

 それによると、一般的な家庭で食料品代が最大で年間約420ドル増加するという。毎年発表される同報告書では、1〜2パーセント増加が通常だが、来年は3〜5パーセント増となると試算している。

 原因はカナダドル安で、来年は最低で1カナダドル70米セントまで落ち込むと予測している。これが輸入品全てに影響する。さらに、ラニーニャ現象の影響や、農業への炭素税導入の可能性も影響すると指摘している。

 今回が第7回となる同報告書は、気候、世帯収入、燃料価格、食料品店数拡大、世界の農業生産状況などを考慮して試算している。

 2017年については通常の要因に加えて、トランプ次期アメリカ大統領の移民政策もカナダの食料品価格に影響を与える可能性があるとの見方を示している。アメリカでは約200万人のメキシコからの不法移民が農業生産に関わっている。トランプ氏が公約通りメキシコ不法移民をアメリカから追放することになるとアメリカの農作物価格が跳ね上がると予測している。

 食料品価格の上昇幅が最も大きくなると予測されているのが、ブリティッシュ・コロンビア州とオンタリオ州。食料品店の競争力や全体的な経済状況が要因としている。

 上昇幅が大きいのは精肉、野菜、魚介で4〜6パーセント、フルーツやナッツが5パーセント、乳製品、卵、パン類は2パーセントと試算している。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。