2017年1月19日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相は10日、小規模ながら一昨年の政権発足後から初めて内閣改造を行った。

 今回の内閣改造は、今月20日に就任式を迎えるトランプ次期アメリカ大統領対策ともいわれている。

 大統領選時からアメリカ経済保護主義を唱えているトランプ次期大統領。北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しも訴えており、カナダにとってはアメリカに対してこれまで以上に強い外交、経済への布陣が必要となる。

 そこでまずは外務大臣。トルドー政権発足以来、何かと不安定だったという評価のステファン・ディオン前外務相に代え、クリスティア・フリーランド前国際貿易相が就任した。

 フリーランド外務相は元経済記者で、アメリカ、イギリス、ロシアに在住していた経験を持つ。米加の経済関係だけでなく、ロシア情勢にも強く、トランプ次期大統領がロシアとの関係を改善しようとする動きの中、適任とされている。さらに国際貿易大臣時代には欧州連合(EU)との自由貿易協定合意に大きな働きをした実績を持つ。今後のNAFTA対応も期待されている。英語、フランス語、ウクライナ語、ロシア語、イタリア語の5カ国語に堪能。1991年以来の女性外務大臣となる。

 さらにもう一つのカギとなる人物がジョン・マッカラム前移民・難民・市民権相。移民法改正やシリア難民受け入れに尽力した65歳のベテラン議員は、中国大使に任命される。中国との2国間自由貿易協定合意を目指すと共に、アメリカの中国との関係への対応にベテランの力が期待されている。移民大臣にはアームド・ハッセン議員が就任。初のソマリア系カナダ人大臣となった。

 

 

2017年1月19日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相の、13日にオンタリオ州ピーターボロー市で発言した内容がアルバータ州で波紋を呼んでいる。

 国民と意見を交わす全国ツアーを行っているトルドー首相は、この日の会合で参加者から昨年トルドー首相が承認したオイルサンドを運ぶためのパイプライン建設について質問され、オイルサンド産業はいずれ廃止しなくてはならないという考えを示した。

 トルドー首相は、「明日オイルサンド産業を廃止にするということはできないが、段階的に廃止の方向に持っていかなくてはいけない。そして、化石燃料への依存から徐々に脱却する必要がある」と語った。

 この発言に、オイルサンド産業が主要産業のアルバータ州から非難の声が上がった。同州野党ワイルドローズ党ブライアン・ジーン党首は「オイルサンド産業が悪役として攻撃されることに辟易している」と語り、オイルサンド産業はアルバータ州の経済を支え、カナダの経済を支えるエンジンだと反論した。

 また元国会議員で保守党前政権では閣僚を務めたアルバータ州野党進歩保守党党首選に立候補しているジェイソン・ケニー氏は、首相はカナダ経済にとって最も重要な産業を廃止するよう国民に要求していると非難した。

 一方で、同州与党新民主党(NDP)レイチェル・ノッテリー州首相は、違った見方を示している。同州首相は、首相がオイルサンド産業を廃止するという考えは近い将来に実現する短期的なものではないと思うと語り、2件のパイプライン建設計画を承認したことでもそれは明らかと語った。オイルサンド産業や天然ガス産業がこれからも世界経済を引っ張っていくことは確実であり、アルバータ州は世界トップクラスの持続的生産者として世界をリードしていくと語った。

 トルドー首相は2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で30パーセント削減することを掲げている。アルバータ州のオイルサンド産業は国内で最も温室効果ガス排出量が多く、これに対してアルバータ州ノッテリー州首相はトルドー政権と協力して地球温暖化対策に力を入れることを約束している。

 その中で、昨年トルドー首相が発表した炭素税導入にも同意。アルバータ州のオイルサンド産業とも協力していくことを明らかにしている。

 環境活動家はトルドー首相の言葉は化石燃料使用を廃止していこうとする世界の流れを反映したものだろう、と一定の評価をしている。

 

 

2017年1月19日 第3号

 ブリティッシュ・コロンビア州自由党は13日、2016年の同党への献金は、企業、個人合わせて1230万ドルだったと発表した。

 政治献金については3月31日までに同州選挙管理委員会に提出することが義務付けられているが、それよりも前に自ら公開することで透明性を強調している。

 自由党は昨年、クリスティ・クラーク党首が出席して政治献金を集める催しを行ったが、その時のパーティー券が1人最大で2万ドルだったことから、富裕層優遇という批判が出ていた。さらに、特定の人しか参加できない高額パーティーへの党首の出席が利益相反になるのではとクラーク党首が訴えられていたが、これについては違反はないとの結果が調査委員会からこの日発表された。

 クラーク州首相は、この利益相反の批判を受けて、昨年、党が献金を即時公開することを約束。献金を受け付けてから営業日の10日以内に党のサイトに献金した企業名と金額を公表するとしている。

 そして、この日早速、昨年の献金内容を公開した。献金の内訳は、企業が1876件で約790万ドル、個人が9324件で440万ドル。企業献金の84パーセントは5千ドル以下だったとも発表している。ただ労働団体からの金額は公表していない。

 一方、野党新民主党(NDP)とグリーン党は、企業と労働組合からの献金禁止を主張している。NDPジョン・ホーガン党首は同党の約80パーセントが個人献金だったと説明した。NDPの2015年の献金額は約300万ドルで、2016年についてはまだ発表していない。

 政治献金については、オンタリオ州自由党キャサリーン・ウィン州首相が、労働組合と企業からの献金を禁止する方向を計画していることや、自身の個人的献金イベントを止めることを発表している。

 

 

2017年1月19日 第3号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州クリスティ・クラーク州首相は11日、キンダーモーガン社が手掛けるトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画を承認すると発表した。

 これまでクラーク州首相は5つの条件が満たされなければ州として認めるわけにはいかないという姿勢を示していた。今回の発表では、この5つの条件が満たされたと承認した理由を語った。

 5つの条件とは、完全な環境調査の実施、BC州沿岸でのオイル漏れ対応システムの確立、陸上でのオイル漏れ防止策の設定、先住民族への対応、BC州が経済的な恩恵を受けること。

 クラーク州首相は、今後20年でキンダーモーガン社から最大で10億ドルに相当する経済的補償で合意したことも明らかにした。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画とは、総事業費68億ドルのアルバータ州エドモントン近郊からBC州バーナビー市までの既存のパイプラインを拡張する計画。完成すれば、オイルサンド輸送量が3倍となる。そしてバーナビー市からアジア市場へと輸出される。そのため、バンクーバー近郊を航行するタンカー量は現在の7倍になると試算されている。

 この計画は、自由党政権ジャスティン・トルドー首相が昨年11月に157項目の条件付きながら、連邦政府として承認することをすでに発表している。

 これでBC州政府も承認となり、アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相は今回のクラーク州首相の発表を歓迎した。

 ただ、BC州ではこの計画に対する反対も根強い。関係する先住民族や環境活動家はもちろん、バンクーバー市やバーナビー市など関係する市の市長も強く反対を表明している。すでに法廷で争うことを表明している団体もある。

 もし全ての条件がクリアになれば、パイプラインは2019年から稼働する予定。

 BC州では今年5月に州議会議員選挙が行われる。同州野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首は、なんとしてでもこの計画を阻止するとし、選挙の争点にする構えを見せている。

 

 

2017年1月19日 第3号

 ブリティッシュ・コロンビア州政府は12日、昨年9月にイギリスのウィリアム王子とキャサリン妃がジョージ王子、シャーロット王女と共に同州を訪問した時の費用が61万3363ドルだったと発表した。

 内訳は、王子一家や同行したスタッフなどの宿泊費、移動のための交通費、警備費、さらには、同行する州政府関係者の旅行費、メディアのための費用のほか、一家を迎えるための予行練習などが含まれる。

 一家は昨年9月26日に同州の州都ビクトリア市に到着。10月1日までに、バンクーバー、ケローナ、ベラベラ、ハイダグワイを訪問した。27日、28日にはユーコン準州ホワイトホース市とカークロス市を訪問。同準州政府によると、この間の費用は約45万7千ドルだったと発表している。

 しかし専門家は、一家のカナダ訪問には世界中から約435のメディアが同行。アメリカのCNNやファッション雑誌ヴォーグ、イギリスのエンターテイメント雑誌ハローなど大手メディアも多く、BC州やユーコン準州が世界に向けて発信されたと、その効果は絶大と語っている。

 連邦政府はまだ費用の詳細を発表していないが、連邦警察は8日間の警護費が約200万ドルだったと発表している。

 

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。