2017年1月19日 第3号

 ジャスティン・トルドー首相の、13日にオンタリオ州ピーターボロー市で発言した内容がアルバータ州で波紋を呼んでいる。

 国民と意見を交わす全国ツアーを行っているトルドー首相は、この日の会合で参加者から昨年トルドー首相が承認したオイルサンドを運ぶためのパイプライン建設について質問され、オイルサンド産業はいずれ廃止しなくてはならないという考えを示した。

 トルドー首相は、「明日オイルサンド産業を廃止にするということはできないが、段階的に廃止の方向に持っていかなくてはいけない。そして、化石燃料への依存から徐々に脱却する必要がある」と語った。

 この発言に、オイルサンド産業が主要産業のアルバータ州から非難の声が上がった。同州野党ワイルドローズ党ブライアン・ジーン党首は「オイルサンド産業が悪役として攻撃されることに辟易している」と語り、オイルサンド産業はアルバータ州の経済を支え、カナダの経済を支えるエンジンだと反論した。

 また元国会議員で保守党前政権では閣僚を務めたアルバータ州野党進歩保守党党首選に立候補しているジェイソン・ケニー氏は、首相はカナダ経済にとって最も重要な産業を廃止するよう国民に要求していると非難した。

 一方で、同州与党新民主党(NDP)レイチェル・ノッテリー州首相は、違った見方を示している。同州首相は、首相がオイルサンド産業を廃止するという考えは近い将来に実現する短期的なものではないと思うと語り、2件のパイプライン建設計画を承認したことでもそれは明らかと語った。オイルサンド産業や天然ガス産業がこれからも世界経済を引っ張っていくことは確実であり、アルバータ州は世界トップクラスの持続的生産者として世界をリードしていくと語った。

 トルドー首相は2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で30パーセント削減することを掲げている。アルバータ州のオイルサンド産業は国内で最も温室効果ガス排出量が多く、これに対してアルバータ州ノッテリー州首相はトルドー政権と協力して地球温暖化対策に力を入れることを約束している。

 その中で、昨年トルドー首相が発表した炭素税導入にも同意。アルバータ州のオイルサンド産業とも協力していくことを明らかにしている。

 環境活動家はトルドー首相の言葉は化石燃料使用を廃止していこうとする世界の流れを反映したものだろう、と一定の評価をしている。

 

 

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