2018年7月12日 第28号
カナダ東部で続いた猛暑で、ケベック州では死亡者数がこれまでに少なくも54人になることが分かった。6日、ケベック州保健省が発表した。
最も多いのはケベック州最大都市モントリオールで28人に達している。今後も死亡者数が増えると予測されている。
死亡した多くは65歳以上の高齢者。猛暑の影響を受けやすい、身体的、精神的に、健康不安のある高齢者を直撃したとみられる。さらに、1人暮らしの高齢男性が死亡する割合が高く、モントリオールでは引き続き、一軒一軒訪問して状況を確認するなどの対策を講じていくとしている。
保健省は、不要な外出は避け、水分補給などを心がけるよう呼びかけている。
2018年7月12日 第28号
カナダ統計局は6日、6月の就業者数が3万1800人だったと発表した。ただ、労働市場への参加が増加したため、失業率は前月の5・8パーセントから6パーセントに悪化した。
就業者数のうちフルタイムが9100人、パートタイムが2万2700人増となった。公的機関への就業が1万1800人増、民間は2千人減。自営 業が2万2千人増。
業種別では建設業、製造業、天然資源産業が好調で、合わせて4万6600人増。一方で宿泊・フードサービス、卸売り、貿易で1万4700人減少した。
地域別ではオンタリオ州が好調で3万4900人増、前月比で0・5パーセント増加、サスカチワン州は1・5パーセント増の8300人となった。
予想に反して6月の雇用統計が好調だったことから、今月11日には、カナダ銀行が金利を引き上げるのではないかと予想されている。現在は1・25パーセント。
ただ、カナダ経済には不安材料も多い。アメリカとの経済関係では、カナダからアメリカに輸出する鉄鋼・アルミニウムに6月1日から高関税が課されたことから、カナダ政府は対抗措置を7月1日から実施。そのため、アメリカから輸入される商品への関税が一部引き上げられたことから、国内の商品が値上げされることが予想されている。
さらに、北米自由貿易協定の交渉も暗礁に乗り上げたままで、今後の交渉次第では厳しい状況が続く。貿易では、アメリカと中国との貿易戦争がカナダにどのような影響を与えるかも不確定要素が多い。
カナダ統計局が同日に発表した貿易収支報告書では、5月のカナダの貿易収支は、27・7億ドルの赤字となり、4月の18・6億ドルから大幅に悪化した。輸入が1・7パーセント増、輸出は0・1パーセント減少した。輸入では、航空機、輸送用機器、エネルギー製品が増加。輸出では、自動車、自動車部品、金属鉱石が不調だった。
カナダの全輸出量の74・2パーセントを占めた5月の対アメリカ貿易では、輸出が0・2パーセント減少し、輸入は1・0パーセント増加。貿易黒字は32・9億ドルと前月の36・9億ドルから減少した。
2018年7月12日 第28号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーの橋で3日、トランスマウンテン・パイプラインの拡張計画に反対するため、自然保護団体のメンバーが身を挺して抗議活動を行った。
この団体はグリーン・ピース・カナダ。12 人がバラード入江に掛かるアイアンワーカーズ・メモリアル橋に登り、うち7人がロープを用い、橋から宙吊りになった。残り5人は橋の鉄骨上に残り、ぶら下がったメンバーのサポートを行っていた。
この抗議の究極の目的は、入江奥にあるパイプラインの原油積み出し港へのタンカー航行を阻止することだった。パイプライン拡張計画が実現すると、同入江を行き来するタンカーの量は7倍になると予測されている。翌日、連邦警察(RCMP)の緊急対応チームによって宙吊りの一人が下ろされたほか、何人かは自主的に下り、下で待ち構えていた警察のボートに乗り込んだ。警察によると、この抗議活動に関与したメンバーには船舶法に基づく罪と器物損壊の罪が課せられるという。
パイプライン拡張計画に強い抗議を続けている先住民族スレイ=ワトゥース族のウィル・ジョージさんも、宙吊りになったひとり。彼はハンモックで宙吊りになっている状態でメディアの電話取材に応じ、人々にこのパイプラインを建設してはならないことを伝えるためならば、何でもやると答えている。また彼はバンクーバー中心街にそびえる高層ビルの外壁清掃を18 年間続けてきたので、宙吊りになることには慣れていると付け加えていた。
またジョージさんは今回の抗議活動に参加することで、息子にリーダーシップの手本となることができ、彼の属する先住民族のパイプライン建設計画に対する確固たる反対意志を表明することもできたと話していた。
2018年7月12日 第28号
ブリティッシュ・コロンビア州西海岸中部の町ベラクーラで9日、自宅に現れたグリズリーベアの様子を見に外に出た自然保護官が、母親グマに襲われた。
自然保護官のジョーダン・カーベリーさん(50歳)の自宅にクマが最初に現れたのは、前日夜のことだった。家に戻った際、車のヘッドライトに照らし出されたクマを見つけたが、威嚇して追い払った。
そして翌朝5時ごろに目が覚めたカーベリーさんは、家の外で何かが動いているのに気づいた。根っからのクマや野生動物好きのカーベリーさんは、これまでも様々な動物の写真をインターネットに投稿してきている。この朝も早速携帯電話を取り出し、外に出てみた。
そこで彼が見つけたのは、桜の木に登った何匹かのクマだった。それが子グマだと気づいたのは、その枝が折れ一匹が地面に落ちた時だった。その瞬間、彼の視界の隅に、彼に向かって突進してくる母親グマの姿が入ってきた。「母親グマの目はまっすぐ私を睨みつけていた」と、病院のベッドで当時の様子を説明するカーベリーさん。
ドアまでの距離は10メートルほどしかなかったはずだが、間髪入れず家に向かって走り始めたカーベリーさんは、追いつかれた母親グマに頭を噛みつかれ、そのまま放り投げられ宙を舞った。クマは地面に落下したカーベリーさんの、今度は右臀部から大腿部に噛みつき、再び放り投げた。以前、保安官としてクマと対峙する時の講習を受けていたカーベリーさん、足をクマの方に向け、近づいてくるクマの顔にめがけ、力の限りキックを繰り出した。クマがひるむすきに立ち上がったカーベリーさんは、さらに拳でクマの顔を殴りかかった。しかし「母親グマの動きは、まるでチャンピオン級のプロボクサーだった」とカーベリーさん。彼がパンチを繰り出す度、すっと頭をそらしてかわす母親グマ。しかしこの時にできた間合いは、カーベリーさんが家の中に逃げ込むのに十分な時間を稼いでくれた。
携帯電話は外で落としてしまったし、そもそも彼の自宅は圏外だった。頭皮の一部ははがれ落ち、胸に深い傷を負い、さらに臀部と大腿部にもクマに噛まれた深い傷、下腹部にも大きな傷を受けたカーベリーさんは、かなり出血していた。
固定電話も引いていなかったカーベリーさんにとって、助けを求める唯一の方法は、自分で病院までたどり着くことだった。
家を出て、車に向かう一瞬にも母親グマが襲いかかってきたものの、無事車に乗り込むことができた。10分ほどで病院に着いたカーベリーさんは、その日の午後にバンクーバー総合病院に搬送され、へそ部分の脱腸の治療のための手術も受け、療養中だ。
カーベリーさんは取材に対し、けががこの程度で住んだのは不幸中の幸いだったと語っている。彼は今までにもっとひどい状態を何度も目の当たりにしてきた。「目をえぐられるか、頸動脈を掻き切られるか。または腹部が引き裂かれ内臓をずたずたにされることもある。自分はそんな目にあわずにすんだ」とカーベリーさん。
今回の母親グマの襲撃は自然な防衛行動とみなされ、自然保護局では、このクマの駆除などは考えていないという。その代わりに、クマを引き寄せない対策としてカーベリーさんには、桜の木を切り倒すか電気防護柵を巡らせるよう命じている。またカーベリーさんも、クマを責める気は全くないと語っている。
2018年7月12日 第28号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市の北にある滝で3日正午ごろ、ハイキング中の女性が足を滑らせ急流に飲み込まれた。仲間の男性2人が女性を救おうとしたものの、逆に強い流れに巻き込まれ、3人とも死亡した。
事故が起きたのは、バンクーバーとウィスラーの中間にあるスコーミッシュの、全長335メートルのシャノン滝の上部。カナダ連邦警察(RCMP)によると、男女3人が渓流の瀞場で泳いでいたが、女性が足を滑らせ、強い本流に巻き込まれた。この女性を救おうとした2人の男性も流れに巻き込まれ、水面上から姿を消した。そばにいた犠牲者の友人らによると、彼らは30メートル以上を流されたという。
ノースバンクーバー捜索救難隊は渓流の中の様子を水中カメラを用いて確認していたが、同日夕方になって3人の遺体を発見した。しかし強い流れと、地上からはアクセスが困難な場所だったため、回収は困難を極めた。4日、ヘリコプターで現場の上空からロープで到着した警察のダイバーチームが、遺体の回収に成功した。
死亡した女性は、インターネット上の情報によると、ミーガン・ミンディ・スクレーパーさん。彼女はオンライン・マーケティングのビジネスを展開していた。また死亡した男性のうち一人は、スクレーパーさんのボーイフレンド、アレクシー・リアクさん。そして、もう一人はライカー・ギャンブルさんで、この二人はユーチューバーとしてオンライン上ではよく知られた2人だった。また3人とも出身校は、同州リッチモンド市のマクロバーツ・セカンダリースクール。在籍中から動画を駆使しており、宿題などを動画で提出、高成績を収めていたという。
リアクさんとギャンブルさんは、その友人パーカー・エウザーさんと組んで有名な世界各地を旅行するユーチューブ番組『ハイ・オン・ライフ』を配信していた。そんな彼らがメディアを賑わせたのは、2016年に米イエローストーン国立公園内で、保護されていた植生にダメージを与えたとして罰金を課せられたことだった。