2018年7月19日 第29号

 オンタリオ州進歩保守党(PC)政権ダグ・フォード州首相は17日、州の財政再建の第1歩として独立した財政審議会を立ち上げると発表した。

 オンタリオ州独立財政審議会を率いるのは、ブリティッシュ・コロンビア州元州首相ゴードン・キャンベル氏。2001年から2011年まで自由党政権で州首相を務めた。BC州自由党は保守党色が強く、連邦自由党や他州の自由党とは一線を画す。

 キャンベル氏の他には、法廷会計士アル・ロゼン氏と連邦高級官僚マイケル・ホーガン氏が任命された。

 審議会と詳細な会計検査にかかる経費は100万ドルと発表。3氏への報酬は各5万ドルと公表している。

 フォード州首相は「州民に、完全で、正確なオンタリオ州財政を提供したい」と記者会見で語り、「州民は自分たちの税金がどこに行って、どのような無駄遣いがされて、PC政権がどのように改善するか知る権利がある」と語った。

 州財政の調査と改善はPCの選挙公約でもある。公約したことを一つひとつ実行していく姿勢を見せるための、今回の措置とみられている。

 野党からは、すでに会計検査院長官が実施した報告書があるにもかかわらず、再調査するのは経費削減に逆行している、フォード氏が得たい答えを導くための審議会で正確な数字を示すためではないのではないかと指摘されている。

 

 

2018年7月19日 第29号

 ジャスティン・トルドー首相のユース委員会が、自由党政権のトランスマウンテン・パイプライン買収に反対する意見書を提出していたことが16日に分かった。

 意見書にはこの他にも、同パイプライン拡張工事計画に反対してデモを実行している人に対する攻撃的な言葉遣いを和らげることや、軍を出動させての反対デモ隊への攻撃をしないこと、この問題に対しての会議開催と日程の設定などを要望している。また環境保護、先住民族の権利の尊重なども含まれている。

 若者たちは、若者の意見を尊重し、環境問題対策で世界をリードすると我々に約束したトルドー首相が約束を破ろうとしている、気候変動の影響を最も受けるのは我々世代だと訴えている。

 意見書を公開した委員会の一人は、今回の政府のやり方は「帝国主義的行為」と批判している。

 カナダ自由党政権は今年5月29日、キンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプラインを45億ドルで政府が買収すると発表した。

 背景には、2016年に自由党政権が承認した同パイプライン拡張工事計画で、ブリティッシュ・コロンビア州政府や、環境活動家、先住民族など反対派による活動が激しく、工事を予定通りに進められないとして、キンダーモーガン社が今年5月31日を期限に事業の撤退も含めて再検証すると発表したことがある。これに応じる形でカナダ政府が買収を発表。しかしパイプライン拡張工事推進派からも政府の買収を疑問視する声が上がっている。

 

 

2018年7月19日 第29号

 ジャスティン・トルドー首相は10日、ラトビアの首都リガを訪問した。ラトビアにはカナダ軍が駐留している。

 ラトビアの首相と会談後の記者会見でトルドー首相は、2019年に終了するラトビア駐留の任務を4年間延長し2023年3月までとするとし、さらに、現在455人の駐留兵士を540人に増員すると発表した。

 ロシアと国境を接するラトビア、エストニアとリトアニアを含む元ソビエト連邦から独立したバルト三国は、2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟。2014年ロシアのクリミア併合以来、国境沿いで緊張状態が続いていることからNATO加盟国が駐留している。

 現在はラトビアにはカナダの他に、イタリア、スペイン、ポーランド、スロバキアなどの軍が駐留している。

 トルドー首相は記者会見で「NATO諸国や他の国際社会が支持してきた国際ルールが非常に重要であるということを、それらを無視し国際社会を不安定化しているロシアのプーチン大統領に明確なメッセージとして届くことを願っている」と語った。

 さらに、この日の記者会見ではNATOへの軍事費についてトルドー首相が言及。「カナダは軍事予算を2倍にする予定はない」と述べ、カナダがGDP2パーセント目標を達成する計画がないことも明らかにした。カナダは現在GDPの1・23パーセントを負担している。

 その後、トルドー首相はラトビアのカナダ軍が駐留するアダジにあるNATO軍基地を訪問。他の8カ国の兵士とも面会し、献花やイベントなどに参加した。

 次の日、ベルギーのブリュッセルに移動し、11日、12日のNATO会議に出席した。11日にはイラクでのカナダ軍の任務強化を発表。NATO軍による新たな訓練任務をカナダ軍が率いることを明らかにした。250人の兵士が任務に就くと発表したが新たに派遣せず、すでにイラクに駐留している850人の兵士から配置転換となるという。そこでは主にイラク人兵士に爆弾の解体などを訓練する任務にあたる。

 カナダは2014年9月からアメリカ主導の同盟軍として、イスラム国と戦うクルド軍を支援するためイラクに軍を派遣している。

 カナダ政府のラトビア、イラクでのカナダ軍駐留強化は、NATOでの軍事費負担増を求めるアメリカのドナルド・トランプ大統領へ金銭的負担以外でカナダが貢献できることを示す狙いがある。

 しかし10日には負担増の予定がないと発言したにもかかわらず、12日のNATO会議終了後の記者会見では、軍事費目標達成に向けて努力するとトルドー首相は語っている。カナダがNATOで2014年に合意した国内総生産(GDP)の2パーセント目標の達成に向けて努力することを明言。しかし、合意は努力目標との認識を示した。

 

 

2018年7月19日 第29号

 ヌナブト準州ハドソン湾西岸の、人口2600人あまりの町アルビアト沖10キロほどにある島で3日、ホッキョクグマに襲われそうになった子供を守ろうとした父親が、クマに殺された。

 アーロン・ギブソンさん(31歳)は同日午後、小学生の娘たちといたところをホッキョクグマに襲われた。ギブソンさんは娘たちにボートに向かって走るよう指示するとともに、自分は娘たちとクマの間にわって入り、子供を守ろうとした。

 娘たちは無事ボートに飛び乗るとともに、無線で助けを求めた。実際にこの無線を聞いていたギブソンさんの叔父ゴーディ・キドラピクさんは、それは身の毛もよだつようなものだったと取材に語っている。

 ギブソンさんは現場で死亡が確認された。また彼を襲ったホッキョクグマはその後、他の住民によって射殺された。キドラピクさんによると、ギブソンさんたちがいた島はホッキョクグマがいる島で、ギブソンさんはライフルを所持していたはずだった。しかし連邦警察(RCMP)によると、ギブソンさんらが襲われた際にライフルは即座に発砲できるような状態にはなっていなかったという。

 同夜、白夜のもとギブソンさんの遺体がアルビアトの村に運び込まれた時には、多くの住民らが海岸で出迎えた。キドラピクさんは、ホッキョクグマによる襲撃は今まで見たことがないと取材に話している。ヌナブト準州環境省によると、ホッキョクグマが人を殺した事件は、2000年にランキン・インレット(アルビアトの約200キロ北)で起こっている。また今回の事件発生時にホッキョクグマがどのような状態だったかなどに関しては、自然保護官がホッキョクグマの状況を調査するまで詳しいことは分からないとしている。

 アルビアトが含まれるハドソン湾西部のホッキョクグマ生息域では、2016年には約840頭が生息していると見積もられている。生息数自身は増減せず安定しているものの、大きさは縮小、健康状態も悪化傾向にあると専門家は指摘している。猟として射殺された頭数は2016年の28頭から、今年は38頭と増加している。

 またホッキョクグマが人間を襲う件数も増加している。ヌナブト準州と世界野生動物基金(WWF)は共同で、こうした事故を防ぐために犬小屋のまわりに電気柵を巡らせたり、金属製の食料保存箱の導入などを進めているほか、ハンターの安全のため発煙筒やクマよけ爆竹、クマスプレーなどの配布を行っている。

 ハドソン湾西岸では、湖面が氷で覆われる日数が10年で5日ずつ短くなっていると推定されている。湖面上の氷はホッキョクグマにとって、猟の場となる重要なもの。2017年に米国魚類野生動物局がまとめたクマの襲撃に関する報告書によると、1870年から2014年の間に73件の食料を狙った襲撃と、20件の人を襲う事件が記録されている。それらのうち約3分の2が、飢餓状態に陥りかけた若いクマによるもので、約90パーセントの襲撃が氷のもっとも少なくなる7月から12月の間に起こっていた。

 

 

2018年7月19日 第29号

 カナダ保健省は9日、心臓発作や脳卒中を防ぐための高血圧症治療薬の中に、発がん性物質が混入しているものがあるとして、28銘柄の降圧薬バルサルタンをリコールした。

 混入したのはN─ニトロソジメチルアミン(NDMA)で、長期にわたって摂取した場合に、がんを引き起こすことが確認されている。

 リコール対象となった降圧薬を製造していた5社は、いずれもその原薬を中国の浙江華海薬業(Zhejiang Huahai Pharmaceutical)から仕入れていた。なお同社は上海証券取引所に上場しているほか、日本などにも現地法人を設立している中国の大手医薬品メーカーで、高血圧治療薬の原薬では世界トップレベルのシェアを誇っている。今回のリコールは米国、日本、ヨーロッパなど世界各地で起こっている。

 カナダ保健省では、降圧薬を使用中の人は薬剤師に連絡を取り、薬がリコール対象かどうかを確認するとともに、適切なアドバイスを得るよう呼びかけている。また医師や薬剤師からの指示がない限り、降圧薬の使用を突然中止しないよう、念を押している。

 なお、リコール対象となった降圧薬(valsartan)の全リストは、カナダ保健省のウェブサイトで確認できる(『valsartan』『contamination』『recall』で検索)。

 

 

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