2018年7月19日 第29号

 ジャスティン・トルドー首相は10日、ラトビアの首都リガを訪問した。ラトビアにはカナダ軍が駐留している。

 ラトビアの首相と会談後の記者会見でトルドー首相は、2019年に終了するラトビア駐留の任務を4年間延長し2023年3月までとするとし、さらに、現在455人の駐留兵士を540人に増員すると発表した。

 ロシアと国境を接するラトビア、エストニアとリトアニアを含む元ソビエト連邦から独立したバルト三国は、2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟。2014年ロシアのクリミア併合以来、国境沿いで緊張状態が続いていることからNATO加盟国が駐留している。

 現在はラトビアにはカナダの他に、イタリア、スペイン、ポーランド、スロバキアなどの軍が駐留している。

 トルドー首相は記者会見で「NATO諸国や他の国際社会が支持してきた国際ルールが非常に重要であるということを、それらを無視し国際社会を不安定化しているロシアのプーチン大統領に明確なメッセージとして届くことを願っている」と語った。

 さらに、この日の記者会見ではNATOへの軍事費についてトルドー首相が言及。「カナダは軍事予算を2倍にする予定はない」と述べ、カナダがGDP2パーセント目標を達成する計画がないことも明らかにした。カナダは現在GDPの1・23パーセントを負担している。

 その後、トルドー首相はラトビアのカナダ軍が駐留するアダジにあるNATO軍基地を訪問。他の8カ国の兵士とも面会し、献花やイベントなどに参加した。

 次の日、ベルギーのブリュッセルに移動し、11日、12日のNATO会議に出席した。11日にはイラクでのカナダ軍の任務強化を発表。NATO軍による新たな訓練任務をカナダ軍が率いることを明らかにした。250人の兵士が任務に就くと発表したが新たに派遣せず、すでにイラクに駐留している850人の兵士から配置転換となるという。そこでは主にイラク人兵士に爆弾の解体などを訓練する任務にあたる。

 カナダは2014年9月からアメリカ主導の同盟軍として、イスラム国と戦うクルド軍を支援するためイラクに軍を派遣している。

 カナダ政府のラトビア、イラクでのカナダ軍駐留強化は、NATOでの軍事費負担増を求めるアメリカのドナルド・トランプ大統領へ金銭的負担以外でカナダが貢献できることを示す狙いがある。

 しかし10日には負担増の予定がないと発言したにもかかわらず、12日のNATO会議終了後の記者会見では、軍事費目標達成に向けて努力するとトルドー首相は語っている。カナダがNATOで2014年に合意した国内総生産(GDP)の2パーセント目標の達成に向けて努力することを明言。しかし、合意は努力目標との認識を示した。

 

 

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