2016年11月3日 第45号

 動物愛護団体マーシー・フォー・アニマルズが、ブリティッシュ・コロンビア州アボッツフォードの食肉処理工場での動物虐待を暴く、隠し撮り動画をインターネット上で公開した。

 この動画は、大手食品メーカーのリリデールへ七面鳥を卸している工場内で撮影された。

 2分間に編集された動画には、足かせをはめ宙吊りにされたまま工場内を移動させられ、通電した水槽に頭をつけられ気絶した七面鳥が、次々と回転する円形の刃で頚動脈を切られていく様子などが映されている。中には首の位置がずれ、回転刃によって顔を切断される七面鳥も。

 また、中にはそこで死なないまま、ゆで釜に投入される七面鳥もいると説明する従業員の声も入れられている。同団体のエグゼクティブ・バイス・プレジデントのマット・ライスさんは、鳥たちはまばたきしたり声をあげたりしている、意識があり苦痛にさいなまれながら、処理工程を進まされており、これは動物虐待だと指摘している。

 ライスさんは、リリデールの親会社ソフィーナ・フーズに対し、同社が契約している全ての処理場で、CAK(Controlled Atmosphere Killing)ー輸送中に鳥に酸素の代わりに、無毒の催眠ガスを吸わせ眠らせ、そのまま処理過程に送り込むーを導入することを確約するよう求めている。

 ソフィーナ・フーズの競合他社であるメープル・リーフ・フーズも、マーシー・フォー・アニマルズによる摘発を受け、CAKに移行することを公約している。さらに他の食品メーカー、カーギル・カナダも同様の対応を取っている。

 この動画の公開を受けてソフィーナ・フーズは、アボッツフォードの工場は業界および政府の基準を満たしたものだとするコメントを発表、同社として初めてのCAKを導入した工場が来年には稼動する予定だと付け加えている。

 

2016年11月3日 第45号

 10月31日未明、エアカナダ機がサスカチワン州レジャイナ空港に着陸した際、固定されていなかった機内食カートが暴走、3人が怪我をする事故が起こった。

 この飛行機はトロント発のエアカナダ119便で、乗客乗員合わせて97人が搭乗していた。

 乗客のバレリー・ブラッドショウさんは取材に対し、飛行機が滑走路に接地して急制動がかかったと同時に、客室の後方から機内食カートが通路を暴走してきて、自分の席の背もたれに激突したと語っている。その衝撃でブラッドショウさんは前に押し出され、顔の左側面を前の座席のTVスクリーンに激しくぶつけた。

 その衝撃はすさまじく、彼女は飛行機が事故を起こしたのではないかと一瞬思ったほどだと話している。安全管理の基準ISO9001のプロジェクト・リーダーを務めているブラッドショウさんに対し客室乗務員は、カートを固定するロック機構が壊れていたと説明したという。

 これを聞いたブラッドショウさん、こうした事故は安全管理が機能していれば未然に防げるもので、起こってはならないものだと憤慨している。

 エアカナダはメディアに対し、けが人は3人で、ブラッドショウさんともう1人は病院で手当を受けた後、その日のうちに退院したと説明している。ブラッドショウさんが聞いたところによると、もう1人は腕のあたりを骨折したらしい。また残りの1人のけがの状態は軽く、現場で救急隊員の治療を受けたとのこと。

 エアカナダはカートが固定できなかった原因を調査している。

 

2016年10月27日 第44号

 カナダと欧州連合(EU)で協議が進んでいる自由貿易協定(CETA)が今月27日の署名を前に待ったがかかった。

 カナダとEUの最終署名には、EU28カ国全ての合意が必要となっている。しかし署名を直前にしてベルギー南部ワロン地域が反対を決定。欧州の健康・環境基準に影響を与える可能性やカナダからの牛肉・豚肉の輸入が、この地域への産業に打撃を与えるのでは、などの懸念を理由としている。ベルギーでは地方議会の承認なしに重要な国際協定に国として合意できない。そのため、他の27カ国で合意されているものの協定署名に待ったがかかった。

 ワロン地域首府ナミュールでワロン地域リュディ・デュモット首相と会談に臨んでいたカナダのクリスティア・フリーランド国際貿易相は20日、これ以上の話し合いをしても進展しないとして説得を打ち切った。その直後には記者団に対し、「カナダ側としてはやることはやった。あとは欧州側の問題」と述べ、カナダのように欧州の価値観を共有し、忍耐強く交渉に臨む国と経済協定を結べないのでは欧州側に問題があると語った。

 欧州議会マルティン・シュルツ議長は21日夜、フリーランド国際貿易相と翌日にも話し合いの場を設けると語り、交渉決裂回避に向け努力することを強調した。ベルギーのシャルル・ミシェル首相はジャスティン・トルドー首相と電話で会談したと21日に記者団に述べ、今後もワロン地域と交渉を続け合意に向け努力すると語った。

 CETAは保守党前政権が進めていた交渉で、昨年11月に自由党が政権をとって以降も引き続き合意に向け欧州連合との話を続けていた。今回のフリーランド国際貿易相が話し合いを打ち切り帰国したことについて、国内では野党保守党が無責任と批判。保守党時代も約5年交渉を続けてきたとして粘り強く交渉するのが大臣としての務めと責めた。

 欧州側でも今回のワロン地域での反対で交渉が暗礁に乗り上げていることに懸念を示している。EUはカナダ以外にもアメリカや日本とも同様の協定合意を模索しているが、カナダとの合意失敗がこれらの国々との交渉にも影響するとみている。EUはイギリスが脱退を決めたことで自由貿易協定への影響がある中、欧州の移民問題など、すでに将来の自由協定締結に不安があるとされている。

 それにもかかわらず人口約350万人の地方議会での反対が、欧州では年間170億米ドル、カナダにも120億米ドルの経済効果をもたらすという協定を失敗に終わらす可能性があることは歓迎されていない。

 カナダにとって現在アメリカに過度に依存している輸出先からの脱却に欧州市場は大きな魅力。アメリカ大統領選の行方によっては変更も余儀なくされる可能性がある北米自由貿易協定(NAFTA)や、合意に難題を抱えている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などを見据え、欧州とのCETA締結は大きな意味を持つ。

 24日には欧州理事会ドナルド・トゥスク議長がトルドー首相に連絡を取ったとされ、首相事務所によると欧州でも27日の署名に向けて努力しているという。しかし25日にはシュルツ議長が、27日の署名は難しいだろうとドイツのラジオ局のインタビューで語ったとロイター電子版は伝えている。

 フリーランド国際貿易相は24日、27日署名のためにトルドー首相と共に欧州に行くことを期待していると語っている。

 

2016年10月27日 第44号

 国会は25日、野党保守党が出したヤズィーディー女性難民受け入れ動議を全会一致で可決した。

 ヤズィーディーとは主にイラク北部に住むヤズィーディー教を信仰するクルド人。2014年8月にイスラム国がヤズィーディー全滅を目的として攻撃し、男性は虐殺、女性は性的奴隷として捉えられている。

 この日はイスラム国に捉えられていたヤズィーディー女性ナディア・ムラドさんが見守る中、国会で難民受け入れが決まった。ムラドさんは「カナダに来て新しい生活を始める被害女性を代表してカナダにお礼を言いたい」と通訳を介して語った。

 ジャスティン・トルドー首相は改めて国会でヤズィーディー女性を受け入れることを約束すると語った。

 保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、4カ月以内に最低でも千人を受け入れるよう語ったが、ジョン・マッカラム移民・難民・市民権相は4カ月以内の目標については政府で尽力するとしたが、受入数についての言及は避けた。

 

2016年10月27日 第44号

 ケベック州モントリオールに本社を置く航空機・鉄道車両メーカー、ボンバルディア社が21日、2年で7500人の人員削減をすると発表した。主に鉄道車両製造部門が対象となる。これにより2018年末までに年間約3億米ドルの節減効果を見込んでいる。

 今年2月には2017年末までに7千人を削減すると発表したばかり。アラン・ベルマール最高経営責任者(CEO)が2015年2月に就任して以降、2回目の大規模人員削減となる。

 今回の発表では、カナダ国内では2千人が対象。ケベック州で1500人、残りは全国となっている。ベルマールCEOは今回の国内での人員削減が、現在連邦政府と交渉している10億米ドルのCシリーズ開発支援には影響がないとみていると語った。

 ケベック州政府はすでに10億米ドルの支援を約束しており、連邦政府へも同額の支援を要請している。

 

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