2016年11月3日 第45号

 連邦政府は2017年の移民受け入れ数について30万人と、10月31日発表した。ジョン・マッカラム移民・難民・市民権相は、この数字が今後の移民者数の基礎となると記者団に語った。

 「より多くの移民を受け入れることが統計学上の理由からいってもカナダにとっていい政策であると信じている」と語った。しかし政府の経済諮問委員会が示した45万人には達しなかった。

 2011年から2015年の保守党政権時代の移民者数は26万人。昨年11月自由党政権が誕生し、今年は30万人に増加した。シリアからの難民を受け入れたことも増加した理由の一つだった。

 しかし、高齢者が増加し経済発展のための労働力不足が将来的に懸念される中、移民受け入れ数はこの先5年は45万人が妥当とする経済諮問委員会がまとめた報告について、移民相は急激な移民者数増加を懸念する反対派を押しきれなかったと婉曲に説明した。

 移民相は、45万人は将来的には可能になると想像はできるが、2017年は現実的ではないと語った。

 ただ今回の発表について経済界からは不満の声が上がっている。優秀な人材を海外から呼び寄せるときに移民者制限数が足かせとなる場合が多いという。優秀な人材を招くことはカナダ企業の国際的競争力を高め、国内経済の発展に貢献し、雇用増加にもつながると主張している。

 しかし野党からは移民を受け入れても国内での受け入れ態勢が整っていないのでは本末転倒と、移民者がカナダで経済的な自立が早く実現できる支援を充実させることが必要との意見もあがった。

 今回の発表での内訳は、ビジネス関連・ケアギバーなどの職業移民は今年の16万600人から17万250人に、家族移民や配偶者移民などは8万人から8万4千人に増加。難民は5万5800人から4万人に減少する。ただ先週国会で決定したヤズィーディー難民受け入れについては実施される予定だが、詳細な数字は発表されなかった。留学生の永住権取得過程の改善については後日発表すると語った。

 

2016年11月3日 第45号

 連邦政府ビル・モルノー財務相は11月1日、財政政策最新改定案を国会に提出。今年3月に発表した予算案よりも赤字額が膨張する内容となった。

 今回の報告では今年度(2016― 17年度)の赤字額は251億ドルと予測。3月の予算案では294億ドルとしていたため減少しているように見えるが、実際には60億ドルの準備金を使用した後の数字であり、事実上は赤字額が膨らんだといえる。ただ、2021―22年度には146億ドルに減少すると予測している。赤字予算の解消時期についてモルノー財相は明言を避けた。しかし、負債額はこの先5年で3月に予測したよりも318億ドル増額すると報告している。

 負債額が増加すると予測するも、負債対GDP(国内総生産)比は、今年度の31・8パーセントから2021―22年度には30・4パーセントにやや改善すると予測している。

 今回、最も注目を集めたのは経済刺激策として、2017年から2028年までにインフラ整備費810億ドルを追加したこと。公共交通機関、環境対策インフラ、港湾整備などの貿易インフラ、住宅・チャイルドケアセンター・レクリエーションセンター建設から僻地のインターネットインフラ、そしてカナダインフラ銀行、インベスト・イン・カナダのハブセンター創設までを含んでいる。

 自由党政権は2017年にカナダインフラ銀行創設の法案を提出するとして、国内のインフラプロジェクトを金融面で支援するのが目的としている。

 インベスト・イン・カナダは2億1800万ドルを費やして創設する予定で、海外からの投資先としてのカナダを売り込む役割を果たすとしている。

 その他、国内企業の要望に応じて労働ビザの発給を迅速化することや国会財政調査官(PBO)に完全独立的権限を与えることなどが盛り込まれた。

 モルノー財相は「今回は長期的視野に立った内容となっている」と記者団に語り、カナダ経済にとってはまだ厳しい状況が続くと語った。

 野党保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、経済刺激策は減税を基本とするもので何十億と費やして行うものではないと批判。これではいつ均衡予算に戻れるのか分からないとし、「税金を使うだけ使って、借金を増やすだけという財政に懸念を抱く」と語った。

 新民主党(NDP)トーマス・マルケア党首は、インフラ銀行創設について国民を裏切る行為と批判。国民にとって重要なインフラを民営化することになり、最終的には橋や高速道路などが有料化されることにつながると語った。

 

2016年11月3日 第45号

 ベルギー首都ブリュッセルで10月30日、カナダ欧州連合(EU)自由貿易協定(CETA)の署名式が行われた。出席したジャスティン・トルドー首相は「カナダ経済にとっても、世界にとっても意味のある協定であるということを示したい」と語った。

 署名式に参加しトルドー首相との共同記者会見を行った欧州委員会ジャン=クロード・ユンケル委員長は「世界基準となるような協定となった」と胸を張った。

 今後はカナダと欧州議会で批准された後、来年早々には協定内容の98パーセントが実施され、関税が取り除かれる。欧州からは自動車関連や繊維関連産業への関税が大きく引き下げられることになり、乳製品も現在の2倍以上に輸入量が増えるとみられている。カナダからは牛豚肉や小麦の輸出などが大きく期待されている。

 残りの2パーセントの内容については、今後さらに全参加国の承認が必要となる。そのため、完全に協定が実施されるまでにはしばらく時間がかかる。

 今回の協定で交渉役を務め、署名式にも出席したクリスティア・フリーランド国際貿易相は10月31日、国会開催の前に記者団の質問に応え、今回の自由協定署名が世界に蔓延する保護貿易主義者を押し返す力強いメッセージになると語った。

 CETAは保守党前政権時代2009年から交渉が始まり、一時は欧州内での反対勢力に押され中断したものの、昨年の政権交代後は自由党政権が引き継いだ。それでも10月27日に予定されていた署名直前にベルギーのワロン地域議会が反対し、署名が延期。人口比率でいえば、EU5億800万人に対し1パーセントにも満たないワロン地域の反対で協定署名ができない事態にEU側もあわて、結局30日にようやく署名にこぎつけた。

 

2016年11月3日 第45号

 ジャスティン・トルドー首相は10月27日、上院議員に女性5人、男性4人を任命した。105議席ある上院議員席はトルドー首相が今春に7人を任命して以降も21議席が空席だった。

 今回選ばれたのは、さまざまな経歴の持ち主で、歴史学者から人権保護弁護士、自然保護活動家まで多種多様。自由党政権下での任命では初となる応募から選ばれた。

 トルドー首相は2014年、野党自由党党首時代に、自由党系上院議員を党から切り離し無所属とすると発表。それ以降は無所属議員として活動する議員と、前自由党系無所属議員を名乗る議員とに分かれた。そのきっかけとなったのが2013年に発覚した上院議員による経費不正受給問題。その中で当時の保守党政権が保守系上院議員をコントロールしているとの批判を受け、自由党は党員を切り離す手段を取った。

 カナダの上院議員は首相が任命する。自由党の首相に任命された上院議員は自由党系、保守党なら保守党系として活動し、国会での法案成立で議席数は大きな役割を果たす。

 そうした中で自由党が上院議員を党から切り離したため、現在は保守党系と前自由党系無所属、無所属で構成されている。新民主党(NDP)はこれまで政権を取ったことがないため、NDP系上院議員はいない。

 自由党は選挙前から上院の改革を公約として掲げ、その一環として今年に入り議員を一般から公募すると発表した。今回は初めて、その一般公募約2700人から諮問委員会の推薦を経て選ばれた9人が任命された。ブリティッシュ・コロンビア州、マニトバ州、東海岸州を代表する。そして10月31日にはオンタリオ州から6人が選ばれた。

 今回選ばれた議員全員は無所属となる。これで無所属38、保守党系40、前自由党系無所属21。数日のうちには残りケベック州からの6人が発表される。

 

2016年11月3日 第45号

 ブリティッシュ・コロンビア州財務省は10月28日、外国購入者による州内住宅販売動向を報告。同州政府が今年8月2日から導入した外国購入者税15パーセントが販売数に影響していることが明らかになった。ただ、販売価格には影響は出ていない。

 報告によると、9月のメトロバンクーバーの住宅販売数のうち外国購入者が占める割合は1・8パーセント。8月は0・9パーセントでやや増加している。一方、7月10日から8月1日までは13・2パーセントで、新課税が導入する前と後では数字が大きく変わっていることが分かった。

 また地域によって影響に差があり、バーナビーでは税導入前1カ月の外国購入者の割合は24・2パーセントだったが、9月は1・2パーセントに、リッチモンドは24・7パーセントが3パーセントに減少している。バンクーバーでも15・5パーセントから1・4パーセントに、サレーでは9・6パーセントから0・8パーセントに減少している。

 

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