2016年11月3日 第45号

 交通事故が原因で死亡したマニトバ州の青年の臓器提供によって、45人の命が救われた。

 タイラー・クラッセン君(16歳)は10月22日、同州スタインバッハの砂利道で車を追い越す際にハンドル操作を誤り、事故を起こし脳死状態となった。家族の知人によると、事故は彼が自動車免許を取得して2日目のことだったという。

 クラッセン君は約1カ月前、母親のリサさんに対し、自分の身に何かがあった時には臓器を提供するよう話していたと、家族の代理人のドリーン・デュエックさんは取材に話している。母親にとってはつらい決断だったが、本人の意志を実現するために臓器提供することに決めた。

 クラッセン君の心臓と肺は事故によるダメージが大きかったため、少しでも状態が回復することを期待して、事故後4日間は生命維持装置により身体機能を維持し、10月25日夜、臓器摘出手術が行われた。

 手術開始は予定より遅れて始まった。結局心臓と肺は移植に適するまでには回復しなかったが、腎臓、肝臓をはじめ眼球や筋肉ほかの組織が摘出された。

 クラッセン君は10月26日午前6時45分に亡くなった。彼が提供した臓器などにより、45人の命が救われることになったと、デュエックさん。

 実はデュエックさん自身も、腎臓病にさいなまれている11歳の息子を持つ。ひょっとしたらクラッセン君が自分の子供の臓器提供者になったかもしれないとコメントした彼女は、短い人生の最後に人々の命を救ったクラッセン君をほめたたえた。

 また残された家族のため、デュエックさんらは葬式の費用などを支援するためにオンライン上で募金サイトを開設した。

 なお、事故原因は警察が調査中だが、クラッセン君ともう1人の同乗者は事故当時シートベルトを着用しており、飲酒の疑いもなかったという。同乗者のほうは病院で治療を受けているが、状態は安定しているとのこと。

 

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