2016年11月3日 第45号
ブリティッシュ・コロンビア州サレー市に住む障害者が、乗り込んできた車いすの乗客に場所を提供するため、バスから降りるよう運転手に告げられた。
事件が起きたのは10月18日午後3時過ぎのこと。同市に住むポール・スコールフィールドさん(24歳)は、近くのレクリエーションセンターでフロア・ホッケーの練習を終え、帰宅するところだった。
週一回のこの練習は、スコールフィールドさんの楽しみのひとつ。彼のポジションはゴールキーパーなので、プロテクター類が入ったひときわ大きなバッグを運ばなければならない。
この日もいつもと同じようにギルフォード・タウンセンターのバス停から341系統ニュートン・エクスチェンジ行きのバスに乗り込んだスコールフィールドさんだったが、この時彼はバスの運転手から、そのスポーツバッグは大きすぎるので、もし車いすが乗り込んできたら降りるようにと言われたという。
今までそんなことを言われたことはなかったスコールフィールドさん、ショックを受けながらもいつもと同じように優先席に腰をおろした。
すると2〜3の停留所を過ぎたあたりで、車いすの人が乗り込んできた。運転手は車内を見渡してからスコールフィールドさんに、バスから降りるよう命じた。スコールフィールドさんが車内後方に移動するからと申し出ても、運転手は聞き入れなかった。
そこがどこだかもわからないバス停で降ろされた彼はパニックに陥り、泣きじゃくりながらライフ・スキル・ワーカーのウォルト・ギスブレヒトさんに電話して助けを求めた。ギスブレヒトさんによると、スコールフィールドさんはバスの乗り降りは自分ひとりでできるものの、レクリエーションセンターに通うこのルートを覚えるには何カ月もかかったという。そのため、降ろされた停留所は実際には乗車地点からそれほど離れていなかったものの、彼にとっては一大事となってしまった。
スコールフィールドさんは優先席や優先エリアを利用する権利があるのに、どうしてこうなったか理解に苦しむギスブレヒトさん。バスを運行するトランスリンクも、障害者を無理に降ろすような運行規定にはなっていないとし、調査を開始した。また、トランスリンク側がスコールフィールドさんおよびその家族と面会し、事情を聞くとしている。
しかし、この一件はスコールフィールドさんに、また同じことが起こるのではないかという不安を植えつけてしまった。公共交通機関が唯一の交通手段の障害者に対して、起こってはならないことだと彼は取材に語っていた。