2017年6月15日 第24号

 ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリア市で5月9日の選挙で当選した議員の就任式が行われた。グリーン党議員は7日、自由党、NDPは8日に宣誓し、自由党による1953年以来の少数派政権が誕生した。

 自由党は7日、今月22日に議会を再開すると発表。いよいよBC州の政治ショーが開幕する。

 自由党は5月9日の選挙で87議席中43議席と最多議席数を獲得したが、過半数に届かなかった。野党新民主党(NDP)も41議席と大幅に議席数を伸ばしたが、やはり過半数には届かなかった。一方、それまで1議席だった第3党グリーン党が3議席と躍進。結果、グリーン党が政策でカギを握る構図となった。

 その後、NDPとグリーン党が政策で協力することで合意。合わせて44議席となり過半数となるため、議会再開後に自由党内閣の不信任が決議され、NDP政権が誕生する可能性が高いとされている。

 ただ、グリーン党はNDPとの公式な連立を組む予定はなく、政策で協力するとしている。グリーン党アンドリュー・ウィーバー党首は7日「州首相が議会再開を決定してよかった。選挙後数週間経ったが、3党で協力して政治をしてほしいという州民の意見を尊重することで(3党が)一致したことは評価できる」と声明を発表した。

 議会が再開すると、まずは議長を選出する。議長は通常、与党から選出する。ただ法律上は閣僚以外の全ての議員から選ぶことができるとしている。

 議長は通常公平な立場で議会進行を円滑に進める役割を担い、議員としての投票権を行使しない。そのため、与野党の議席差が1議席しかない今回のような場合、議長一人が抜けただけでも法案成立に大きな影響が出る。再開直後は自由党から議長が選出されると予想されているが、政権が交代した場合は分からない。

 仮に自由党から選出されれば、法案へ投票する議員数は自由党42、NDP・グリーン44となり、NDPから議長が選出されれば、自由党43、NDP・グリーン43となる。

 その場合、どのような議会進行となるのか。1953年以来の少数派政権は、まだまだ今後も注目される。

 NDP・グリーンの主要公約は、今後BC州だけでなく、連邦政府の政策にも大きく影響する可能性がある。最も注目されているのは、キンダー・モーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張計画の停止。同計画は、連邦自由党政権が昨年すでに承認し、続いてBC州自由党政権も承認している。アルバータ州のオイルサンドをアメリカ以外への市場へと輸出するための連邦政府の天然資源産業政策で、停止になれば連邦政府の経済政策への影響も考えられる。アルバータ州政府は連邦政府が承認した計画を州政府が覆すことはできないと主張している。

 その他、BC州民に直接関係する公約として、高騰するバンクーバー不動産市場への対策や、教育・医療制度改革、選挙制度改革など、重要な公約が多く、同数となる議員数がこうした公約への法案にどのように影響するか注目されている。

 

 

2017年6月15日 第24号

 アメリカ前大統領バラク・オバマ氏が6日、ケベック州モントリオールで講演した。約6千人が詰めかけた会場には、連邦政府閣僚をはじめ、ケベック州の州首相やモントリオール市長も出席。相変わらずの人気ぶりをみせた。主催はモントリオール商工会議所。

 講演の中ではアメリカの現状を、世界が転換期を迎えている現在のような歴史的に重大な局面では、前に進まず後ろ向きになろうという誘惑が起こることがあると語り、不安定な世界で人々が安定を求める時代に独立主義や大衆主義が魅力的に見えることは理解ができると語った。しかし「我々は立ち止まっていてはいけない」と、人々が行動を起こすことが必要とも語った。

 気候変動対策ではアメリカのリーダーシップが一時的に停止したと語り、パリ協定から脱退したことに失望したと語った。

 オバマ前大統領は現在、世界各国で講演している。これまでにドイツのメルケル首相を交えて講演が注目されたが、イタリアやイギリスでも行っている。1月に政権交代した後、カナダを訪れるのは、これが初めて。

 この日は講演後、モントリオール市内のレストランで、ジャスティン・トルドー首相と2人きりで食事。その様子を、トルドー首相とオバマ前大統領のオバマ・ファンデーションがそれぞれ写真をツイッターに投稿し、相変わらずの仲良しぶりが話題となった。

 

 

2017年6月15日 第24号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島の、ビクトリア国際空港に近い海岸の町シドニーで、ハクトウワシが別の猛禽類のひなを育てているのが確認された。

 この猛禽類は、北米では一般的なタカの仲間のアカオノスリ(Red-tailed hawk)。同町内の木に作られたハクトウワシの巣をモニターしていた、ハンコック野生動物基金のメンバーが発見した。同基金のデビッド・バード博士は、このアカオノスリの雛はもともと、ハクトウワシがエサにする目的で、どこかのアカオノスリの巣から連れ去ってきたものだろうと推測する。

 本来ならばハクトウワシの雛のエサになってしまうはずだったが、巣に連れ帰ったハクトウワシの親は逆に、この雛もハクトウワシの雛と同じように給餌し、巣の中で一緒に育て始めた。多分、巣に連れ帰ってもエサをねだって鳴き止まなかったアカオノスリの雛の鳴き声が、ハクトウワシの親の母性本能を刺激したのではないかと、バード博士は推測する。

 今のところこのアカオノスリの雛は、3羽のハクトウワシの雛と一緒に巣の中で育っている。猛禽類の別種の雛が一緒に育てられる例は非常に珍しく、バード博士が知る限り歴史的に見ても2〜3例しか記録が残されていないという。

 アカオノスリの雛の大きさは、ハクトウワシのそれの半分ほどしかない。エサがふんだんに与えられている間は大丈夫だが、もしエサ不足が起こったら、体格の大きい雛が小さい雛を食い殺してしまうことはよくあることだ。アカオノスリの雛が飛べるようになるまでの間、そうした危機が訪れないように願うだけだと、バード博士は取材に答えている。

 ハンコック野生動物基金は引き続き、巣の様子をモニターし続けていく。

 

 

2017年6月15日 第24号

 ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバーで11日、燃料切れを起こした小型飛行機(セスナ172型機)が、同市海岸沿いの工業地帯の空き地に不時着した。

 事故が起こったのは午後4時ごろのことで、同市フィリップ・アベニューの高架橋そばの駐車場。小型機は駐車場の開けた空間に着陸を試みたもののうまくいかず、そのわきの樹木帯に機首から突っ込む形で停止した。小型機には定員いっぱいの4人が乗っていたが、一人が腕の骨を折るけがを負ったものの、ほかの人は無事だった。

 この小型機は、同日午前中に同州ローワーメインランドのラングレー空港を飛び立ち、バンクーバー島西岸の町トフィーノへの往復飛行の帰途の最中だった。

 目撃者によると、小型機はほとんど無音で駐車場めがけて滑空してきたという。

 事故機を調査した交通安全委員会は、燃料切れが墜落の原因だと翌日公表した。また操縦していた男性がメディアに語ったところによると、飛行機がライオンズ・ゲート橋上空に差し掛かったあたりでエンジンが停止したという。再起動を試みたものの成功せず、機体が滑空している間に緊急着陸に適した場所を探し始めたという。

 その結果、ノースバンクーバーの海岸沿いの工業地帯の駐車場が適切と判断、飛行機をそこへ誘導していったものの、着陸寸前にタンクローリー車が自分たちの方へ曲がってくるのが見えたため、それを避けるために機体を左に旋回させたところ、電線にひっかかりコントロールを失い、駐車場わきの樹木帯を仕切るフェンスに衝突して機首から突っ込む形になったという。

 事故調査も終わり、残された機体の撤去など後始末はこの小型機の所有者が責任をもって行うこととなった。

 

 

2017年6月15日 第24号

 オンタリオ州トロント市と、その郊外のバス・地下鉄を運行するトロント交通局(TTC)は先週、地下鉄の遅延理由の統計を発表した。

 統計が取られた期間は、2014年1月から、2017年4月までで、市内を走る3路線の地下鉄と、東隣のスカボロー市に延びるSRT(スカボロー高速鉄道)が対象。

 この期間中に記録された遅延件数は6万9千件を超え、単純計算で1日に58回の遅延(運行中断)が発生し、その平均遅延時間は1・8分となる。統計は、その原因を187のカテゴリーに分別しているが、主だったものと、それによる総遅延時間は次のとおりだった。

乗客のけがや病気・281時間
不審火や煙・185時間
乗客の迷惑行為・131時間
車両の不具合(ドアの開閉など)・94時間
人身事故・87時間

 このほか、爆破予告が34回あり221分の遅延を引き起こした。また不審物の発見は51回あった。乗務員の勤務拒否は60回発生、車内の衛生状態に問題(排泄物や嘔吐物など)があって運行を中断したケースは、395回に上った。特に大晦日などは件数が激増するため、交通局はフィンチ駅などの終着駅に追加職員を配置して、素早く対応する体制を取っているという。

 ひとたび発生すると処理に時間のかかる人身事故は、2014年から2016年の間は17 件から32件で推移している。交通局と緊急サービス職員が事故処理に当たるが、1件当たりの平均遅延時間は64分となっている。

 駅別でみた場合、ケネディ駅、キプリング駅、またフィンチ駅など終着駅での遅延が顕著だった。これは停車時間が長く、乗務員が車両内外の問題点を発見する機会が増えるためだとしている。終着駅以外では、ブロア=ヤング駅やセント・ジョージ駅といった2路線が交差する大型駅での遅延が目立った。また路線が地上に出るブロア=ダンフォース線のキール駅も遅延が多かったが、これは線路上に障害物(動物や植物)が発見されたり、線路の敷地内を横断する人がいたりすることが原因だとしている。

 統計期間内で最悪の遅延を記録した日は2015年2月17日で、地下鉄駅構内の浸水や、SRT線の車両がトンネル内で故障し立ち往生するなどで、約21時間の遅延を発生した。

 また各車両ごとのデータも公表されており、ブロア=ダンフォース線を走る列車の中で、車両番号5661番が頻繁に故障していることもわかった。この車両は先頭か最後尾の車両だが、ホームでこの車両を見かけたら、次の列車まで待った方が賢明かもしれない。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。