2017年6月8日 第23号

 米ドナルド・トランプ大統領が1日、パリ協定(2016年12月パリで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された新しい地球温暖化対策の国際ルール)離脱を発表した。これまでアメリカ政府と歩調を合わせるように対策に取り組んできたカナダ政府だが、今回の発表では、カナダは今後もパリ協定実現に努力していくと発表した。

 トランプ大統領がパリ協定から離脱することは予想されていた。5月下旬にイタリアで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)で、アメリカの気候変動とパリ協定の政策を再検討していると語ったトランプ大統領は、帰国後、公式に発表するとしていた。もともとパリ協定離脱は選挙公約だったため、正式に離脱を発表すると予想されていた。

 そのため、カナダのキャサリン・マッケナ環境相もアメリカがどのような結論を取ろうともカナダの環境対策への取り組みは変わらないと強調していた。

 この日、ジャスティン・トルドー首相は「アメリカのパリ協定からの撤退決定は残念だ」との声明を発表し、カナダは今後も気候変動への対策に取り組み、クリーンな経済成長を支援していくと強調した。

 マッケナ環境相も「とても残念だ」と語り、「クリーンな経済成長が世界の流れであり、カナダはもちろん、その流れに乗っていく」と語った。ただ、アメリカ政府はパリ協定から離脱しても、アメリカ国内ではすでに企業や地方都市が、パリ協定を支援しているし、その流れになっていると語った。

 カナダは2011年12月保守党政権時に、1997年に京都で採択された初の国際的環境対策協定の京都議定書から離脱することを発表。国内外から非難の声が上がった。その時、スティーブン・ハーパー首相は、アメリカや中国など主要な温室効果ガス排出国が加盟していない国際協定は不公平と理由を説明した。

 ただパリ会議に向け、保守党政権は2015年春、2030年までに2005年比30パーセントを削減するという目標を設定。国連に提出した。

 それから半年後、2015年10月の総選挙でジャスティン・トルドー自由党政権に交代。トルドー首相は同年12月に開催されたパリ会議で「カナダは帰ってきた」と公言し、カナダが国際的に積極的に環境問題に取り組むことを強調した。ただ削減目標は「最低限」としながらも独自案は出さず、保守党案をそのまま採用した。

 しかし、環境省は現在の状況では削減目標は達成できないと発表している。カナダがパリ協定を守るためには今以上の政策が必要となる。

 マッケナ環境相は、カナダはクリーンエネルギーに力を入れ、全国的な炭素税の導入など、できる限りのことはやっていくと語った。

 

 

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