2018年5月10日 第19号

 オンタリオ州トロントで開かれた党首討論会を盛り上げるサポーターに俳優が雇われていたことが8日、明らかになった。

 自由党キャサリーン・ウィン党首、進歩保守党(PC)ダグ・フォード党首、新民主党(NDP)アンドレア・ホーワス党首の3人が参加しテレビで生中継された7日の党首討論会で、会場となったシティTVの周りには、この日各党サポーターが多く駆け付け、党首の名前を書いたプラカードなどを持って盛り上げていた。

 その中のPCのサポーターに俳優が雇われていたという。このイベントへの参加を呼び掛ける募集を見た俳優たちから現地メディアに問い合わせがあり発覚した。

 これについて8日、記者会見で質問されたダグ・フォードPC党首は、初めて聞いたと語り、調査すると約束した。

 その後、PC広報メリサ・ラントスマン氏はこの事実を認め、この選挙区の候補がキャスティング会社に連絡して行ったとツイッターで説明。不必要で間違った対応だった、二度とこのようなことが起こらないようにすると語っている。ただ誰が直接関与していたのか、個人名を出すことはなかった。

 トロントの地方紙トロント・スター紙によると、7日の午後2時から8時まで75ドルで20人を募集していたという。

 実際にどれくらいの俳優がサポーターとして参加しているかについては正確な数字は発表されなかった。

 今回の件についてPCにますます批判の声が上がっている。フォード党首は3月に党首に就任して以降、選挙では慣例となっている記者が同行する選挙活動バスを取りやめたり、党のスタッフを使ってテレビインタビュー風の撮影を行ったりと、これまでとは違ったやり方で選挙へ臨もうとしている。こうしたやり方が必ずしも有権者にとって公平とならないため、批判する専門家もいる。

 今後は、トロントで知名度が高いフォード党首がオンタリオ州全体でどれくらい支持を伸ばせるのか、こうしたやり方が功を奏すのかに注目が集まっている。

 

2018年5月10日 第19号

 スウェーデンで始まったジョギングの新しい形、プロッギング。これは英語の『ジョギング』と、スウェーデン語で『拾う』を意味する『プロッカ・ウップ』を掛け合わせた造語。その名の通り、ジョギングをしながら、ゴミ拾いをしていこうというものだが、カナダでも愛好家が徐々に増え、全国的なネットワークも構築されつつある。

 バンクーバーに住む海洋生物学者のメラニー・ナイトさん(33歳)も、『プロッガー』の一人だ。彼女は30日間、毎日10分のプロッギングに挑戦、その様子をソーシャルネットワークのインスタグラムに投稿し続けてきた。

 ブロンドの長髪をなびかせながら、ジョギングスタイルに白い手袋、片手には紙袋といった格好で自撮りに微笑む彼女の手には、ある時は皮のベルト、子供のおもちゃ、また皮肉にも塵取りといったゴミが写っていた。

 ソーシャルメディアでプロッギングの存在を知ったナイトさん、仕事上いつも気になる深刻な海洋汚染に対する自分の取り組みと、好きなジョギングが同時にできるところが気に入り、早速実行することにした。

 同市スタンレーパーク沿いのシーウォール遊歩道をジョギングするだけで、手にしていた紙袋はいつもいっぱいになると、ナイトさん。そして2〜3日たてば、また袋いっぱいのゴミを拾い上げることになるエンドレスのプロッギングに、心が折れそうになることもあると語っていた。

 またオンタリオ州ストラトフォードに住むダニエル・フューラーさん(32歳)は、フェイスブック上にカナダ・プロッギングのグループを立ち上げた。今のところ登録数は300人程度だが、これからアウトドアスポーツの季節になり、より多くの人が参加することを期待している。

 

2018年5月10日 第19号

 ケベック州モントリオール市の家族が、大学に1千万ドルを寄付した。

 寄付したのはアミリアさんとリノ・サプートさん夫妻で、寄付先は息子が在籍しているノバスコシア州北東部のアンティゴニッシュにある、聖フランシスコ・ザビエル大学。彼は同大学のビジネス学科の4年生で、夫妻によると、彼は入学当初から大学に温かく迎え入れられていたという。

 同大学では現在、コミュニティの健康とウェルネスの中心拠点となるためのプロジェクトを推進中で、同夫妻の寄付は、学内の1967年に建てられた体育館オランド・センターの改修工事に充てられる。同大学の165年の歴史の中で、一回で支払われた寄付としては最高額となる。なお改修工事にかかる総費用は3千万ドルと見積もられている。

 サプート夫妻は乳製品を扱う企業の経営者で、カナダの裕福な家族トップ25にランクインしている。

 

2018年5月10日 第19号

 連邦新民主党(NDP)がクリスティン・ムーア議員のセクハラ行為疑惑について第三者機関による調査をすることが8日、分かった。同党ジャグミート・シング党首は声明を発表し、調査結果が出るまでの間、同議員が担っていた党での役職を一時停止すると明らかにした。

 今回のセクハラ疑惑は、同議員が2013年に退役軍人であるグレン・カークランドさんに対して行った行為が性的に不適切なものだった疑いがあるというもの。カークランドさん本人が、ムーア議員から迫られたことを告白している。

 カークランドさんは、これが男性による女性に対する行為ならば、すぐに世間が反応するが逆の場合は分かりにくいとテレビインタビューで語り、ムーア議員が同じNDPのエリン・ウィア議員のセクハラ行為を告発したことを思うと皮肉だとも語っている。

 ムーア議員はケベック州の議員で、2013年にNDP代表として復員軍人問題委員会に参加している。カークランドさんは2008年に派兵先のアフガニスタンで重傷を負い、2013年の委員会では証人として証言。自身のPTSDを含む経験や、その後受けた治療やケアについての意見を語っている。その当時に起きたムーア議員との関係を告白した。

 ムーア議員は今回の件を受けて声明を発表。党が独立機関に調査を依頼したことを歓迎すると語り、公平な調査が行われる機会が設けられたことを評価し、調査に入るため、今後はこの件に関するコメントを控えると語っている。

 ムーア議員は、2011年に初当選。この時の選挙で巻き起こったNDP旋風、別名オレンジ旋風の波に乗りケベック州の選挙区から立候補し当選した。以降、再選を果たしている。

 シング党首は、ムーア議員の処分について、第三者機関からの調査結果が出るまでは役職停止にとどまり、党員としては継続することを明らかにした。正式な処分は調査結果次第としている。

 NDPは別のセクハラ問題で議員を除名処分にしたばかり。シング党首は今月3日、セクハラ疑惑のあったサスカチワン州選出のエリン・ウィア議員を除名すると発表した。第三者機関による調査を終え、セクハラ疑惑が拭いきれなかったと説明。除名処分が妥当と判断したとシング党首が語った。

 このウィア議員へのセクハラ疑惑を最初に告白したのが、実はムーア議員。自分が直接セクハラを受けたことはないが、複数の女性から相談を受けていると語り、ウィア議員のセクハラ疑惑を明らかにした。

 その後、党は第三者機関による調査を開始。結果が出るまでは除名処分とせず、役職の一時停止にとどめていた。

 今回の処分を受け、ウィア議員は一応謝罪のコメントを発表したものの、除名処分となった理由はセクハラではなく、党の意向に背いたためと改めて主張している。

 

2018年5月10日 第19号

 認知症患者向けのユニークな施設が、ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドの、人口2万6千人ほどの町ラングレーに建設される予定だ。

 ザ・ビレッジと名づけられたこの施設は、ケア施設のカテゴリーとしては、介護なしの自立型住居となる。2・8ヘクタールの敷地内に、6棟の低層住宅が建てられるが、一般的な老人ホームや介護付住居と大きく違うところは、ひとつの棟には12部屋しかなく、全体でも78人しか入居できない点。そして、それとほぼ同数の訓練を受けたスタッフが入居者のサポートを行う。

 さらに敷地内には散歩道や花壇などが完備され、入居者は自由に散歩したり外気に触れたりすることができる。もちろん勝手に外部には出られないようになっているが、入居者がビルの中に閉じ込められて閉塞感を味わうようなことはないと、このプロジェクトのリーダー、エルロイ・ジャプセンさんは取材に説明している。施設には時間指定のスケジュールなどはなく、入居者は好きな時間に起きて、いつでも朝食を取ることができ、好きなアクティビティに参加したり、庭仕事にいそしんだりできるという。

 また敷地内に建てられるコミュニティセンターでは、売店や一般の参加も可能なプログラムが提供される。ジャプセンさん曰く、閉ざされた施設ではなく、コミュニティの中の小さな村のようなものでありたいと語っている。

 またBC州アルツハイマー協会のチーフエグゼクティブ、マリア・ハワードさんも、このようなタイプの施設のニーズは非常に高いと、取材に話している。

 2016年の時点で、およそ56万4千人のカナダ人が認知症を患っていると推定されているが、同協会によると、その数は2031年には94万人にまで増加すると予測する。多くの人は自宅に引き続き暮らすことを望むとみられているが、これは認知症という病気や、その治療といったことだけで解決できるような問題ではなく、交通手段、人材、教育、そして住宅といった様々な問題と取り組まなければならず、コミュニティのなかで彼らが暮し続けるためのサポート体制は全く追いついていないと、ハワードさんは指摘している。

 ザ・ビレッジは民間企業が開発・運営する。1カ月の入居料は6千ドルから7500ドルの間になる予定だが、これは政府の援助を受けていない施設としては平均的なものだという。

 

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