2019年5月2日 第18号

 クリスティア・フリーランド外相は4月30日、中国でカナダ人が死刑判決を受けたことについて「非常に懸念している」とオタワで記者団に語った。

 アソシエイテッド・プレスによると、中国で11人に対してメタンフェタミンを製造した罪で死刑、もしくは終身刑を言い渡している。

 その中の一人、カナダ国籍のファン・ウェイ氏には死刑の判決。フリーランド外相は「裁判所の判決を非常に懸念している」と語り、カナダは死刑自体に反対の立場を取っているが、それがカナダ国民ならなおさら強い反対を表明すると語った。

 この11人には、アメリカ人一人、メキシコ人4人が含まれているという。カナダ人以外の判決内容については、もう一人死刑判決を受けた以外は分かっていない。

 中国でのカナダ人に対する死刑判決は今年に入ってこれで二人目。最初は今年1月ロバート・ロイド・シェレンバーグ氏に、薬物密輸の罪で死刑が言い渡された。それまでの裁判では15年の禁固刑としていた。このような判決は中国のカナダに対する報復とみられている。

 カナダは昨年12月、バンクーバー国際空港で中国通信大手ファーウェイ副社長兼最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏を連邦警察がアメリカの要請により逮捕拘留した。これと同時にカナダ人二人が中国で拘束され、シェレンバーグ氏には死刑を言い渡され、今回二人目の死刑判決となった。中国はこの他にもカナダから中国に輸出されているキャノーラ製品を扱う2社に対して、害虫が見つかったため輸入を停止すると発表した。カナダにとって中国は最大のキャノーラ製品輸出相手国であり、カナダのキャノーラ製品輸入禁止措置は生産業者にとって大きな痛手になるとされている。

 4月28日の安倍晋三首相、ジャスティン・トルドー首相との記者会見で、カナダは日本にキャノーラ製品の輸入を増加するよう期待すると語ったが、安倍首相は現在のところその予定はないと語っている。

 カナダ政府は中国に担当者を派遣し、中国側と話し合いたい意向を示している。5月には孟氏が出廷する。カナダの孟氏に対する判断が注目されている。

 

2019年5月2日 第18号

 アルバータ州連合保守党(UCP)ジェイソン・ケニー州首相が5月1日に誕生した。閣僚も決まり、先月実施された選挙で大勝したUPCがいよいよ本格的に動き出す。

 ケニー州首相は就任式のあいさつで、「UPC政権は、雇用を創出し、経済を成長させ、西、東、南へとパイプライン建設を実現していく」と語った。

 天然資源産業が主要産業のアルバータ州では、2014年に石油価格が急落して以降、厳しい経済状況が続いている。さらに昨年8月に、裁判所がトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画に対して先住民族への説明と環境対策が不十分として工事中止を言い渡して以降、パイプライン建設が経済立て直しへの近道という概念を州民に訴え、トランスマウンテン計画の実現と、さらに東へと延ばすエナジーイーストやアメリカへのキーストーン・パイプライン建設工事など、滞っているパイプライン建設を一日も早く実現すると主張している。

 また今年4月1日から連邦保守党政権が実施した炭素税導入についても反対の立場を取り、撤回を求めて対策を講じると語った。

 連邦保守党政権時代には閣僚も務めたケニー州首相は、連邦議員とのつながりが深いことから、州民は大きな期待を寄せている。

 選挙戦で公約としていた州首相に就任後すぐにブリティッシュ・コロンビア州への石油輸送を停止するという件については、とりあえず保留としている。

 

2019年5月2日 第18号

 カナダ銀行は4月24日、金利を据え置くと発表した。今後の金利引き上げの可能性についてはカナダ経済が好転しない限り行わないとし、引き下げの可能性も示唆した。

 現在の金利は1・75パーセント。スティーブン・ポロズ総裁は、金利は現状が最適との見解を示し、2019年後半以降の経済成長に期待していると語った。カナダ銀行は2017年7月以降5回にわたって金利を引き上げている。

 また、今年の経済予測について、1月の時点では1・7パーセントとしていた国内総生産(GDP)成長率を1・2パーセントに下方修正した。

 4月30日にはカナダ統計局が今年2月のGDPが0・1パーセントのマイナス成長だったと発表。大きな要因は全国的な悪天候で、3月にはその反動が来るのではないかと専門家は予測している。交通運輸機関や倉庫業界が1・6パーセント減、鉱山業、石油・天然ガス産業も1・6パーセントの下落した。

 専門家は例え3月の経済が反動で好調となっても、今年の第一四半期は1パーセントの成長にとどまるだろうと予測している。

 

2019年5月2日 第18号

 トヨタ自動車は4月29日、オンタリオ州ケンブリッジ工場で高級車ブランド、レクサスの小型SUVレクサスNXを生産すると発表した。2022年からガソリンモデルとハイブリッドモデルを生産する。レクサスNXが日本以外で生産されるのはカナダが初めて。すでに生産されているレクサスRXやRAV4も生産開始され、カナダが北米で人気の小型SUVの生産拠点となる。

 ジャスティン・トルドー首相はこの日の記者会見で、トヨタの生産拡大はカナダの自動車産業への信頼の表れとカナダがこれまで誘致のために投資してきた結果だと語り、「カナダから北米全土への生産が行われる」と語った。さらにカナダが推進する自由貿易がカナダ経済に好影響を与える証明でもあると強調し、カナダは、北米、アジア、ヨーロッパとの自由貿易協定を実現し、「G7では唯一すべてのG7国と自由貿易を締結している国だ」と語った。

 カナダ国内では自動車産業の縮小が相次いでいる。アメリカ自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)が今年末でオンタリオ州オシャワ工場での生産停止を発表、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は今年3月、同州ウィンザー工場での生産を縮小すると発表した。合わせて4500人の雇用削減となる。

 トヨタ自動車カナダ社長フラヴィオ・ヴォルペ社長は、「トヨタのカナダ工場は、ここにとどまる」とカナダを強調した。

 

2019年5月2日 第18号

 ドイツの自動車メーカー、ダイムラー社は4月30日、二人乗りの小型自動車スマートカーについてカナダ、アメリカの北米市場から撤退すると発表した。

 2017年にスマートカーの生産を完全電気自動車化して以降、カナダでは6・3パーセント、アメリカでは58パーセント販売数が減少しているという。最近の北米の傾向は、SUVや小型トラックが人気で、ガソリン価格も比較的安いことから小型電気自動車の需要が落ちていると理由を説明。さらにヨーロッパデザインのスマートカーを北米の規則下で生産するには費用が掛かりすぎるとも説明している。

 スマートカーといえば、カナダでは3都市で展開されていたカーシェアリングCar2Goで使用されているが、すでにトロント市場から撤退、現在ではバンクーバーとカルガリーでのみ運営されている。

 ダイムラー社は現在メルセデスブランドの電気自動車に力を入れ、北米市場への導入を計画しているという。同社は電気自動車市場から撤退するわけではなく、中国に電気自動車工場の建設を計画中で、2022年には世界での販売を実施する計画と発表している。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。