2019年8月1日 第31号

 アメリカのクレジットカード最大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルが顧客データ流出の被害にあっていたことが7月29日分かった。アメリカで約1億人、カナダで約600万人に影響が出たと発表している。

 流出した顧客データは、2006年から2019年初めにキャピタル・ワン・クレジットカードを申請した時の情報で、名前、住所、電話番号、Eメールアドレス、生年月日、自己申告所得のほか、クレジットスコア、クレジット利用限度額、クレジット利用残高状況、2016年、2017年、2018年の利用明細などが影響を受けているという。さらにカナダでは約100万人のソーシャル・インシュランス・ナンバー(SIN)も流出した可能性があるとみられている。

 ただキャピタル・ワンによると、ログイン情報やカードナンバーは被害を受けていないという。

 今回のデータ流出は、アメリカ・ワシントン州在住のページ・トンプソン容疑者によるハッキングが原因で、容疑者はすでに逮捕されていると発表されている。トンプソン容疑者の動機は不明だが、キャピタル・ワンによると今回の流出情報が詐欺に利用された可能性は薄いとしている。ただ、これからさらに調査を進めるとしている。

 今回の被害にあったカード所有者にはキャピタル・ワンから直接連絡が届くという。ただし、電話やEメールでの連絡は行わないとしており、もし電話やEメールでキャピタル・ワンを名乗って情報を引き出すような連絡が来た場合は対応しないように注意をしている。

 またカード所有者はアカウント情報をチェックし、疑わしいカード使用状況を確認した場合はすぐにカナダ不正防止センター、サービスカナダに連絡するよう呼びかけている。

 カナダでは、大手卸売業のコストコや大手デパートのハドソンズ・ベイがキャピタル・ワンと提携してクレジットカードなどを発行している。

 

2019年8月1日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア州民が家計事情で厳しい状況にある実態が明らかになった。会計事務所MNPが7月29日に発表した消費者負債指数によると、毎月末に支払い不能状態まで200ドル以下という苦しい状況に陥っているBC州民が44パーセントもいることが分かった。これは3月の前回調査より5パーセント上昇している。

 一方、全国的には改善傾向にある。アルバータ州は4パーセント減少して44パーセント、サスカチワン・マニトバ州は6パーセント減の40パーセント、オンタリオ州4パーセント減の44パーセント、ケベック州8パーセント減43パーセント、東海岸州9パーセント減46パーセントと、数字こそ変わらないものの他の州は改善している。

 BC州は失業率でも全国で最も低く、経済状況も良好とされている中で、44パーセントが破産状態まで200ドル以下という数字に厳しい生活状況が表されている。

 さらに負債状況では、国民の61パーセントが自身の負債状況が「悪い」と答え、46パーセントが破産寸前で支援を求めることが恥ずかしいと感じているとの結果も報告している。

 

2019年8月1日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で7月29日に開かれた政治資金パーティーに出席したジャスティン・トルドー首相は、集まった自由党支援者に向けて次の選挙ではBC州の力が必要と訴えた。

 主要な州で現在、州政府が保守党系でないのはBC州のみ。昨年はオンタリオ州で進歩保守党が、ケベック州でCAQが、今年4月にはアルバータ州で連合保守党が、自由党、新民主党政権から保守党政権に取って代わり、トルドー自由党が政権を取った2015年10月以降、勢力図が完全に変わった。

 唯一BC州のみ2017年選挙でNDPが勝利し、中道左派が生き残っている。トルドー首相は支援者を前に、BC州は環境への投資の重要性を理解しながら経済も成長させ、先住民族との和解へも積極的に取り組んでいると語り、「BC州民こそが理解者だ」と語った。この日のパーティー券は1人1500ドル、35歳未満は750ドルだった。

 この日はUBCでの講演の前には、午前中は同市キツラノにある沿岸警備隊基地の改修工事完成のための記者会見に臨んだ。同基地は2013年保守党政権が閉鎖し批判が相次ぎ、2015年にトルドー政権が再開した。

 午後の早い時間には、ダウンタウンのデイビー通りを訪問。この日から開幕したプライド週間に合わせて、この通りで人気のゲイバーに立ち寄った。バーに来ていた客らは首相とのツーショット写真や握手を求めたりして首相の訪問を歓迎した。現役首相がゲイバーに立ち寄るのはカナダ史上初めて。

 

2019年8月1日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーを訪問していたジャスティン・トルドー首相は7月29日、首相事務所が元外交官に中国問題での発言で圧力をかけていたとされる疑惑に事務所が関わったという事実はないと否定した。

 記者会見で質問されたトルドー首相は事務所が元外交官に対して「指導した」という事実はないと否定、重要な関係者に政府が定期的に連絡を取っている活動の一環と語った。

 疑惑は24日全国紙グローブ&メールが、元在中国カナダ大使デイビッド・マルルーニー氏に外務省ポール・ソーピル副大臣から、カナダと中国の関係について公の場で発言する時には、その前に外務省の確認を取るよう要求されたと掲載した内容についてだった。副大臣は首相事務所からの伝言として伝えたという。これにマルルーニー氏は「不快感を覚えた」と記事の中で語っている。マルルーニー氏はテレビ番組に出演した時には、必要でない限り一般カナダ人は中国への渡航を控えた方がいいと発言をしていた。

 さらに同様の外務省副大臣からの電話は、元在中国カナダ大使ガイ・セント-ジャック氏にもあったと同紙は伝えている。セント-ジャック氏は各局のインタビューに答え、特別に問題だったとは思っていないと発言、外務省と首相事務所間のミスコミュニケーションではないかとの見解を語っている。

 さらに30日にもCBCの政治番組に出演したセント-ジャック氏は、グローブ&メール紙での掲載後に外務省トップ2人から電話があったことを明かし、外務省には発言を制限する意図はなく表現の自由を尊重していると伝えられたと語った。セント-ジャック氏はインタビューで2人の名前を明らかにしなかったが、その2人のうち一人はクリスティア・フリーランド外相自身だったと外務省が認めたとCBCは伝えている。外務省はマルルーニー氏にも連絡を取ったが、まだ直接連絡を取れていないことも明らかにしている。マルルーニー氏はCBCに対し、飛び回っているため、もしかして連絡が来ているかもしれないが直接話はしていないと語っている。

 現在カナダと中国の関係は緊張状態が続いている。昨年12月にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港で中国通信大手ファーウェイの孟晩舟CFOを拘束して以降、中国で2人のカナダ人男性が拘束されている。

 

2019年8月1日 第31号

 カナダ選挙管理委員会ステファン・ペラウト委員長は7月29日、10月21日に設定されている投票日を変更しない意向を示した。

 連邦裁判所はこの日がユダヤ教の祝日仮庵の祭りに当たるため、信者は投票や選挙活動を控えなければならず、権利と自由の憲章に違反する可能性があるとして、ペラウト委員長に投票日の変更を検討するよう言い渡した。

 今回の件は、ユダヤ教信者で保守党から立候補するチャニ・アーレイベイン氏とユダヤ教正統派の政治団体が訴えていた。

 しかしペラウト委員長は、投票期日が近づいたこの時期に投票日を変更するのは非現実的として、ユダヤ教信者には期日前投票などの方法を利用できると説明している。

 選管理委員長に投票日を決定する権限はなく、投票日が設定されて以降の投票日変更の決定権もない。ただ委員長は投票日について政府に進言することができる。最終的な決定権は政府と内閣が有している。

 29日にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーを訪問していたジャスティン・トルドー首相はこの件に関し記者団に対して、委員長の判断を尊重すると語った。

 総選挙投票日まで3カ月を切り、各政党による駆け引きが続いている。現在のところ、与党自由党は支持率で野党第一党保守党とほぼ互角、激しい選挙戦が繰り広げられることが予想されている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。