2019年8月1日 第31号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーを訪問していたジャスティン・トルドー首相は7月29日、首相事務所が元外交官に中国問題での発言で圧力をかけていたとされる疑惑に事務所が関わったという事実はないと否定した。
記者会見で質問されたトルドー首相は事務所が元外交官に対して「指導した」という事実はないと否定、重要な関係者に政府が定期的に連絡を取っている活動の一環と語った。
疑惑は24日全国紙グローブ&メールが、元在中国カナダ大使デイビッド・マルルーニー氏に外務省ポール・ソーピル副大臣から、カナダと中国の関係について公の場で発言する時には、その前に外務省の確認を取るよう要求されたと掲載した内容についてだった。副大臣は首相事務所からの伝言として伝えたという。これにマルルーニー氏は「不快感を覚えた」と記事の中で語っている。マルルーニー氏はテレビ番組に出演した時には、必要でない限り一般カナダ人は中国への渡航を控えた方がいいと発言をしていた。
さらに同様の外務省副大臣からの電話は、元在中国カナダ大使ガイ・セント-ジャック氏にもあったと同紙は伝えている。セント-ジャック氏は各局のインタビューに答え、特別に問題だったとは思っていないと発言、外務省と首相事務所間のミスコミュニケーションではないかとの見解を語っている。
さらに30日にもCBCの政治番組に出演したセント-ジャック氏は、グローブ&メール紙での掲載後に外務省トップ2人から電話があったことを明かし、外務省には発言を制限する意図はなく表現の自由を尊重していると伝えられたと語った。セント-ジャック氏はインタビューで2人の名前を明らかにしなかったが、その2人のうち一人はクリスティア・フリーランド外相自身だったと外務省が認めたとCBCは伝えている。外務省はマルルーニー氏にも連絡を取ったが、まだ直接連絡を取れていないことも明らかにしている。マルルーニー氏はCBCに対し、飛び回っているため、もしかして連絡が来ているかもしれないが直接話はしていないと語っている。
現在カナダと中国の関係は緊張状態が続いている。昨年12月にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー国際空港で中国通信大手ファーウェイの孟晩舟CFOを拘束して以降、中国で2人のカナダ人男性が拘束されている。