2019年12月5日 第49号
ブリティッシュ・コロンビア州グリーン党アンドリュー・ウィーバー党首が来年1月に党首を辞任すると11月27日に発表した。
今年10月にすでに党首辞任を公表していたが、次期党首が決まるまでは党首を続けるとしていた。今回の発表では1月に党首選に入るまでに暫定党首を決定することも発表している。
10月には次期選挙に立候補しないこともすでに公表しているが、議員としての任期を全うする。
ウィーバー党首はBC州議会で唯一のグリーン党議員として2013年に初当選。元ビクトリア大学教授で、環境問題研究者としても知られている。2017年の選挙では3議席を獲得し、カナダで初めてグリーン党として複数議席を獲得するという歴史的な偉業を成し遂げた。
そのわずか3議席が、現在のBC州議会の新民主党(NDP)少数派政権を支えている。2017年のBC州選挙では、それまで政権を16年間続けていた自由党がNDPよりも1議席多く獲得したが過半数に1議席足りなかった。そこでNDPとグリーン党が公式連立こそ組まないものの協力することで合意。自由党を不信任とし、NDPグリーン協力政権でここまできている。
ウィーバー党首が議員を辞職しないため議席数は変わらず、NDP政権体制が代わることはないとみられている。
グリーン党は3議員しかいないため、暫定党首は議員以外から選出すると発表している。BC州では2021年に選挙が予定されている。
2019年12月5日 第49号
ブリティッシュ・コロンビア州政府は11月27日、燃料価格開示法を可決した。これにより、石油会社はガソリン価格を設定している条件を提出する義務を負うことになる。もし違反すれば罰金などが科せられる。
ガソリン価格設定情報の強制的な開示にBC州が踏み切った背景には、今年の夏に起きたガソリン価格の高騰があった。
BC州、特にメトロバンクーバーでは一時1リットル1ドル70セントを超えるという、国内の他の都市と比べても異常な高騰ぶりを見せた。
これを受けてBC州政府はBC公益事業委員会(BCUC)に調査を指示。その結果、1リットルにつき目的が不明な13セントが付加されていることが明らかになった。この時に、BCUCは石油会社各社に、この13セントの解明のためガソリン価格を設定している条件などの情報を開示するよう求めたが、石油会社はこれを拒否。結局13セントがなぜBC州のガソリン価格に含まれているのか不明なままとなった。
1リットル13セントは1年間にすればBC州で約5億9千万ドルにもなる。特にバンクーバーではすべての生活費が高騰する中、年間6億ドル近い目的不明な料金を課せられていることになる。
会社側は市場競争の中での繊細な企業秘密と反論しているが、今後は拒否すれば罰金、もしくは何らかの行政的な罰則が科されることになる。
提出を求められた場合は、精製燃料輸入情報、卸売小売価格、精製所や貯蔵所の量などのデータを提出する義務が課される。
現在メトロバンクーバーのガソリン価格は1リットル1ドル30セント前後で推移している。
2019年12月5日 第49号
カナダの5大銀行のひとつ、モントリオール銀行が12月3日、第4四半期(8月〜10月)の収益が119億ドルに落ち込んだと発表した。
これには再建のための3億5700万ドルの費用も含まれていることも公表した。デジタル化とビジネスの簡素化を加速させているという。その中で全体の雇用から約5パーセント削減することも発表した。
正確な解雇者数は発表されていないが、現在の雇用者数から計算して約2200人になると各メディアでは試算している。カナダで約1500人、アメリカで約675人。
第4四半期の収益が落ち込んだ大きな要因の一つに、アメリカでの取引数が個人・法人ともに減少したことを挙げている。
カナダの大企業による雇用削減はアルバータ州でも発表された。カルガリー市に本社を置くカナダの大手石油会社ハスキーエナジー社は12月2日、10月までに約370人を解雇したと発表した。
この日開いた電話会議で、2020年、2021年に向けての方向性を語る同社ロブ・ピーボディCEOが明らかにした。同氏は「より集中的で、シンプルな企業へシフトして利益を出す努力を続ける」と語っている。
2019年12月5日 第49号
カナダの10州3準州の州首相13人が一堂に会する会議が12月2日にオンタリオ州ミササガで開催された。会議のあと記者会見に臨んだ州首相らは州からの連邦政府への要求を語った。
発表された内容で強調されていたのは、13州・準州が協力して連邦政府への要求を実現すること。10月に実施された総選挙でカナダ西部州による独立運動などが注目を浴びたが、ここでは一致団結を強調した。
州政府からの連邦政府への主な要求は4項目。ヘルスケア(健康保険制度)とインフラ整備への補助金、分配金の公平性、経済競争力の強化、カナダ北部への支援。
特に健康保険制度への支援については5・2パーセントの引き上げを要求。州政府が独自に実施している制度の充実を最優先したい意向を強調した。自由党は総選挙の公約として全国的なファーマケア制度の導入を掲げた。薬が保険適用外のため薬代を節約する高齢者を含む低所得層などで病気が完治しにくいなどの理由が背景にある。しかし州首相らは、現在の各州の現状として、病院で患者があふれかえる状態で、待ち時間もどんどん長くなっている中で、全国的なファーマケアの前にまずはヘルスケアを充実させることが重要と訴えた。
さらに一致団結を強調したのは分配金の公平性。これはアルバータ州が声高に訴えていた課題で、今回他の州首相らの協力を得たことでアルバータ州としては満足な結果となったとジェイソン・ケニー州首相は語った。
連邦政府からの州への分配金をめぐっては、天然資源産業が盛んなアルバータ州がカナダ経済と連邦政府の税収を大きく担っているが、原油価格が急落して以降、石油産業の低迷でアルバータ州経済は打撃を受け、失業率が全国平均より高いにもかかわらず、分配制度はアルバータ州に不利に働いているのは不公平と訴えていた。これがアルバータ州で起きた独立運動のきっかけの一つにもなっている。
今回の会議でこの点において他の州首相が制度の変更に同意したのは、連邦政府に対する一致団結の象徴的な姿勢となった。
また州の間で意見が違う事柄には一切触れなかったことも、今回の会議の目的を象徴していた。アルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州で意見が対立しているトランスマウンテン・パイプライン建設計画や、炭素税賛成派と反対派の対立、ケベック州で導入された宗教シンボル着用禁止法などは、今回の会議では議題に上らなかったと説明。協力できる点を確認することに焦点を合わせたと強調した。
州首相らは来年1月にジャスティン・トルドー首相と会談する予定になっている。
2019年12月5日 第49号
オンタリオ州で生活保護を必要とする州民の傾向が近年変わってきていることが分かってきた。
フィード・オンタリオが12月1日に発表した食糧危機についての報告書によると、フードバンクに通う人々の数が増加しているだけでなく、その傾向に州の危機的な状況が反映されていることが明らかになった。
オンタリオ州で2018年4月1日から2019年3月31日までにフードバンクを利用した州民は51万438人、前年同期比で1・8パーセントの増加。年間利用回数は約300万回で、前年同期比4・2パーセント増となっている。フードバンク利用者のうち3割は子どもが占めている。
さらに近年はフードバンクを利用するのは失業者や無職の人々だけではなく、正規の仕事を持つ人々が訪れる回数が増加していると報告している。
就職して収入がある人々のフードバンク利用率は過去3年で27パーセント増加。パートタイムやフルタイムの仕事を持っている人でも、フードバンクを利用しなければ生活できない実態が浮き彫りとなっている。
フィード・オンタリオのキャロライン・スチュワート代表は、こうした傾向はこれまで見たことがないと語っている。
背景にはさまざまな要因が絡んでいる。最低時給で働く労働者が多いこと、パートタイムや臨時雇用のため賃金が低いこと、トロントでは住宅価格が高騰し収入の70パーセントを住宅に充てるため他の生活費に回らないことなどがあげられている。
オンタリオ州の失業率は5パーセント台と全国でも低い水準になっている。それでも仕事に就いていれば基本的な生活ができるという保証がない現状が、フードバンクの報告書で浮き彫りになった。