2017年8月17日 第33号

 ブリティッシュ・コロンビア州新民主党(NDP)政権は10日、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画について、法的措置を検討すると発表した。ジョージ・ヘイマン環境相とデイビッド・イービー司法長官が記者会見で明らかにした。

 同拡張工事計画については、すでに環境保護活動団体や先住民族らが訴訟を起こし、その数は20件を超える。

 そして州政府も法的措置による工事阻止の方法を模索する。弁護士で元BC最高裁判所裁判官のトーマス・バーガー氏をすでに雇用し、次の段階へのアドバイスを受けるという。

 さらにヘイマン環境相は、9月から予定されている工事開始についても実行は不可能ではないかとの見解を示した。環境相はキンダーモーガン社が提出している8件の計画のうち環境への配慮が不十分な5件は、まだBC州政府によって承認されていないという。理由は、先住民族との協議に十分に対応していないからと説明した。

 この5件の計画が完成しない限り、私有地を除いて工事が進められることはないと語った。

 同事業計画は昨年11月、連邦自由党政権が承認。BC州自由党前政権も続いて承認した。しかし今年5月のBC州選挙を経て、7月からNDPが政権を担うことになった。NDPは選挙で「あらゆる手段を使って」トランスマウンテン・パイプライン計画を阻止すると公約。政権を担うに当たって協力体制を敷くグリーン党も、もちろん計画阻止を公約に掲げていた。この日アンドリュー・ウィーバー党首が声明を発表し、「計画阻止」がNDPへの協力条件となっていると明らかにした。

 キンダーモーガン・カナダ社が手掛ける同事業計画は、アルバータ州のオイルサンドをBC州バーナビー市まで運ぶ既存パイプラインを拡張するというもの。総事業費74億ドル、全長1150キロメートルのパイプラインが完成すると、オイルサンド輸送量は現在の3倍に増加。バラードインレットを通って、バーナビー市から輸出されているタンカー量は、現在の7倍に増加すると試算されている。

 パイプラインやタンカーの事故が相次ぐ中、環境活動家や関係する先住民族は同工事を強く反対。バンクーバー市やバーナビー市の市長も反対を表明している。

 

 

2017年8月17日 第33号

 オンタリオ州トロント市警察の警察官が、万引き青年を事情聴取した上で、補導ではなく必要な衣服を買い与えた。青年は間近に迫った面接のための服が用意できなかったという。

 事件が発生したのは6日夜、同市北部にある大型量販店だった。万引き事件の通報を受け、同僚とともにこの店に向かったナイラン・ジェヤニサン巡査にとって、この手の事件は日常茶飯事だった。

 しかし、すっかり後悔の念にさいなまれていたこの万引き青年が盗もうとしていたのが、ワイシャツにネクタイ、そして靴下という、普通の万引き犯が狙うものとは違ったことを知った同巡査は、青年から事情を詳しく知る必要を感じたと取材に語っている。

 この青年は、最近一家を支える父親が大病を患い、自分が両親や兄弟のために仕事を見つけなければならないというプレッシャーを感じていたという。そしてサービス業の会社の面接が決まっていたものの、その場にふさわしい服がないまま面接日が近づくにつれ、他の方法を考え付く余裕もないまま、万引き行為に走ってしまったとのこと。

 警察の世話になる人は、それぞれ事情を抱えている。もちろんそれによって罪を免れるわけではないが、と語るジェヤニサン巡査。彼はこの青年を警察署に護送する前に、必要な服を彼のために買っておこうと決めたという。売り場に戻った巡査だが、青年のサイズをよく把握していなかったため、結局売り場のマネージャーに、先ほど青年が万引きしようとしたワイシャツとネクタイを出すように依頼。合計で40ドルほどだった。靴下は購入しないことにした。

 ジェヤニサン巡査は、これらを直接青年に渡すことはせず、警察署が一時預かった彼の所持品に加えておいた。

 この青年に対する訴追は行われなかった。また、このワイシャツとネクタイを着用して面接に臨んだ青年は、見事採用が決まったという。

 

 

2017年8月17日 第33号

 23年前に会社勤めを辞め、徒歩と自転車による世界放浪を始めた男性が、子供の頃に抱いていた目的地にたどり着いた。

 この男性は、フランス人のジャック・シラートさん(53歳)。会社勤めを辞めた理由は、シンプルなライフスタイルを実現したからだったという。すべてを手放しランニングでヨーロッパじゅうを旅したシラートさん、走った距離は1万8000キロメートル、通過した国は32カ国にのぼり、最初の1年で履きつぶした靴は26足になった。その後、自転車購入資金を調達するため、しばしフランスに戻って働いたが、自転車を手に入れると再び世界へ飛び出した。

 これまでにいった国は120カ国を超え、様々な体験をしてきたという。ボスニアに入ったのは、ちょうど内戦が終わったところで、国内にはまだ緊迫した状況が続いており、シラートさんは兵士に殴られたこともあった。イエメンでは警官が一般人を殺害する場面を目撃してしまい、3日間牢屋に入れられたこともある。2年前にはアフリカで事故に遭い、九死に一生を得る体験も。医師から脾臓を摘出しなければ2時間以内に死ぬと告げられ、ほこりが舞う道端で手術を受けた。

 そんなシラートさんの放浪の原動力のひとつが、子供の時に夢見た土地ー北西準州のグレート・スレーブ湖ーを見ることだった。子供の頃、自分でもなぜだかわからないが、部屋に貼ってあった世界地図のカナダに目をやると、この湖をじっと見つめていたという。

 そして先月中旬、アメリカから北上を続け同準州のヘイリバーに到着した時、この夢を思い出したという。しかし、これで彼の旅が終わったわけではない。それどころか、当分終わることはないだろうと彼は取材に答えている。

 彼はフランスの自宅を貸すことで、旅費を捻出している。自転車の旅は、それほどお金がかかるわけではないが、生活必需品すら高価なカナダ北部の旅は楽でないと話す。

 これから彼は西に進み、同準州の人口500人余りの村フォートリアードを目指す。そこから西海岸を南下、メキシコを経て南米大陸に入る予定。いつか、この旅を楽しめなくなる日が来るまで、彼は地球上を走り続けると語っていた。

 

 

2017年8月17日 第33号

 パラリンピックに4回出場した盲目の水泳選手が13日、自転車で上り坂のコースでタイムを競う、ヒルクライムに出場した。場所はブリティッシュ・コロンビア州ノース・バンクーバー市の、サイプレス山のスキー場への上り坂12キロメートル。

 主催は地元のサイクリングクラブで、今年で10周年を迎えるこの大会は、膵臓がん研究への寄付集めを目的としている。

 水泳選手ドノバン・ティルズリーさんがこの大会に出場する決心をしたのは、膵臓がんのため昨年亡くなった父親への想いから。医者であった父親はまた、彼の水泳コーチでもあった。

 体力に自信のあるティルズリーさんは、上り坂は問題ないと取材に話している。しかし彼にとって急な下り坂は困難を伴う。昨年の大会では27分もかかってしまったと語るティルズリーさん。それでも5千ドルの寄付集めを目標に、雨上がりで青空が戻ったバンクーバーの空を目指してペダルをこいでいった。

 

 

2017年8月17日 第33号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーの中心街で、事故が連続して起こった。

 13日朝には、ウォーターフロントのカナダ・プレイス前に駐車していた観光バスが、動き出した直後に付近にいた人をひく事故が発生。重傷を負い病院に運ばれた2人のうち、49歳の男性が死亡、もう一人も重体だという。また同じく搬送された15歳の少女は、軽傷とのこと。3人は、アメリカ・マサチューセッツ州から観光に来ていた家族であることを、警察が翌日明らかにした。

 事故が発生した状況は調査中だが、ひかれた3人はバスの前に止めていたSUVの後部荷物室を開けて荷物を上げ下ろししていたところだったとみられている。バスの下敷きになった3人を救出するため、救急隊員らは木のブロックなどを用いてバスを浮かす必要があった。

 そして翌朝には、同じウォーターフロントで映画撮影中だった女性ライダーが乗っていたオートバイのコントロールを失い、事故死した。

 場所はウォーターフロントのコンベンションセンター向かいにある高層ビルで、前日の事故現場から2〜300メートルしか離れていなかった。

 目撃者によると、オートバイのスタント演技を担当していた女性ライダーは、コンベンションセンター前に設けられた階段のセットをオートバイで下り、通りに出たところで止まるリハーサルを4回無事にこなしていた。

 しかし5回目は逆に加速しながら通りを横切り、明らかにコントロールを失った様子で反対側の歩道に乗り上げ、その衝撃で空中を飛びながら高層ビル1階のガラスの壁に突っ込んだという。当時女性ライダーはヘルメットをかぶっていなかった。すぐに警察と救急隊員が駆け付けたが、その場での死亡が確認された。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。