2017年8月17日 第33号

 23年前に会社勤めを辞め、徒歩と自転車による世界放浪を始めた男性が、子供の頃に抱いていた目的地にたどり着いた。

 この男性は、フランス人のジャック・シラートさん(53歳)。会社勤めを辞めた理由は、シンプルなライフスタイルを実現したからだったという。すべてを手放しランニングでヨーロッパじゅうを旅したシラートさん、走った距離は1万8000キロメートル、通過した国は32カ国にのぼり、最初の1年で履きつぶした靴は26足になった。その後、自転車購入資金を調達するため、しばしフランスに戻って働いたが、自転車を手に入れると再び世界へ飛び出した。

 これまでにいった国は120カ国を超え、様々な体験をしてきたという。ボスニアに入ったのは、ちょうど内戦が終わったところで、国内にはまだ緊迫した状況が続いており、シラートさんは兵士に殴られたこともあった。イエメンでは警官が一般人を殺害する場面を目撃してしまい、3日間牢屋に入れられたこともある。2年前にはアフリカで事故に遭い、九死に一生を得る体験も。医師から脾臓を摘出しなければ2時間以内に死ぬと告げられ、ほこりが舞う道端で手術を受けた。

 そんなシラートさんの放浪の原動力のひとつが、子供の時に夢見た土地ー北西準州のグレート・スレーブ湖ーを見ることだった。子供の頃、自分でもなぜだかわからないが、部屋に貼ってあった世界地図のカナダに目をやると、この湖をじっと見つめていたという。

 そして先月中旬、アメリカから北上を続け同準州のヘイリバーに到着した時、この夢を思い出したという。しかし、これで彼の旅が終わったわけではない。それどころか、当分終わることはないだろうと彼は取材に答えている。

 彼はフランスの自宅を貸すことで、旅費を捻出している。自転車の旅は、それほどお金がかかるわけではないが、生活必需品すら高価なカナダ北部の旅は楽でないと話す。

 これから彼は西に進み、同準州の人口500人余りの村フォートリアードを目指す。そこから西海岸を南下、メキシコを経て南米大陸に入る予定。いつか、この旅を楽しめなくなる日が来るまで、彼は地球上を走り続けると語っていた。

 

 

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