2017年8月31日 第35号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島の南東沖で8月19日、養殖の大西洋サーモンが生けすから大量に逃げ出したと、アメリカの養殖会社が発表した。

 場所は、バンクーバー島ビクトリア市沖に広がるサンファン諸島の中の、サイプレス島。アメリカの養殖会社クーク・アクアカルチャー・パシフィック社が管理する生けすには、およそ30万5千匹の大西洋サーモンが養殖されていた。

 この生けすが予想外の潮の流れにより決壊し、かなりの数の魚が逃げ出した。会社も正確な数を把握していないが、約4〜5千匹が逃げ出したとみられている。

 アメリカ・ワシントン州の漁業・自然動物省は、大西洋サーモンは在来種の生息環境を脅かしたり、病気をもたらしたりする外来種(invasive)と見なしており、個人、漁業関係者に対しサイズの大小を問わず、可能な限り捕獲するよう促しているほか、業者に関しては、その販売を許可するように条例を変更した。

 一方カナダ漁業海洋省は、逃げ出した大西洋サーモンの監視を続けるとしながらも、これを侵略的(invasive)な種であるとは表現せず、また、この海域の在来種への影響についても明言していない。

 

 

2017年8月31日 第35号

 プリンス・エドワード・アイランド州の中心部、州都シャーロットタウンに隣接する人口8500 人ほどの町ストラトフォード。ここにある大手スーパーマーケット、ソービーズの駐車場には、妊婦や新生児を伴った母親を優先する駐車スペースがあった。

 しかし、そのことを示す看板が平等ではないという、地元の新生児をもつ父親ジャスティン・シマードさんからの指摘を受け、『妊婦や新生児を伴う利用者』に書き改められた。ところが、この件が新聞で紹介されると、新たな論議がインターネット上で巻き起こった。

 ある女性は、実際に出産をすることで足がむくんだり体が痛んだり、また体の一部を縫合しなければならない状況は、女性にしか起こらずそもそも平等でありえないと主張。また10 カ月に及ぶ妊娠と出産後の期間、女性は一時的に身体障害者になったも同然で、そんな時にこうした駐車スペースにどれだけ助けられたことかと書き込む女性もいた。  男性が性差別に苦言を呈するのは愚かなことだと認めるシマードさんだが、それでは例えば男性夫婦の家族の場合はどうなるのかと、疑問を投げかける。こうした『父親にも優しい』駐車スペースの主張に対し、ソーシャルメディアでは賛同する意見と『性差別に反対する性差別主義』だと反論する意見が巻き起こっている。

 プリンス・エドワード・アイランド大学で多様性と社会的正義について研究しているアン・ブライスワイト教授は、この状況を『抑圧のオリンピック(Oppression Olympics)』だと形容している。全てを平等に包括しようとする試みは、かえって個々のグループがお互いを監視する状況に陥らせると指摘。人はえてして正義が特定のグループにだけ、特定の仕方でなされるよう争っており、またそうした平等は他のグループの犠牲によって実現されると考えられていると説明している。

 この一件の発端となったソービーズの駐車場の最前列には、それほど多くのスペースがあるわけではない。平等であろうとして、新生児の父親であるとか、妊娠の可能性もある性転換者の男性のためであるとか、優先対象を網羅しようとする試みはかえって残しを生みだし、また女性の領域を侵害するような意味合いとなりうる。そうではなく、単に子供の親という意味を持たせるべきだと、ブライスワイト教授。

 今日の社会で人々は、より平等で包括的であるということを、何かを失うことだと感じていると説明する彼女は、そうではない本来の意味での平等で包括的な世界に作り変えていくべきだと取材に語っていた。

 

 

2017年8月24日 第34号

 反人種差別を訴える人々約4千人が19日、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市役所前に集まった。

 アメリカ・バージニア州シャーロッツビルで今月12日に起きた白人至上主義者らの集会での死傷事件後、バンクーバーの反多文化主義、反移民政策の極右グループがSNSで19日に集会を呼び掛けていた。

 これに対し、バンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長が、こうした極右グループの動きに反対する多文化主義、移民政策を支持し反人種差別を訴える人々の平和的な対抗行動を促した。

 そして19日には正午過ぎから続々と人々が集まり、反人種差別などを訴えた。ロバートソン市長も姿を見せ、「差別や偏見はバンクーバーに必要ない」と語った。BC州ジョン・ホーガン州首相も声明を発表し、あらゆる人種差別、偏見、不寛容を拒否すると語った。

 ジャスティン・トルドー首相は自身のツイッターで、「バンクーバー、よくやった。どんな時も多様性がカナダの強さだ」とメッセージを発信した。 一方、極右グループはほとんど姿を見せず、数人が個人的に現れたが、警察の介入により大きな衝突はなかった。CBCは、午後3時ごろ数人の極右グループが集まっていたと伝えている。

 しかしケベック州ケベックシティでは20日、反人種差別を主張する左翼派の人々が警察と衝突。その後、極右グループがデモ行進するという事態が起きた。

 警察によると、反人種差別の人々が暴動を起こしたためと説明、1人を逮捕したと声明を発表した。

 極右グループが集合場所に集まった後、政府関係建物の地下駐車場で待機。左翼派の人々の行動が収まるのを待って、駐車場から出て町をデモ行進した。極右グループは人種差別を主張しているわけではなく不法移民受け入れに反対していると語った。

 

 

2017年8月24日 第34号

 ブリティッシュ・コロンビア州自由党はクリスティ・クラーク前党首が今月辞職し、まもなく党首選が開始される中、サレー前市長ダイアン・ワッツ議員の名前が急浮上している。

 2005年から2014年までサレー市長を務め、2015年10月の連邦総選挙で保守党から立候補し当選したワッツ議員は、自由党党首選出馬に興味を示しているという。

 22日は世論調査会社インサイツ・ウエストが調査結果を発表。もしも明日、自由党党首選投票が行われたら誰に投票するかという質問で、ワッツ議員に投票するが39パーセントでトップ、続いてバンクーバー前市長サム・サリバンBC自由党議員が30パーセント、マイク・デヨンBC暫定党首が28パーセント、BC州リッチモンド‐クイーンズボロー選挙区ジャス・ジョハル議員が24パーセント、前BC自由党議員ケビン・ファルコン氏が23パーセントだった。

 ワッツ議員支持は性別では男性が多く、年齢別では55歳以上が多い。さらにワッツ議員が党首になれば、今年5月の選挙で自由党が惨敗したサレー地区での巻き返しも期待できる。

 インサイツ・ウエストのマリオ・カンセロ代表はワッツ議員が人気の理由に、クリスティ・クラーク前党首のやり方と不人気が5月の選挙結果につながったため、外部からの党首候補に期待があるのではと分析している。

 現在のところ、立候補を正式に表明している人はなく、党首選の日程も発表されていない。

 ちなみに同調査会社による新政権への評価結果は、新民主党(NDP)政権ジョン・ホーガン州首相の、これまでの活動ぶりを支持すると答えたのは52パーセントと半数を超え、支持しないは31パーセントだった。NDPと協力体制を取っているグリーン党アンドリュー・ウィーバー党首を支持するは48パーセントだった。

 

 

2017年8月24日 第34号

 山火事被害の拡大が続いているブリティッシュ・コロンビア州内陸部で22日、観測史上最大の山火事が発生していることが分かった。

 BCワイルドファイア・サービスによると、19件の山火事が一つになり46万7千ヘクタールの大きさに拡大しているという。

 現在400人の消防士が消火活動にあたり、25機のヘリコプターが出動している。

 これまでの最大は1958年に発生した22万ヘクタール。それを大きく超える大きさとなっている。

 ただ現在のところ、人家に直接的な影響はないという。

 毎年夏が山火事発生シーズンとなるBC州だが、今年は過去最悪のシーズンとなっている。4月1日から、これまで1031件の山火事が発生し、焼けた土地は90万ヘクタールを超えている。これまでの過去最悪は1958年の85万5千ヘクタール。また影響を受けた州民は、避難住民が3800人、避難勧告対象住民が約1万人となった。

 BC州政府は非常事態宣言を9月1日まで延長した。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。