2017年9月28日 第39号

 アルバータ州カルガリーの映画プロダクションが制作した、難病を克服した患者やその関係者のドキュメンタリー映画がワールドプレミアとして、オンタリオ州トロントで開催されたトロント国際映画祭で上映された。

 『生き証人(Living Proof)』は、さまざまな神経疾患が進行していく難病、多発性硬化症(multiple sclerosis)を22年前に発症したものの、それを克服したマット・エンブリーさん自身が監督を務めたドキュメンタリー映画。

 エンブリーさんはラビンダー・ミンハスさんと、マンジート・ミンハスさん兄妹とともに映画会社スポットライト・プロダクションを設立、この映画の制作に取り組んだ。

 約3年の歳月をかけて完成したこの映画は、原因も治療法も分かっていない多発性硬化症が、患者本人やその家族などまわりの人の生活にどう影響するのか、またそれに対してどう対応していったのかが描かれている。その一方で、この病気に取り組む環境(チャリティ団体から薬理学業界まで)が持つ問題点も指摘している。

 エンブリーさんの父親アシュトン・エンブリーさんは、息子が多発性硬化症と診断されて以来、この病気について独自に調べてきた。その結果、現在処方されている薬の有効性に疑問を持つようになった。最終的にエンブリーさんは、こうした治療法をやめ、乳製品フリー、グルテンフリー、そして十分なビタミンDを補給する食事スタイルに切り替えた。さらに水泳などを含む運動をコンスタントに続け、この病気を克服することに成功した。

 現在は自分の経験を講演やウェブサイトでも紹介しているエンブリーさんは、この映画が特に多発性硬化症の患者を抱える家族に、希望や勇気を与えられればと取材に語っている。

 

 

2017年9月28日 第39号

 北米自由貿易協定(NAFTA)交渉の第3ラウンドが首都オタワで始まった。26日には、アメリカ通商代表部ロバート・ライザー氏、メキシコのイルデフォンソ・ガヤルド経済相、そしてカナダのクリスティア・フリーランド外相が交渉に臨んだ。

 アメリカのトランプ大統領は、NAFTAはアメリカに不利な自由貿易として修正もしくは協定破棄の可能性を示している。今夏からアメリカ、カナダ、メキシコ代表が交渉を続け、今年中の協定合意を目指しているが、状況は厳しいとの見方が強い。

 第3ラウンドではアメリカ側から労働条件についての提案が示された。その他、投資、知的財産権についても今回のオタワ会談で新たな条件がアメリカから提案されている。

 カナダは労働力の自由化を優先事項の一つにあげている。60の職種についてビザ発給などの簡易化を米加両方で実現したい考え。しかし厳しい移民政策を優先しているアメリカとの溝は大きいとみられている。

 次回交渉は10月11日からアメリカ・ワシントンDCで行われる。

 

 

2017年9月28日 第39号

 ジャスティン・トルドー首相は21日、国連総会でカナダ国内の先住民族との問題を主題にした演説を行った。

 トルドー首相の演説内容は、カナダが先住民族に対して行ってきた差別と、それに対する政府の反省と償い、そして先住民族とともに暗い過去を克服する決意を表明したものだった。

 これについて国内では賛否両論が噴出している。賛成派は、難しい国内問題解決と差別や貧困といった世界共通問題を連携させた演説は、国際的に共感される、と一定の評価をしている。

 一方で、カナダの積極的な国際貢献に言及した演説をした方が良かったのではとの声もある。トルドー首相は昨年初めて国連総会に出席した。2015年11月に自由党が政権交代を実現し、それまで国連軽視だった保守党の政策から方向転換。国連平和維持軍にも積極的に参加することを表明していた。しかしいまだ具体的な政策は発表されず、検討中としている。カナダは2021年の国連安全保障理事会非常任理事国入りを目指しているため、今回の国連で何らかの表明が期待されていた。

 

 

2017年9月28日 第39号

 ノバスコシア州ハリファックス市が、旅行会社の調査で世界で最もフレンドリーな都市にランクインした。

 この調査は、アメリカ・ニューヨークに本社を置くコンデ・ナスト社が発行する、富裕層向け月刊旅行誌コンデ・ナスト・トラベラーが毎年行っているもの。

 旅行者へのフレンドリーさという観点から、何十万の読者の投票によって選ばれた15都市の中に、カナダからはハリファックス市が12位にランクインした。読者からのコメントの中には、ハリファックスのヨーロッパ風の通りや友好的な住民の物腰の中に幸せのオーラが感じられたというものもあった。

 しかし多くの読者は街の雰囲気とともに、他では味わえないロブスターをはじめとする北大西洋の新鮮な魚介類に高い評価を与えていた。

 ちなみに、上位10都市は以下のとおり。

1位 サン・ミゲル・デ・アレンデ(メキシコ)
2位 パース(オーストラリア)
3位 ヨーテボリ(スウェーデン)
4位 エヴォラ(ポルトガル)
5位 チェンライ(タイ)
6位 オークランド(ニュージーランド)
7位 シェムリアップ(カンボジア)
8位 オポルト(ポルトガル)
9位 ベイルート(レバノン)
10位 ダブリン(アイルランド)

 

 

2017年9月28日 第39号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島の、ビクトリア市の西約40キロメートルにある人口1万3千人ほどの町スークの住宅にクマの親子が出現した。この親子に対し、敷地から出ていくよう丁寧に言い聞かせている住人とのやりとりを映した動画がインターネット上で公開され、とてもカナダ的だと好評を得ている。

 18日にクマの親子が侵入したのは、郊外にある自然に囲まれたジョーダン・コートさんの家。犬が盛んに吠えるのが気になった彼がパティオから外に出てみたところ、そこには子グマ2頭を従えたブラックベアの母親がいた。子グマらは、親の足にぴったり寄り添っていたという。

 犬とクマの親子は距離を保ったままで、どちらも動こうとしなかった。コートさんは犬を家の中に戻した後、この様子を動画に撮り始めた。フェイスブックのページ『ところでスークでは(Meanwhile in Sooke)』に投稿された、この動画には、「ここから出て行ってもらいたいのだが」というコートさんの問いかけに応じ、向きを変えて敷地から立ち去るクマと、その後ろ姿に向かって「ありがとう」と感謝を述べるコートさんの声が聞こえる。さらにコートさんは「うちの庭を楽しんでくれたかい?よい一日を」と付け加えている。

 コートさんがこの場所に引っ越して来たのは約2年前だが、クマが出現したのは今回が初めてだったと取材に話している。彼は母親グマの落ち着き払った態度に感心させられたという。ことの一部始終はとても和やかだったと話すコートさん、人間のほうが落ち着いていれば、クマも落ち着きお互いに共存できるとコメントしている。コートさんはこの動画に、『カナダ人流、自然動物との接し方』とタイトルを付けている。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。