2017年9月28日 第39号

 ブリティッシュ・コロンビア州の、バンクーバーとウィスラーの中間にある人口1万7千人あまりの町スコーミッシュ。この町で自閉症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の人にリハビリを行っている、ケイナイン・バレー・リハビリテーション・センターのセラピードッグが、これを狼と間違えたハンターに射殺された。

 センター創立者のバレリア・カルデロニさんによると、事故が起こったのは18日朝のこと。いつもの月曜日と同じように、彼女は職員とともに10匹の犬を連れて市北部の森に散歩に出かけていたが、そのうちの一匹、カオルが至近距離から撃たれた。ちょうどカルデロニさんたちが犬に綱をつけている最中だったが、銃声のあまりの大きさに反射的に地面にしゃがみ込んだという。カルデロニさんと、撃たれた犬の距離はわずか3メートルだった。

 大量の血が流れ出すカオルに対し、静かに逝かせてやることしかできなかったと彼女は語っている。4歳になるカオルは、フィンランド原産のタマスカン種。そり引き用のこの犬は、シベリアン・ハスキーとアラスカン・マルミュート、さらにジャーマン・シェパードの掛け合わせ、狼によく似た犬種として開発された。

 鹿狩りの最中だったハンターはカオルを狼と勘違いし、そばにいた人が襲われる可能性があると思い発砲したと話しており、BC州自然保護局が捜査を開始した。事故が起こった場所は鹿狩りは許可されている国有地内だったが、その場所での狼猟は禁止されている。カルデロニさんは、このあたりには子供たちと一緒にハイキングによく来ると、取材に話している。彼女は以前から、子供たちが鹿狩りの現場に遭遇したり、誤って撃たれたりすることを危惧していた。

 カオルは感情セラピードッグとして、特に自閉症の子供たちを落ち着かせることに長けていた。興奮した子供たちがカオルに乱暴に接しても、彼女はトレーニングのとおりに床に寝そべり、子供たちが落ち着くのを待っていた。しばらくして落ち着きを取り戻した子供たちは、カオルにしっかりと抱きついていたという。

 自然保護局によると、この地域は鹿狩りが盛んな一方、犬の散歩やマウンテンバイク、ハイキングなどで人の往来も多いという。今回のカオルの事故は、猟のシーズンには目立つ恰好をすることが大事だということを、あらためて人々に知らしめたと語っている。またハンターに対しては、引き金を引く前に必ず、獲物が100パーセント間違いないか確認するよう念を押している。

 カオルの死を悼むだけではなく、その死に報いるためにも、カルデロニさんはこの地域での猟の禁止を訴えるキャンペーンを、オンライン上で展開するつもりだと取材に語っている。

 

 

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