2017年11月2日 第44号

 最近死亡者が続出して社会問題となっている、オピオイド系鎮痛剤の乱用による中毒。ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市に住むレイン・トンプソンさん(16歳)が、その中毒患者に解毒剤(オピオイド拮抗薬ナロキソン)の処置を行う講習会に参加したのは、10月28日のことだった。

 その講習後、市内中心部を友人と歩いていたトンプソンさんは、歩道で意識を失っている若者のまわりに多くの人だかりができているところに出くわした。近くに寄っていったトンプソンさんに対し、この若者の友人は、ヘロインを吸引したあと意識を失ったと説明した。

 この若者は昏睡に陥り無呼吸状態という、典型的な薬物中毒の症状を呈していた。この時点では誰も救急車を呼んでいないことに気が付いたトンプソンさんは、911番通報するとともに、つい2〜3時間前にもらったばかりの解毒剤キットを取り出した。解毒剤を一本注射するごとに2分待ち、若者の症状を確認する処置を繰り返したトンプソンさん。若者の意識と呼吸が回復するまでに、彼女は結局6回の注射を打った。その後救急車が到着するまでの間、心肺蘇生術を続けていたトンプソンさんは、人命救助につながるこのキットと使用方法を、多くの人が習得すべきだと取材に話していた。また彼女の母親も、彼女と同年代の若者が意識を失っている現場に直面しながら、人の命を救うことに徹した娘を誇りに思うと語っていた。

 

 

2017年11月2日 第44号

 ブリティッシュ・コロンビア州ローワーメインランドとバンクーバー島を結ぶBCフェリーのシニア料金(月曜日から木曜日まで)が、2018年4月から再び無料になる。現政権が選挙中の公約に基づき、実施する。

 同料金はかつて無料だったが、2013年に当時の自由党政権が利用客の減少と人件費や燃料代の高騰を理由に、正規料金から50パーセント割引くだけに改定していた。

 また今回の無料化と同時に、地方航路についてはシニア以外の料金も15パーセント値下げすることを、BC州交通省が明らかにした。

 

 

2017年10月26日 第43号

 ケベック州とアルバータ州で連邦補欠選挙が23日に実施された。ケベック州はケベックシティに近い選挙区ラック-セントジョンで、1980年以来、保守系政党が議席を保持してきた。アルバータ州はエドモントン市近郊スタージェン・リバーパークランド選挙区、ここも保守党が長く議席を保持している。

 今回の選挙は、ケベックは保守党デニス・レベル前議員が、アルバータ州は保守党ローナ・アンブローズ前暫定党首が、政界引退による辞職で空席となっていたために実施された。

 結果はケベック州では自由党リチャード・ハーバート氏が、アルバータ州では保守党デイン・ロイド氏が当選した。

 アルバータ州は予想通りの展開。ロイド氏が77パーセントを獲得して圧勝。NDPは7・7パーセント、自由党は12パーセントと、2015年選挙よりも低い得票率となった。

 ケベック州の結果は予想外となった。自由党が38・6パーセントで当選、次点は保守党で25パーセント、次いでケベック連合党23・4パーセント、2015年選挙では健闘した新民主党(NDP)が今回は11・7パーセントと苦戦した。当選したハーバート氏は同選挙区の出身で立候補する直前まで、同選挙区を含むドルブーミスタシニ市の市長を務めていたという知名度があったことが有利に働いた。自由党は37年ぶりに保守党から同選挙区の議席を奪った。前回自由党が議席を獲得したのは、現在のジャスティン・トルドー首相の父ピエール・トルドー元首相時代。今回の結果に、自由党では2019年総選挙に向けケベック州でのさらなる議席獲得が実現できるのではと期待が膨らんでいる。2015年にはケベック州78議席のうち40議席を獲得している。

 一方NDPが苦戦を強いられた。今月誕生したNDP新党首ジャグミート・シング党首は、カナダ連邦主要政党初の非白人党首。インド系カナダ人でシーク信者のシング党首は、男性シーク信者特有の長いひげとカラフルなターバンという出で立ち。党首選の時には党内のケベック州党員から党首にふさわしくないのではとの声が上がったという経緯がある。今回の結果が党首への拒絶反応かは特定できないが、NDPがケベック州で厳しい戦いを強いられることは予想されている。

 保守党も今年5月に誕生した新党首アンドリュー・シェア党首で、37年間続いた保守党議席を失った事実は厳しく受け止められている。保守党の党首としてケベック州では存在感が薄いシェア党首で、どう盛り返していくのか。与野党で明暗の分かれた補欠選挙となった。

 

 

2017年10月26日 第43号

 ケリー・クラフト駐加アメリカ大使が23日、オタワに赴任した。米ドナルド・トランプ大統領が就任して空席だったアメリカ大使が、ようやく赴任した。

 クラフト大使は同日オタワのジュリー・パイエッテ総督を訪問。あいさつでカナダとアメリカの関係強化を強調した。

 トランプ大統領の貿易政策を支持するとは語ったものの、北米自由貿易協定や、その他の貿易摩擦を抱える二国間の関係について、出身地のケンタッキー州の最大貿易相手国がカナダであり、二国間の貿易関係の重要性は十分認識していると語った。

 また二国間で違いのある環境対策についても、パリ協定から離脱を示唆したアメリカだが、他の方法で協力できることはあるとの見解を示した。

 クラフト大使はクリスティナ・フリーランド外相とも面会。フリーランド外相はアメリカ初の女性大使の就任に「素晴らしい」と言葉を贈った。パイエッテ総督も「カナダへの初の女性アメリカ大使を迎えることをうれしく思います」と語った。

 

 

2017年10月26日 第43号

 連邦政府は24日、最新経済報告書を発表した。今年3月に発表した予算案時より経済状況が大幅に改善したため、国民への手当充実策を強調した内容となった。

 注目されたのは子供手当拡大の前倒し。政府は2018年7月からインフレ率に合わせた物価スライド制による引き上げを実施する。子供手当導入を開始した2016年当初は同方式の導入を2020〜21年からとしていたが、今回前倒しを発表した。5年で約56億ドルが引き上げ分に必要と試算している。前倒しした理由を政府は経済状況が好調なためと説明している。これにより、現在の政府の指数によれば、2018年には6歳未満の子供一人当たり96ドル、6歳から17歳までは81ドルが上乗せされる。カナダ子供手当(CCB)は世帯の収入により支給額が異なる。

 他には低所得者への課税免除も拡大する。開始は2019年からで、詳細は来年の2018年度予算で発表される。

 今回、政府は中間層への支援拡大を強調した。自由党政権は今夏発表した税制改革案で、中小企業への税優遇制度の抜け道を利用した富裕層への取り締まりを強化する対策を発表したが、それが中小企業者を対象にしているとして批判された。選挙期間中から「中間層支援」を訴えてきた自由党の政策と異なるとも非難された。

 この批判を受ける形で政府は先週、中小企業向け減税策を発表。その直後、ビル・モルノー財相が、自身が代表を務める会社が、まさにその中小企業税優遇制度の抜け道を利用して利益を上げているとの指摘があり、非難の集中砲火を浴びた。その余韻は未だ収まっておらず、ジャスティン・トルドー首相と共に火消しに必死になっている。モルノー外相は、2015年選挙で当選して政治家として活動することを受け、利益相反を避けるための対策について倫理委員会委員長の支持に従った対応をしたと説明。間違ったことはしていないとしながらも、あまりの批判の大きさに、さらに厳しい対策を講じると語っている。

 今回の経済報告書について野党は、モルノー外相への非難から注目を逸らさせるために前倒しで発表した対策だと批判している。この問題はまだしばらく続くとみられている。

 

 

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