2017年10月26日 第43号

 ケベック州自由党政権は18日、公共施設での覆面使用を禁止する法案を可決した。これが大きな波紋を呼んでいる。

 覆面の中にはイスラム教徒女性が着用しているニカブも含まれる。ニカブとは眼だけを出したイスラム教徒女性が着用する独特の覆面スタイルで、今回の法案はイスラム教徒女性をターゲットにした政治色が濃い法案との批判が州内外で噴出している。

 公共施設とは、役所を含め、図書館や公共交通機関や学校も含まれる。ニカブを着用している女性を含め覆面した人は、こうした機関での勤務時、もしくは機関を使用する場合は覆面を脱がなければならないとしている。

 そのため法案が実施されれば、ニカブを着用するイスラム教徒女性に公共機関を使用する機会を奪うことになると反対派は猛反発している。

 ケベック州自由党フィリペ・クイヤード州首相は、公共機関を使用するときは顔が見えるようにするという「シンプルなこと」と説明しているが、反対派は納得していない。

 今回のケベック政府の対応に、モントリオール市デニス・コデール市長は「こういう法が、なぜ必要なのか分からない」と述べ、裁判で覆されるだろうと語った。

 一方でジャスティン・トルドー首相は、州政府の判断として連邦政府として介入しないことを示唆。ケベック州政府への消極的な対応に失望の声が上がっている。のちにトルドー首相は、服装について政府が制限することはできないとやや踏み込んだ発言を記者団にしたが、この件については積極的な発言はしていない。新民主党(NDP)ジャグミート・シング党首は「政府が何を着ていいか、着てはいけないかを決めることはできない」と語り、裁判所が人権保護をするだろうと語った。

 背景にはケベック州への政治的な配慮がある。ケベック州では来年、州議会議員選挙が行われる。今回の法案は州民の80パーセント以上に支持されている。連邦政府は2019年に選挙がある。ケベック州を制した州が政権を取る確率が高いことから、連邦各党もケベック州で支持されている法案を大きく批判できないという事情がある。

 しかしケベック州でも反対派がバス停で顔を覆ってデモを行ったり、州外からの批判が強かったりしたことから、24日にはケベック州法務相が会見を行い説明。入室時や乗車時に身分証明書を提示し顔を見せれば利用できる、取り締まるための警察官配置などは考えていないなど語ったが、曖昧で分からない、とさらに批判が強まっている。

 

 

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