2017年11月2日 第44号
最近死亡者が続出して社会問題となっている、オピオイド系鎮痛剤の乱用による中毒。ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市に住むレイン・トンプソンさん(16歳)が、その中毒患者に解毒剤(オピオイド拮抗薬ナロキソン)の処置を行う講習会に参加したのは、10月28日のことだった。
その講習後、市内中心部を友人と歩いていたトンプソンさんは、歩道で意識を失っている若者のまわりに多くの人だかりができているところに出くわした。近くに寄っていったトンプソンさんに対し、この若者の友人は、ヘロインを吸引したあと意識を失ったと説明した。
この若者は昏睡に陥り無呼吸状態という、典型的な薬物中毒の症状を呈していた。この時点では誰も救急車を呼んでいないことに気が付いたトンプソンさんは、911番通報するとともに、つい2〜3時間前にもらったばかりの解毒剤キットを取り出した。解毒剤を一本注射するごとに2分待ち、若者の症状を確認する処置を繰り返したトンプソンさん。若者の意識と呼吸が回復するまでに、彼女は結局6回の注射を打った。その後救急車が到着するまでの間、心肺蘇生術を続けていたトンプソンさんは、人命救助につながるこのキットと使用方法を、多くの人が習得すべきだと取材に話していた。また彼女の母親も、彼女と同年代の若者が意識を失っている現場に直面しながら、人の命を救うことに徹した娘を誇りに思うと語っていた。