2017年5月18日 第20号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー水族館は、顔面を撃たれて負傷しているところを救助されたアシカの治療に当たっている。

 このアシカはオスの成獣で、同市の砂浜スパニッシュ・バンクで5月5日に発見された。その時は意識がなく、極端にやせ衰えていたという。この日はメキシコの祝日シンコ・デ・マヨであったことから、水族館では、このアシカにセニョール・シンコという名前をつけた。北米大陸の太平洋側に生息するアシカ(カリフォルニア・アシカ)は、繁殖期にはカリフォルニア南部や、さらに南のバハ半島まで南下するが、それ以外の時期はBC州の北部沿岸まで北上してくる。

 アシカの治療を行った、同水族館水棲哺乳類センターによると、アシカの容体が安定するのに数日間を要したという。その後、全身麻酔を施してけがの診療を行ったところ、顔面を少なくとも2度撃たれていることが、わかった。

 同水族館主任獣医のマーチン・ハウリナさんによると、アシカの歯は砕け、片方の目は視力を失っていたという。アシカが負傷したのは、けがの状態から見て何週間か前だとみられている。

 アシカが完全に回復するまでには長い時間を要するだろうとハウリナさん。さらに、最終的に海に戻せる状態までになるかどうかは、今の時点ではわからないとしている。

 

 

2017年5月18日 第20号

 サスカチワン州レジャイナに住むザカリー・ネンソンさんは、6カ月をかけた南米旅行の途中だった。そんなネンソンさんのもとに、他人に貸していた自宅が大変なことになっていると、母親から連絡が入った。彼女は、すべての部屋の床も壁も叩き割られていると、その状況を伝えてきた。

 この知らせは、ネンソンさんにとっても寝耳に水だった。家を貸した住人は、レファレンスを電話で確認した時には、最適な借家人だと思えたからだ。しかし賃貸料を滞納したことがわかり、家の管理を任せていた母親に様子を見てもらうよう依頼した結果が、これだった。

 1カ月近く残っていた旅行を切り上げ、自宅に戻ったネンソンさんが目の当たりにした光景は、信じられないものだった。家には賃貸人はおろか、家具もほとんど盗まれ、残っていなかった。床も壁も壊され、ペンキがぶちまけられていたり、落書きされていた。トイレの便器は、粉々に砕け散っていた。

 修理や家具購入に、約4万ドルはかかるだろうとネンソンさん。警察に届け出たものの、目撃者がいない屋内で起こったことなので、立件は不可能だと言われた。また保険会社によると、こうしたテナントによる損害は、住宅保険ではカバーされないのが一般的だという。ネンソンさんは、賃貸に関する問題を扱う役所の窓口に出向き、何らかの補償が得られないか確認している。同時に、他の大家が自分と同じような目に遭わないよう、テナント選びの際には犯罪履歴調査も含め、念には念をいれるよう、メディアを通じ呼びかけている。

 

 

2017年5月18日 第20号

 マニトバ州からサスカチワン州、アルバータ州を横切り、ブリティッシュ・コロンビア州中部沿岸に達する高速道路、イエローヘッド・ハイウェイ。その名前は、19世紀に活躍した毛皮貿易商ピエール・ボストネスに由来している。彼は特徴的なブロンドヘアから、イエローヘッドのあだ名を持っていた。そして、この高速道路沿いには、イエローヘッド・ハイウェイであることを示す標識ー2本の緑色の針葉樹をバックにした、黄色い横顔ーが立てられている。

 マニトバ州ウィニペグのシンガーソングライター、スコット・ノーランさんは、ツアー移動中に、この標識の横顔ー特に前髪の格好ーが、ドナルド・トランプ米大統領にそっくりなことに気が付いた。彼は助手席の友人に、米大統領は自分の横顔をカナダ中の高速道路にまで掲げるよう要求していたんだと、冗談を飛ばした。

 さらにノーランさんは、このネタを行く先々のコンサート会場で披露。すると、今度はファンのほうからノーランさんに、「あの横顔が頭の中に残ってしまった」などと、このネタに対するメッセージが次々と寄せられるようになった。

 イエローヘッドの横顔も、米大統領の髪形も、どちらも以前から存在しており、今までは誰も気にしていなかった。しかし二つのイメージの間の関係性が指摘されると、意味がなくても脳が自動的にそれを認識してしまう。これは「パレイドリア」という錯覚の一種だと、トロント大学で神経科学を研究するカン・リー教授は説明する。

 奇妙な関係性ではあれ、この高速道路の知名度アップにつながることは、うれしいと話すのは、カナダ横断イエローヘッド・ハイウェイ協会のジョン・ウボチスキーさん。彼の場合は、横顔のもととなったピエール・ボストネスのイメージが定着しているため、米大統領には見えないと言い、単なる偶然だと笑っていた。

 

 

2017年5月4日 第18号

 州議会議員選挙戦中のブリティッシュ・コロンビア州でクリスティ・クラーク党首の有権者への対応にSNSが炎上している。

 きっかけはノース・バンクーバー‐ロンズデール選挙区で立候補しているナオミ・ヤマモト議員と共に4月30日、ノース・バンクーバー市を訪れていたクラーク党首が、有権者に声を掛けられたやり取りがCBCで紹介されたことだった。

 有権者が「こんにちは、クリスティ。リンダと言います。私は一度もあなたに投票したことはないんだけども」と声を掛け、「その理由は…」と言ったところで、クラーク党首が「私に投票する義務はないですよ。ここは民主主義ですから」とリンダ・ヒギンズさんの言葉を遮って去って行った。このやり取りをCBCのカメラが捉えていた。リンダさんはクラーク党首が去った後、「あらひどい対応」と言い、「当選しないことを願うわ」とつぶやいた言葉も収録されていた。

 これに州民が反応した。ツイッターでは#IamLindaで、これまでのクラーク政権に不満を持っていた人々が、一気に爆発した。クラーク政権政策で嫌な思いをした経験をツイートした。

 その中には、リンダさんと職場を共にしたことのあるパウエル・リバー‐サンシャイン・コースト選挙区で新民主党(NDP)から立候補しているニコラス・シモンズ議員のツイートもあった。「昔リンダさんと働いたことがある。今もそうだ」。

 しかし、これが自由党の反撃のきっかけとなった。自由党選挙対策本部長が「クリスティ・クラーク(党首)が言った通り、我々は民主主義の中にいる。だからNDPが自由党の選挙活動を(こういう形で)妨害するのも自由だ」とツイート。こうした、リンダさんの行為はNDPが仕組んだものと示唆するツイートが、自由党選挙対策側から続いた。

 ところが、CBCのリポーターが確認したところによると、実際には、リンダさんはたまたま夫の通院で同市を訪れていて、偶然クラーク州首相が訪問するのを知って、声を掛けただけだったことが分かった。

 元公務員でソーシャルワーカー・アシスタントだったサンシャイン・コースト在住のリンダさんは、NDPシモンズ議員とは、議員になる前に職場が一緒だったという。それでシモンズ議員がリンダさんを知っていただけで、リンダさん自身はNDPとは何の関係もないとテレビインタビューで語っている。

 これを受け5月1日にラジオ出演したクラーク党首は、「違う対応があったと思う」と自身の対応について後悔していると語った。しかし謝罪はしていない。自由党も今回の件で謝罪は発表していない。

 クラーク党首と自由党は、2月にも同党の内部情報がメディアに流れた時にNDPが自由党のコンピュータをハッキングしたと非難した。しかし、実際には同党サイトの不備から誰でもが閲覧できる状態なっていた情報を、BC州無所属議員が取得してメディアに送っていたことが判明。NDPとは全く関係なく、クラーク党首はNDPジョン・ホーガン党首に、この件について謝罪した。

 BC州選挙投開票は5月9日。自由党、NDPは、現在の支持率では接戦となっていると報告されている。

 

 

2017年5月4日 第18号

 ケビン・オラリー氏が4月26日、保守党党首選から撤退すると発表した。ケベック州での支持が低いためと理由を説明した。

 この日の記者会見でオラリー氏は、「私自身が、この党首選で勝つ確率はかなり高いと思う。しかし(連邦)選挙では勝てない。理由はケベック州」と語った。

 国政選挙で勝つには最低でもケベック州で30議席が必要だが、「自分はケベック州では12パーセントの支持しかない」。同氏はフランス語も堪能とは言えない。ケベック州で議席数を取れない党首では国政選挙に勝つのは難しいとの持論を語った。

 保守党には党をまとめて、自由党ジャスティン・トルドー首相に勝てる党首が必要。それができるのはマキシーム・バニエ議員と、この日の記者会見に同席したバニエ議員を支持することも表明。オラリー氏を支持する人々に、バニエ議員支持を促した。

 オラリー氏とバニエ議員は保守党党首選で先頭を走っていた。お互いにけん制し合い、オラリー氏はバニエ議員のプリペイドカードを使った偽会員を指摘し、バニエ議員はオラリー氏を「負け犬」と表現していた時もあった。

 しかし、この日のバニエ氏は終始笑顔。「オラリー氏は最強のライバルだった」と語り、「いいレースをお互いにしていたが、今は一つになった」と協力することを強調した。

 オラリー氏は、CBCのビジネス番組「ドラゴンズ・デン」や同局ビジネス情報番組にも出演していたビジネスマンで、政治経験はないが、知名度は非常に高い。その知名度を最大限に利用して、党首選に参戦した1月から党内での支持を伸ばしてきた。特に若者へのメッセージを強く発信し、独自の戦略で注目を集めた。しかし一方で、討論会に欠席したり、過激な発言をするなどの行為を批判する声も相次いでいた。良くも悪くも、保守党党首選に注目を集めたことは評価されている。

 記者会見したこの日は、全党首候補による最後の討論会がトロントで開催される日だった。その討論会開催まであと数時間というタイミングでの党首選からの撤退記者会見。さらに、党員が投票を開始する2日前というギリギリのタイミングだった。

 これで保守党党首選候補者は13人。この後行われた討論会は、オラリー氏撤退のニュースで影が薄いものとなった。保守党次期党首は5月27日に決定する。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。