2017年5月11日 第19号

 ハルジット・サージャン国防相の発言をめぐって、休会明けの国会で野党の厳しい追及が続いた。

 発端は4月18日、インドのニューデリーで開催された平和構築のための会議に出席したサージャン国防相が、自身のカナダ軍所属時代の役割について誇張発言したことだった。

 国防相は元カナダ軍兵士で、アフガニスタンに3回、ボスニアに1回派遣されている。カナダは2006年、アフガニスタンで、アメリカ軍、アフガニスタン軍と共にメデューサ作戦と名付けた1400人のタリバン兵一掃作戦を行った。当時のNATO(北大西洋条約機構)軍としては最大規模の作戦で、タリバン兵550人が死亡、作戦は成功したと認識されている。

 当時軍に所属していたサージャン国防相は、この作戦に参加。今回の会議で、この時の自身の役割を作戦の「設計者」と表現して紹介した。しかし実際には重要な任務を任されてはいたが、「作戦設計者」ではなかったことが判明。これを指摘され、サージャン国防相は謝罪したが、野党は執拗に追及している。

 1日の国会では保守党ローナ・アンブローズ暫定党首が国防相の発言を「武勇の横取り」と非難。カナダ軍兵士と国民の信頼を失墜させたとして、ジャスティン・トルドー首相に国防相を解任するよう要求した。

 しかしトルドー首相は、「国民は我々が間違ったことをした場合は間違いを認め、謝罪することを求めている」と述べ、今回の国防相と自民党の対応は、それを実践したものだったし、だからこそ私は国防相を信用していると反論した。

 しかし野党は、この件から一歩も引く様子はない。新民主党(NDP)トム・マルケア党首も謝罪だけでは不十分と批判した。1週間が経った週明け8日には、保守党は同国防相に対する動議を提出。しかし自由党多数で否決される見通し。

 国防省幹部は、この件について、サージャン国防相の謝罪で決着したとの認識を示している。

 

 

2017年5月11日 第19号

 ドン・メレディス上院議員が9日、辞職することが分かった。他の上院議員宛てに、辞職を示唆する書簡を送っていた。ただ文章の中では辞職という文字は一切使われていない。辞職する理由について、自分を支えてくれている家族と前に進みたい、上院は自分の反倫理的行為に煩わされるより、もっと重要な役割があるという認識は持っているつもりだと語っている。

 上院倫理委員会は2日、メレディス議員に対し上院からの除名勧告を発表していた。元裁判官や弁護士で構成された同委員会は、メレディス議員の未成年との性的行為について調査を進め、その結果、除名勧告という結論に達した。

 委員会は、「除籍以外に、メレディス議員が上院に与えた損害を修復する方法はない」とし、彼の取った行為は「上院議員として相応しくない」と結論づけた。

 メレディス議員については、今年初め、上院倫理委員リーズ・リカルド議員が同議員の行為について報告した。それによると、同議員は、ある女性と、その女性が16歳の時からオンライン・チャットやライブ・ビデオなどで性的なやりとりを行い、18歳までに3回の肉体関係を持ったという。女性が17歳の時に1回、18歳になって2回と報告されている。さらに、同議員は上院議員という立場を利用して女性に近づいたとも報告されている。

 これに対して本人は、この女性と肉体関係を持ったことは認めたが、18歳になってから1回のみと説明した。同議員は既婚者で、キリスト教ペンテコステ派牧師でもある。すでに公式に謝罪会見も行っている。

 2日の倫理員会の発表時点では、上院が、この勧告を受け入れるか、拒否するかの採決を早い段階で取るとされ、多数の議員が受け入れに回ると予想されていた。もし除名となれば、カナダ史上初の上院議員除名となるはずだった。

 同議員は、これまでにも事務所内でスタッフに対してセクハラや嫌がらせ行為があったとして倫理違反2件が現在でも調査中となっている。ただ議員を辞職すれば上院に倫理調査権がなくなるため、この2件の調査も打ち切りとなる。 今後は、メレディス議員がデイビッド・ジョンストン総督に辞職届を提出し、正式に辞職となる。

 同議員は2010年、当時の保守党政権スティーブン・ハーパー首相に任命され、保守党上院議員に就任。その後、無所属となった。昨年12月で就任6年となり、年金受給資格を得ている。60歳になると年間2万4千ドルを受け取ることができる。上院議員の中には、カナダ政府がメレディス議員の年金受給資格をはく奪するよう願っていると発言している議員もいる。

 

 

2017年5月11日 第19号

 ブリティッテュ・コロンビア州選挙まで残り1週間となった2日、自由党クリスティ・クラーク党首は、もし再選されたら、BC州を通って輸出される石炭に石炭税を導入すると語った。

 アメリカやカナダ他州で採掘された火力発電などに使用される燃料用石炭は、中国や日本などのアジア市場へ向けBC州の港から輸出されている。バンクーバーには最も大きな石炭輸出港のひとつデルタ市のウエストショア港がある。これらの港を使用する石炭輸出に1トンにつき70ドルを課すとしている。

 クラーク党首はジャスティン・トルドー首相に、BC州を通る石炭輸送禁止を求める書簡を4月下旬に送っている。今回の発表では、もしカナダ政府が輸送禁止措置を取らず、BC自由党が選挙に勝利した場合は石炭税を導入するとしている。

 今回のクラーク党首の強気の発言は、アメリカ政府がカナダからの木材・製材に対して最大24パーセント課税するという政策への報復措置をアピールする狙いがある。BC州はカナダ最大の木材・製材輸出州。米加は現在、木材・製材貿易について新協定締結を模索している段階だが、アメリカ側はカナダから輸入される木材・製材が政府用地から仕入れるため、アメリカの製品よりも価格が安くなるのは不公平として、カナダからの輸入品に対して課税すると発表した。そうなればBC州への影響は大きい。BC自由党は、選挙戦で新民主党(NDP)との接戦が予測され、経済・雇用を最優先と掲げる自由党にとって、木材・製材産業と共に戦うという姿勢を示す狙いがある。

 石炭輸出でBC州の港を使うのは94パーセントがアメリカだが、クラーク党首はアメリカ以外にもアルバータ州なども同様に課税対象にすると言及している。

 これに対しアルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相は、州政府に石炭税導入の権限があるとは思えないと反論。アルバータ州にも打撃を与えるが、BC州にも影響があるのではと語っている。

 トルドー首相は、BC州の提案について考慮するとの姿勢を示している。こうした米加の動きに貿易戦争が勃発するのではとの懸念も聞こえている。米ドナルド・トランプ政権は、カナダの養鶏業もすでに攻撃対象とし、北米自由貿易協定(NAFTA)についても改正する必要があると語っている。

 しかしショーン・スパイサー米大統領報道官は8日、ホワイトハウスでの定例記者会見で、米加貿易戦争の可能性について聞かれると「それはない」と否定。貿易協定改善の手順だと語った。

 

 

2017年5月11日 第19号

 国会で4日、薬物過剰摂取による死亡者減少の対策として、「善きサマリア人薬物過剰摂取法」が可決された。これは、薬物過剰摂取が原因とみられる命の危険がある人を見つけた時に、薬物過剰摂取者の救助のために警察や救急車を呼んだ場合、救急車を呼んだ人自身が少量の薬物を所持していたとしても罪に問わないというもの。

 カナダ、特にブリティッシュ・コロンビア州では薬物過剰摂取による死亡者が急増し、問題となっている。その傾向が隣州アルバータ州や全国に広がりつつある。

 しかし、薬物過剰摂取が原因とみられる命の危険がある人を見つけたとしても、見つけた人自身が薬物を所持している場合は自身の身を守るため、通報されないケースが多いという。それが薬物死亡者増加につながっている可能性もあることから、今回の法案が少しでも死亡者減少につながることを期待している。

 この法案は2016年にBC州コキットラム‐ポート・コキットラム選挙区の自由党ロン・マッキノン議員が法案を提出していた。

 ジェーン・フィルポット保健相は声明で、「国民の命を守るのが最優先」と語り、少量の薬物所持者でも自分が拘束されることを心配せずに過剰摂取者を救うことができると語った。

 BC州では違法薬物過剰摂取による死亡者が急増している。昨年は931人が死亡。特にフェンタニル関係の死亡者が増えている。先月、BC緊急ヘルスサービス(BCEHS)は、4月26日に薬物過剰摂取による緊急出動回数が130件となり、2016年11月20日の過去最高121件を上回ったと発表した。そのうちバンクーバーでは52件だった。

 

 

2017年5月11日 第19号

 記録的な豪雨と雪解け水のため、カナダ東部の各地で洪水が発生している。

 ケベック州ではモントリオール市と隣接するラバル市のほか、いくつかの自治体が7日に非常事態を宣言、被害を受けた人の救援・救助に全力で取り組む体制を取った。先週末の時点で150に近い自治体が何らかの形で洪水の被害を受けており、2500戸ほどの住居が浸水、1500人を超える住人が避難を余儀なくされた。

 またカナダ軍も先週に投入した400人に加え、7日には800人の増派を決定、被災地での救助活動にあたらせている。最終的に兵士の数は1650人ほどになる見通し。

 ケベック州環境省デビッド・エウテル大臣は、ここ55年間で最大規模の水位上昇だと語っている。また、同州公共安全省のマーティン・コワトー大臣は、水位は今週中にはピークを過ぎ、下がり始めるとの見通しを発表、被災地の住民には今しばらくの忍耐を呼び掛けていた。

 そんな中、7日夕方には冠水した道路で立ち往生していた車が水の勢いで流され、乗っていた家族3人と共にサンテ=アン川にのみ込まれた。車の屋根に避難していた家族のうち母親は自力で泳ぎ助かったものの、37歳の父親と2歳になる幼児が行方不明になり、警察がヘリコプターとダイバーを出動させ捜索に当たっている。

 ケベック州は8日、救済活動費用として50万ドルを赤十字社に寄付することを決定した。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。