2017年5月25日 第21号

 ジャスティン・トルドー首相は18日から2日間、ブリティッシュ・コロンビア州を訪問。1日目はアメリカ・ワシントン州シアトル市でジェイ・インスリー州知事と会談、さらに同市近郊でマイクロソフトCEO会議に出席した後、バンクーバーでアメリカ大手ゲームメーカー、エレクトロニクス・アーツ(EA)を訪れ、新しいバーチャルカメラを試したりした。夜は自由党の献金パーティーでスピーチを行った。

 2日目はサレー市で、自由党政権が導入した「カナダ子供手当」を周知するイベントに参加。その場で記者会見に臨んだトルドー首相は、BC州の最終選挙集計結果次第では、トランスマウンテン・パイプライン建設計画が反対される可能性について質問され、「国民は、環境保護と経済発展を同時にしなくてはいけないことは理解している。これに反対する人々は間違っている」と、間接的にBC新民主党(NDP)とグリーン党をけん制した。

 アルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相がBC州選挙結果を受け、BC州が同パイプライン計画に反対する可能性について、連邦政府の承認事項を州政府が覆すことはできないと発言したことについては、それが事実かの明言は避けた。

 午後は、サレー市のフィリピン系コミュニティを訪問、それから北米で最も歴史が古いとされるアボッツフォードのガー・シーク寺院を訪ねた。そこで1914年バンクーバーで起きたコマガタ丸事件について言及。「カナダは同じ過ちを犯してはならない」と語った。コマガタ丸事件とは、インド人376人が乗ったコマガタ丸がバンクーバー港に到着した時、カナダ政府が入港を拒否、インドへ引き返した乗客は殺害されたり投獄されたりした。トルドー首相は昨年、この事件について国会で謝罪している。

 今月はカナダ・アジア・ヘリテージ月間となっている。

 

 

2017年5月25日 第21号

 オンタリオ州トロント西隣のミシサガ市で20日夜、バンドメンバーの父親の誕生日パーティーで演奏していたロックバンドに、苦情処理に駆け付けた警察官が合流、ドラムの腕前を披露した。

 このロックバンドは、地元の10代の若者5人によるビニール・アンブッシュ(Vinyl Ambush)。ドラマーのジャック・ラングさんの母親が、父親の50歳のサプライズ・パーティーとして、この日の自宅での演奏を彼らに持ち掛けていた。

 彼らの演奏が始まって間もなく、近所からの騒音苦情を受けた警察官が到着。しかし彼らは音量を絞るように告げたものの、しばらく演奏を続けるように指示。

 さらにメンバーを驚かせたのは、何曲か演奏し終わった後に巡査の一人が、自分も演奏に加わっていいかと申し出てきたことだ。この巡査、ジョー・クラークさんも、かつてはバンドのドラマーだったと語っている。ここ5年間は演奏していないと言いながら、ドラムセットの前にブーツを脱いで座ったクラークさんは、メンバーとともに彼らのオリジナル曲「キュリオシティ(Curiosity)」を演奏しきった。

 もう一人の警察官は、この様子を携帯電話で動画に収めていた。その中でクラークさんは、この何年かの中で一番楽しい瞬間だと話していた。

 演奏後クラークさんは、自身のミュージシャンとしての経験から、彼らに継続することが大切だというアドバイスを伝え、あと2〜3曲演奏したら今夜は店じまいをするよう言い残して現場を立ち去った。

 

 

2017年5月25日 第21号

 ブリティッシュ・コロンビア州で22日から投票の再集計が始まった。BC州では今月9日に州議会議員選挙の投開票が行われたが、BC選挙管理委員会は2選挙区の再集計を決定。未集計の不在者投票17万6千票と合わせて22日から3日間で行うと投開票翌日に発表した。

 再集計されているのは、新民主党(NDP)候補がわずか9票差上回ったバンクーバー島のクートニー‐コモックス選挙区と、560票差で自由党候補だったバンクーバー‐フォールス・クリーク選挙区。結果次第では議席数に変化が出るため、全国の注目が集まっている。

 9日の投開票では、自由党が43議席、NDPが41議席、グリーン党3議席を獲得。87議席中44議席で多数派政権となるため、このままの結果では1953年以来の少数派政権が誕生することになる。そして議会でカギを握るのが、わずか3議席のグリーン党という構図が成立する。

 9日の選挙結果後、自由党クリスティ・クラーク党首、NDPジョン・ホーガン党首ともにグリーン党アンドリュー・ウィーバー党首と話し合いを持ち、自分の党が少しでも有利になるよう働きかけている。

 NDP・グリーンの連立もあり得るとの予測もあったが、ウィーバー党首は、連立を組むことは構想にないと記者会見で明言し、政策によって協力できる党を決めていくとしている。

 グリーン党の政策は自由党政策とは反対の立場が多く、もし仮にグリーン党がNDPの政策に賛成すれば、環境問題対策では州内だけでなく連邦、他州にも大きな影響を与える。

 特に、昨年、連邦政府が承認した、アルバータ州からBC州バーナビー市までのトランスマウンテン・パイプライン拡張計画は、グリーン党もNDPも反対の立場を取り、承認撤回を公約として掲げた。この政策で2党が組めば、同パイプライン計画の先行きが不透明になる。

 最終結果が発表されるのは24日。23日終了時点で、クートニー‐コモックス選挙区はNDPがリードしている。

 

 

2017年5月25日 第21号

 アルバータ州では保守党2党の合併が暫定的に合意に達した。進歩保守党ジェイソン・ケニー党首とワイルドローズ党ブライアン・ジーン党首は18日、エドモントンで記者会見を開き発表した。党名は統合保守党とし、今後はすり合わせを行っていく。

 アルバータ州は2015年の選挙で、政権与党だった進歩保守党が左派の新民主党(NDP)に大敗。それまで44年続いた進歩保守党政権が途切れた。

 その大敗の責任を取り進歩保守党ジム・プレンティス党首が辞任。党首選で選ばれたケニー元連邦国防相が党首に就任した。

 アルバータ州は連邦保守党の基盤となっている州で、2015年10月に自由党に敗れるまで10年間政権を担っていた保守党時代に閣僚だった議員も多い。ケニー党首もその一人で、プレンティス前党首もその一人。しかし、その知名度を生かしてまでも2015年州議会選挙で負けた影響は大きく、同州の保守党立て直しが2019年次期選挙に向けて急務となっていた。

 今回の2党の合併について、経済界、特に、天然資源産業界は歓迎している。ケニー党首は保守党が政権を取れば、現在NDPが促進している炭素税導入と石炭発電の廃止などを含めた環境政策を白紙に戻すと約束した。

 ケニー党首は、「まずは炭素税廃止法へ向け動き出し、アルバータ州の経済を立て直し、投資家の信頼を取り戻し、雇用を増やす」と、同日の記者会見で語った。天然資源産業が主力産業の同州は2014年の原油価格急落の影響で経済が落ち込み、歴史的な失業率となっている。

 2015年に保守党政権が大敗した要因は、保守党票が2党の保守党に分裂したことも一因とされている。合併することで保守党票を一つにまとめ、NDPから政権を奪回するのが狙い。

 今後は合併に向けての党内投票が両党で7月に行われる。ワイルドローズでは75パーセント以上、進歩保守党では50パーセント以上の賛成が必要。その後、党首選を行う。今年10月28日には新党首決定を予定している。両党党首とも出馬する意向を示している。

 ワイルドローズ党は2008年に進歩保守党に不満を持った議員が離党して創設。結局、約10年で再統合する。現在ワイルドローズ21議席、進歩保守党10議席、NDPが55議席を確保している。

 

 

2017年5月25日 第21号

 連邦政府キャサリン・マッケナ環境・気候変動相は17日、炭素税導入についての詳細を発表した。自由党政権は積極的に環境問題に取り組んでいくことを国内外に示し、昨年12月には州政府と連邦政府主導の全国的な炭素税導入で概ね合意していた。

 今回発表された内容には、連邦政府の炭素税導入詳細が示され、各州の導入計画がこの基準に満たない場合は、強制的に連邦政府が示した内容が導入される。

 導入は2018年から。初年は二酸化炭素排出量1トンにつき10ドル。毎年10ドルずつ引き上げられ、2022年に50ドルと設定している。ガソリン価格へは、2018年は1リットルにつき2・33セント、2022年には11・63セントが転嫁、家庭用天然ガス暖房費なら、平均的な一軒家で年間約260ドルが転嫁されることになる。

 マッケナ環境相は、この日の記者会見で、連邦政府が徴収した炭素税は「全て」州政府に還元されることを強調。炭素税を導入することで温室効果ガス削減を実現すること、クリーンエネルギー技術を促進することが重要と語った。

 「今回の計画は、全ての州にとって公平で、有益な計画となっている」と語った。

 企業への導入については、2019年1月2日以降と猶予期間を設定している。さらに年間排出量50キロトン以上を対象。天然資源産業が主要産業のカナダにとって企業にも配慮した内容となっている。

 現在、ブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州が炭素税を導入、オンタリオ州、ケベック州がキャップ&トレード制度導入を予定している。

 ほとんどの州が足並みをほぼ揃える中、サスカチワン州政府だけが強硬に反対している。この日、同州ブラッド・ウォール州首相は、改めて反対を強調。強制導入される場合は、連邦政府を訴えることも選択肢の一つと従来の主張を繰り返した。ただ、環境対策に反対しているわけでなく、回復基調にある州経済に影響する可能性のある炭素税導入には賛成できないと説明している。

 炭素税導入は今秋には国会で承認され、その時に導入開始日が決定される。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。