2017年5月11日 第19号

 ブリティッテュ・コロンビア州選挙まで残り1週間となった2日、自由党クリスティ・クラーク党首は、もし再選されたら、BC州を通って輸出される石炭に石炭税を導入すると語った。

 アメリカやカナダ他州で採掘された火力発電などに使用される燃料用石炭は、中国や日本などのアジア市場へ向けBC州の港から輸出されている。バンクーバーには最も大きな石炭輸出港のひとつデルタ市のウエストショア港がある。これらの港を使用する石炭輸出に1トンにつき70ドルを課すとしている。

 クラーク党首はジャスティン・トルドー首相に、BC州を通る石炭輸送禁止を求める書簡を4月下旬に送っている。今回の発表では、もしカナダ政府が輸送禁止措置を取らず、BC自由党が選挙に勝利した場合は石炭税を導入するとしている。

 今回のクラーク党首の強気の発言は、アメリカ政府がカナダからの木材・製材に対して最大24パーセント課税するという政策への報復措置をアピールする狙いがある。BC州はカナダ最大の木材・製材輸出州。米加は現在、木材・製材貿易について新協定締結を模索している段階だが、アメリカ側はカナダから輸入される木材・製材が政府用地から仕入れるため、アメリカの製品よりも価格が安くなるのは不公平として、カナダからの輸入品に対して課税すると発表した。そうなればBC州への影響は大きい。BC自由党は、選挙戦で新民主党(NDP)との接戦が予測され、経済・雇用を最優先と掲げる自由党にとって、木材・製材産業と共に戦うという姿勢を示す狙いがある。

 石炭輸出でBC州の港を使うのは94パーセントがアメリカだが、クラーク党首はアメリカ以外にもアルバータ州なども同様に課税対象にすると言及している。

 これに対しアルバータ州レイチェル・ノッテリー州首相は、州政府に石炭税導入の権限があるとは思えないと反論。アルバータ州にも打撃を与えるが、BC州にも影響があるのではと語っている。

 トルドー首相は、BC州の提案について考慮するとの姿勢を示している。こうした米加の動きに貿易戦争が勃発するのではとの懸念も聞こえている。米ドナルド・トランプ政権は、カナダの養鶏業もすでに攻撃対象とし、北米自由貿易協定(NAFTA)についても改正する必要があると語っている。

 しかしショーン・スパイサー米大統領報道官は8日、ホワイトハウスでの定例記者会見で、米加貿易戦争の可能性について聞かれると「それはない」と否定。貿易協定改善の手順だと語った。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。