2017年5月18日 第20号

 マニトバ州からサスカチワン州、アルバータ州を横切り、ブリティッシュ・コロンビア州中部沿岸に達する高速道路、イエローヘッド・ハイウェイ。その名前は、19世紀に活躍した毛皮貿易商ピエール・ボストネスに由来している。彼は特徴的なブロンドヘアから、イエローヘッドのあだ名を持っていた。そして、この高速道路沿いには、イエローヘッド・ハイウェイであることを示す標識ー2本の緑色の針葉樹をバックにした、黄色い横顔ーが立てられている。

 マニトバ州ウィニペグのシンガーソングライター、スコット・ノーランさんは、ツアー移動中に、この標識の横顔ー特に前髪の格好ーが、ドナルド・トランプ米大統領にそっくりなことに気が付いた。彼は助手席の友人に、米大統領は自分の横顔をカナダ中の高速道路にまで掲げるよう要求していたんだと、冗談を飛ばした。

 さらにノーランさんは、このネタを行く先々のコンサート会場で披露。すると、今度はファンのほうからノーランさんに、「あの横顔が頭の中に残ってしまった」などと、このネタに対するメッセージが次々と寄せられるようになった。

 イエローヘッドの横顔も、米大統領の髪形も、どちらも以前から存在しており、今までは誰も気にしていなかった。しかし二つのイメージの間の関係性が指摘されると、意味がなくても脳が自動的にそれを認識してしまう。これは「パレイドリア」という錯覚の一種だと、トロント大学で神経科学を研究するカン・リー教授は説明する。

 奇妙な関係性ではあれ、この高速道路の知名度アップにつながることは、うれしいと話すのは、カナダ横断イエローヘッド・ハイウェイ協会のジョン・ウボチスキーさん。彼の場合は、横顔のもととなったピエール・ボストネスのイメージが定着しているため、米大統領には見えないと言い、単なる偶然だと笑っていた。

 

 

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