2019年1月1日 第1号

 ジャスティン・トルドー首相が2019年に実施される連邦総選挙の日程を変更しないことを明言したと12月16日メディアが報じた。国会が閉幕したことを受け主要メディアとのインタビューで明らかにした。

 連邦総選挙は前回選挙日から4年後の10月第3月曜日に実施されることが現行の選挙法で決まっている。

 しかし選挙日を変更する方法もある。首相がカナダ総督に議会の解散を申し出て、総督が議会を解散し選挙日変更が可能となっている。

 前回総選挙は2015年10月。現行の選挙法に則れば2019年10月が選挙年となる。しかし自由党政権の現状を踏まえ、選挙が前倒しされるのではとの憶測が飛んでいた。今回トルドー首相が明言したことで前倒しの可能性はなくなった。

 自由党は2015年トルドー党首で臨んだ初の総選挙で大勝。それまでの保守党政権から約10年ぶりに政権を奪回した。

 政権交代当時はトルドー首相人気と保守党政権からの脱却ということもあり、自由党政権は高い支持率を誇っていた。しかし最近は経済、外交、環境などでの政策で厳しい状況に立たされている。

 経済政策では、アメリカでトランプ政権が誕生し、新北米自由貿易協定や鉄鋼・アルミニウムへの関税、ゼネラルモーターズの工場閉鎖など、アメリカとの経済関係が厳しい状況となっている。

 環境政策は国内の州政府との関係が悪化する要因のひとつとなっている。特にアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市までのオイルサンドを運ぶトランスマウンテン・パイプライン拡張工事については、2016年秋に連邦自由党政権が承認したが、BC州では環境活動家や関係する先住民族だけでなく、バーナビー市、バンクーバー市が強く反対。さらに2018年にBC州新民主党(NDP)政権が環境対策を理由にパイプライン建設のBC州の承認を見直すことになり、BC州政府と連邦・アルバータ州政府の対立が激化し、BC州特にメトロバンクーバーで連邦自由党政権への支持が不安定になった。

 さらに環境問題では、2016年以降に各州で誕生した保守党系政権が、連邦自由党政権が2019年1月から導入を予定している炭素税への反対を明確に打ち出し、強行する連邦政府との間で軋轢が生まれている。特にオンタリオ州が進歩保守党新政権の誕生で、それまでの自由党政権時代の環境対策から一変して炭素税廃止を打ち出し、当初から強固に炭素税に反対していたサスカチワン州に同調し、反対派が一気に勢いを増している。

 2019年の総選挙では保守党との激しい戦いが繰り広げられることが予想されている。

 CTVのインタビューに答えたトルドー首相は、保守党を強く意識し、何度も保守党前政権スティーブン・ハーパー前首相の名前を挙げたと伝えている。一方、野党第2党NDPについては一度も言及することはなかったとしている。

 連邦総選挙は2019年10月21日に実施される予定となっている。

 

2019年1月1日 第1号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の自動車保険を一手に引き受けている州営会社ICBCが2019年の自動車保険料値上げを申請していることが12月14日に分かった。申請された引き上げ率は6・3パーセント。平均的な引き上げ額は年間約60ドルとなる。承認されれば2019年4月から実施される。

 ICBCについては2017年政権を奪回したBC州新民主党(NDP)が改革に乗り出している。今回の引き上げ申請を受け、NDP政権デイビッド・イービー司法長官は14日、自由党前政権時代が残したICBC財政危機のツケだと自由党を非難した。

 NDP政権が打ち出しているICBC改革案には、繰り返し事故を起こす悪質ドライバーへの罰金額の引き上げ、独立した事故処理調整制度の導入、軽傷者への保険料支払い額5500ドル上限などが盛り込まれている。

 イービー長官はICBCが財政的に厳しい状況となった背景には個人が事故後に申告する保険料の費用が膨れ上がったためと説明。2018年は事故で負傷したとして申告された保険料は36億7千万ドルになる予定と試算している。

 イービー長官が11月に発表した報告によるとICBCは2018年は8億9千万ドルの赤字となると試算している。

 

2019年1月1日 第1号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で予定されているナナイモ選挙区の補欠選挙は、各党候補者が12月16日に出揃った。

 BC新民主党(NDP)は連邦ナナイモ‐レディスミス選挙区のNDPシーラ・マルコルムソン議員擁立を決定、議席保持に全力を挙げる。

 ナナイモ選挙区はこれまで長年NDPが議席を保有してきた。前任者はNDPレオナルド・クロッグ前議員。クロッグ前議員は、2018年10月に実施されたBC州地方選挙でナナイモ市長選に立候補し、当選したためBC州議員を辞職、空席となっていた。

 従来ならそれほど大きく注目される選挙区ではないが、今回はBC政治の事情があり、かなり注目を集めている。

 BC州は現在NDPが政権を担当。しかし議席数は野党自由党より1議席少ない。それでもグリーン党3議席との協力関係で44議席とし政権を維持している。

 もし仮に自由党が議席を取れば、NDP・グリーン43議席、自由党43議席と議席数で並ぶ。そうなれば政権が不安定となり4年を待たずに選挙となるのではと予想されている。

 そのため、今回の補欠選挙に自由党がかなり力をいれてくるのではとNDPは警戒している。自由党はナナイモでよく知られるビジネスマンのトニー・ハリス氏を擁立。11月初旬に早々と決定し選挙戦に臨む態勢に入っている。

 一方で、NDP政権と協力体制にあるグリーン党も候補を擁立して選挙戦を戦うことを決定した。擁立したのは教師のミッシェル・ネイ氏。本人は政治家としては知られていないが、父は今回ナナイモ市長に当選した前NDP議員のクロッグ市長。そういう意味ではネイ氏もナナイモ市ではよく知られた人物。3つ巴の戦いとなる様相にネイ氏は、ライバル2人はナナイモ市でよく知られた人たちで厳しい戦いになるが、環境問題や気候変動対策の声を議会に届けたいと意欲を示した。

 また、NDPとグリーン党で票が割れる可能性については「心配していない」と語った。グリーン党アンドリュー・ウィーバー党首は、NDPとの協力体制は今後も続けていくが、州民の中にはNDPのサイトCダム政策や液化天然ガス(LNG)推進方針に懸念を示しているとNDPとの政策の違いを強調し、ナナイモでの選挙でこれらを訴えていくと語った。

 BC州バンクーバー島の小さな町がこれほど注目されるのは、仮に自由党が議席を獲得し州選挙を早めに実施することになれば、自由党が再び政権を取る可能性があり、そうなれば、トランスマウンテン・パイプライン政策や経済政策などで連邦政府にも影響を及ぼす可能性があるためだ。

 BC州政府ジョン・ホーガン州首相は補欠選挙の実施日はまだ正式に公表していないが、2月に発表する予算案の前には決めたいとの意向を示している。

 

2019年1月1日 第1号

 世界通販最大手アマゾンがアルバータ州に巨大ウェアハウスを建設することが12月16日分かった。広さは100万平方フィートで、同州エドモントン市近郊に建設する。

 オープンは2020年の予定で、約600人の雇用が見込まれるという。また建設時には約700人の雇用となると発表している。

 同州レイチェル・ノッテリー州首相は州政府の誘致努力が実った結果とスタッフの努力を労い、アマゾンの進出を歓迎した。

 同州ではカルガリー市近郊にある同様のウェアハウスが2018年夏オープンしたのに続いて2件目となる。

 アマゾンはこれまでに、オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州にもフルフィルメントセンターを建設するなど、カナダへの進出を積極的に行っている。

 

2019年1月1日 第1号

 頭蓋骨内側に異常な量の水(脳脊髄液)がたまる、水頭症を患っていたケベック州の2歳児の手術が、無事成功した。

 家族の希望により2歳児の名前は明らかにされていないが、北米内で生まれ2017年ケベック州に移り住んできた。同州モントリオール市サン・ジュスティーン病院で診断を受けた時には、頭部に約3リットルの脳脊髄液がたまっていた。これは通常の大人の20倍の量になるという。この液のため脳は圧縮され正常な発育ができず、同年代の子供の脳の2割程度の大きさしかなかった。一方その圧力により頭蓋骨は異常に膨張、頭のサイズはバスケットボールほどの大きさである、頭囲71センチとなっていた。

 北米では通常、より早い段階で治療が始められるため、これほど進行した例はあまりないという。同病院の小児神経外科医アレクサンダー・ベイルさんは、この先少女が少しでも正常な成長に近づけるよう『思い切った手術』を行うことにした。整形外科医のダニエル・ボルサクさんや米ミシガン州の研究所とチームを組み、たまった脳脊髄液を排出するとともに、大きくなりすぎた頭蓋骨を小さなピースに切り分け、その中のいくつかを再び組み合わせ、適切な大きさの頭蓋骨─手術前の約4割の大きさ─を作り上げるというものだ。

 実際の手術前には、3Dプリンターによるモックアップが作成され、どのように頭蓋骨を再構築するかの手順が確認された。ベイルさんによると、きれいな形にまで再生することは不可能だが、できるだけ普通に近い生活を送れるようにすることが最大の目的だと、取材に語っていた。

 手術は2018年11月5日午前11時5分から開始された。慎重に頭皮がはがされたのち、3Dプリンターで作成された、ヘルメット状の頭蓋骨切り分けガイドを頭蓋骨にあてがい、切り分け線がマジックで引かれていった。

 数時間後に、ようやく頭蓋骨上半分が取り去られ、次の処置─脳内にたまった液を排出する作業─が始まった。急激な排出は内部の圧力に急激な変化を及ぼし、不必要なリスクを増すことから、1時間あたり500ccのペースで排出が続けられた。

 そして切り分けた頭蓋骨を組み合わせ、新しい頭蓋骨が構築された。そのためには、約1年で溶解する210本のネジが用いられた。手術が完了したのは、12時間後だった。

 2週間後にMRIで検査が行われたが、すでに脳の大きさは2倍になっていたという。今後、この子の神経ネットワークが次第に再構築されていき、最終的に同年代の子供と同じように遊べるようになることを、手術チームは願っている。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。