2019年8月29日 第35号

 総選挙まで2カ月を切った26日、各党が選挙スローガンを発表した。それぞれに違いを見せているが、対象とする有権者は同じ。中間所得層だ。

 自由党は、これまでの4年間の政権運営を踏まえて「さらに前へ踏み出すために」と有権者に自由党を選ぶよう呼びかけている。選挙用広告ビデオでは、ジャスティン・トルドー首相がバスに乗って中間所得層と見られる人々と一緒に笑顔で会話。「富裕層に減税し、それ以外の国民には負担を強いる保守党政策」とライバル保守党を批判し、最後には「10月には国民が選択する時が来る。ここまで自由党が前進させてきた政策をさらに前に推し進めるのか、それともハーパー政権時代へ逆戻りするのか。私なら全ての国民のために前進できる」と語りかけている。

 一方で保守党のプロモーションビデオは、アンドリュー・シェア党首が1人で国民に語りかける構成。シェア党首以外ビデオには誰も登場しない。内容に与党批判はなく保守党の政策を淡々と語っていく。「生活コストを削減し、国民の懐が温かくなる政策を」と訴える。現在はカナダ中の国民がストレスをためている、規則を守って一生懸命働いてもどんどん置いていかれるような気持になっているだろうと語りかけ、保守党ならそれを解決できると主張している。

 両党とも大企業や富裕層を優遇するこれまでの姿勢が批判を浴び、「我々は庶民の味方」を強調して無党派層に訴えかけたいという意図がある。

 グリーン党もほぼ同じような感じで、右でもなく、左でもなく、前進あるのみというスローガンを掲げている。カナダ国民党は「強く、そして自由に」と強いカナダを強調している。新民主党のみが9月の連休明けにスローガンを発表するとして、夏休みも終わりに近づき、いよいよ選挙モード一色に突入する体制に入っている。

 総選挙は10月21日に実施される。

 

2019年8月29日 第35号

 キャサリン・マッケナ環境・気候変動相は26日、カナダ政府として炭素税の上限を引き上げる予定は今のところないとの見解を改めて示した。

 これは全国紙グローバル&メールが25日付で掲載したマッケナ環境相へのインタビュー記事の中で、炭素税の上限としている1トンに付き50ドルから引き上げる場合は、州政府、準州政府の意向を確認してからになると発言したことに対する説明だった。全国的な炭素税を2019年に1トンに付き20ドルから導入した自由党政権は、毎年10ドル引き上げ50ドルを上限とするとしていた。2022年に上限に達する。そして今年6月にはこれ以上の引き上げは予定していないとマッケナ環境相自身が明言していた。

 しかしグローバルに掲載された記事で、それ以上の可能性があることを示唆したため、25日に保守党ピエール・ポリヴァー議員が、自由党は今年の選挙で政権継続を実現した後に引き上げを目論んでいると批判。選挙前には得票のために税金をばら撒き、選挙が終わった途端に国民から税を絞り取る計画だと激しく非難した。

 これに対しマッケナ環境相は、「ピエール・ポリヴァーはダグ・フォード(オンタリオ州首相)やアンドリュー・シェア(連邦保守党党首)と一緒で、我々が気候変動に対して行動を起こさなければならないということを理解していない」と反撃した。

 環境問題は10月の総選挙の争点の一つで、国民の関心も高い。特にミレニアといわれる20代から30代半ばまでの若者にとって環境問題への取り組みは投票を左右する争点とみられている。そのミレニアの大きな支持を得て自由党は2015年に大勝したという経緯がある。

 さらに、総選挙の激戦州とされるケベック州では環境問題への関心がどこよりも高い。2015年の選挙まで環境問題への取り組みに躊躇していた保守党でさえ、ここ最近のグリーン党への支持率の上昇などを目の当たりにして、環境問題に真剣に取り組む姿勢を見せている。

 ポリヴァー議員は、保守党は企業に対して持続可能な基準を順守させ、グリーンテクノロジーへの投資を奨励することで環境への取り組みに参加するよう促していくと語っている。ただ保守党は政権を取れば炭素税を廃止すると約束している。

 

2019年8月29日 第35号

 ケベック州では公的機関で働く職員に宗教的シンボルの着用を禁止する条例が今年議会で可決された。一般に世俗主義法といわれる条例で、公立学校教師、警察官、政府弁護士、裁判官などに、イスラム教のヒジャブやシーク教のターバン、ユダヤ教のキッパ、キリスト教の十字架などを身に着けて職務に当たることを禁止している。ただし条例が施行される前にその職に就いていた場合は対象外となる。

 教師を目指して大学を卒業したばかりのアムリット・カーさんは、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で教師の職を得てケベック州から移住してきたとCBCのインタビューに答えている。カーさんはシーク教信者で女性だがターバンを巻いている。これはカーさんにとって男性と平等であるというシンボルであり、自身のアイデンティティと語っている。しかしカーさんのような信者は、ケベック州では教師をあきらめるか、ターバンを外すかの二者択一を迫られる。そこで出身地のケベック州を離れてターバンを身に着けたまま教師ができるBC州を選んだと語っている。

 この世俗主義法は保守派CAQ政権の選挙公約でもあり、自由党政権時代からケベック州で導入が試みられてきた。しかしケベック州以外からは差別的条例として批判の声が上がっている。

 BC州では教師不足もあって、この法案が可決された直後からケベック州からの教師を歓迎すると呼び掛けていた。

 カーさんは今年9月から、サレー市の学校で教師として第1歩を踏み出すと語っている。

 

2019年8月29日 第35号

 カナダ国内で熊の密猟が後を絶たないと訴えるのは、カナダ環境・気候変動省の自然保護管理官シェルダン・ジョーダンさん。サスカチワン州を担当しているジョーダンさんは、カナダで密猟された熊の部位は闇市場に流れて取り引きされているとCBCのインタビューで答えている。

 熊の密輸が今になって注目を浴びたのは、今月21日にサスカチワン州でリエンファ・チー容疑者(55)が熊の部位を闇市場へと流していたとして起訴されたためだ。今年11月には裁判が行われる。

 熊の部位、特に胆のう、手のひら、陰茎骨は人気があり、闇市場で高値で売れるという。チー容疑者は2016年12月から2017年8月までの期間に野生動物を違法取引したとして、2000ドルから10万ドルの罰金もしくは2年以下の実刑を受ける可能性があるという。

 カナダでも北米に広く生息するブラックベア(アメリカクロクマ)の密猟が後を絶たないとジョーダンさんは語る。

 熊の部位は薬としての価値が高いアジア市場で特に人気が高いが、世界中で闇取引されているという。

 密猟を防ぐには監視を強化する必要があり、市民の協力が必要で、ジョーダンさんはもし密猟しているのを見つけたら通報してほしいと語っている。

 

2019年8月29日 第35号

 ノバスコシア州出身の民族芸術画家として知られるモード・ルイス氏の猫と蝶を描いた作品が13000ドルで購入されたと、26日に売却したギャラリーのオーナーが語った。

 購入したのは同州に住む愛好家で、売りに出して24時間で購入されたという。作品自体に名前はなく、白い猫の頭上に3匹の蝶が描かれた作品だった。

 この描かれた白い猫の表情が、「グランピーキャット」として有名になったアメリカ大リーグを観戦する不機嫌そうな猫の表情にそっくりだという。ギャラリーのオーナーは、もう少し売れるのに時間がかかればギャラリーでもっといろいろな人に見てもらえたのだがと少し残念そうに語っている。

 ルイス氏はノバスコシア州生まれで、1970年に亡くなるまで夫とともに小さな家に住み植物や野生生物の絵を描いて暮らしていた。描く対象は素朴ながら独特の画風でファンも多い。彼女の人生は2017年に映画にもなっている。そのためカナダ国内だけではなく、海外にも彼女の作品が知られることになった。

 

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