2018年1月25日 第4号

 ブリティッシュ・コロンビア州南部で発見された洞窟が、何回かの調査を経てカナダ最深のものであることがわかった。

 洞窟は同州内陸部の町ファーニーの北にあり、アルバータ州カルガリーのアマチュア洞窟探検組織アルバータ洞窟学協会が調査を行っていた。メンバーのひとり、ジェレミー・ブランズさんがこの洞窟の入り口を偶然発見したのは、5年ほど前のことだった。ほんの地面の裂け目にしか見えなかった入り口の奥に、これほど深遠な洞窟ができていたとは思いもよらなかったとブランズさん。

 それまでの調査では洞窟が深すぎ、用意していたロープなどの装備では地底に到達することができなかった。昨年10月に、ようやく洞窟の最深部に到達。そこから伸びる水平方向の洞窟をたどって行き着いたのは、地底湖だった。

 そこで今年初めに行われた調査では、スキューバダイビングの装備も運び込み、湖底の探検も計画していた。しかし全長5・3キロメートル、深さ670メートルの洞窟の内部は複雑で、最長の垂直トンネルは105メートル、約35階建てのビルの高さであったり、極端に狭くなっている箇所、表面が脆くなっている箇所などがあり、装備の搬送は困難を極めた。

 結局装備の損傷などでスキューバによる調査は断念せざるを得なく、調査隊は洞窟の詳細な記録を残すことに専念した。洞窟の要所要所に測量点を設け、洞窟の距離、方位、傾斜角などを測っていった。

 調査は一週間続けられたが、その長さのため洞窟内で寝泊まりしながら行われた。地底ゆえ暗く気温は2度、湿度100パーセント。「冷蔵庫の中で暮らしていたようなもの」と語るのは、メンバーの一人キャサリーン・グレアムさん。地面が平坦ではないため、ハンモックを張ってその上で寝た。またヘッドランプを首にかけておき、真夜中にふと目が覚めた時にパニックにならないよう備えていたとグレアムさん。

 洞窟調査についてブランズさんは、誰も見たこともない場所に初めて入り地図を作り、新たな発見を持ち帰り仲間らと分かち合うことに最大の喜びを感じると、取材に語っている。

 

 

2018年1月18日 第3号

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市で16日、北朝鮮の核兵器開発についての対応を検討する外相会議が開催された。

 カナダ・アメリカの共同開催となったこの会議に参加したのは、韓国と国連側として朝鮮戦争に関与した国々、そして日本の20カ国。全会一致で北朝鮮が核兵器開発を断念するよう、より強固な制裁措置を取ることで合意したと発表した。

 アメリカのレックス・ティラーソン国務長官と共同記者会見したカナダのクリスティア・フリーランド外務相は、「我々は現在のような脅威が継続され、さらに悪化していくことを黙って見ているわけにはいかない」と語り、制裁措置が確実に実施されるよう各国が協力しなければならないと続けた。

 ティラーソン国務長官は北朝鮮に対して交渉に応じなければアメリカの軍事行動もあり得ると警告し、「アメリカは北朝鮮の核兵器保有を絶対に許すわけにはいかない。北朝鮮にとっては今が交渉に応じるいい機会だ」と交渉を促した。

 今回の会議の共同開催について、カナダ国内では北朝鮮問題でのカナダの役割についても注目されている。これまでのところカナダ政府は、この日350万ドルをアメリカ国務省のプログラムに提供すると発表してアメリカと足並みを揃えることを強調した以外には積極的にこの問題の解決について行動する姿勢はみせていない。野党新民主党ヘレン・ラバーディア議員は、こんな時こそトルドー政権は軍事力ではなく外交での解決を強調すべきだと語っている。

 また今回の会議については、その意義についても疑問視する声が上がっている。制裁措置強化で全会一致した参加国だが、協力が最も必要となる中国とロシアは招待されていない。両国はこの会議の無意味さを強調したが、ロイターが伝えるところによると、アメリカの東アジア上級外交官スーザン・ソートン氏がバンクーバーから北京を訪問し会議の内容を伝えるほか、ティラーソン国務長官が中国とロシアに伝える予定になっている、とアメリカの関係者の談話を紹介している。

 

 

2018年1月18日 第3号

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市のグレゴール・ロバートソン市長が次期選挙に立候補しない意向を明らかにした。自身のフェイスブックで不出馬を表明後、10日には記者会見を開き「人生で最も難しい決断だった」と記者団に語った。

 理由については「個人的なもの」として詳細は語らなかったが、今後は、市だけではなく、州、連邦議会でも立候補するつもりがなく、政界から引退する意向を明らかにした。

 ロバートソン市長は2008年に当時現職のサム・サリバン市長(現BC州議会自由党議員)に勝利し初当選。それまではBC州バンクーバー-フェアビュー選挙区の新民主党(NDP)議員だったが、市長に転身した。その後、2011年、2014年に再選。昨年10月までは4期目を目指して出馬する意向を示していた。

 ロバートソン市長と言えば、バンクーバー市を2020年までに世界一グリーンな都市にすることを目指す環境問題都市計画を積極的に推し進めたことで知られている。バラードブリッジを含む町中に張り巡らせた自転車レーンの設置はその一例で、その他、建物の環境基準の強化などに取り組んできた。

 一方で、市長として改善を公約した住宅問題と公共交通機関については、遅々として進まなかった。特に住宅問題では、2015年までに市からホームレスをなくすと目標に掲げていたが、現実的にはロバートソン市政10年で増加している。住宅価格も高騰し続け、現在は市のほとんどの住宅が100万ドル以上と一般市民にとって手が届かない価格にまで高騰している。

 これについて市長は、努力はしたが目標を達成できなくて残念だと道半ばを強調した。最近になって空室の住宅やホームシェアのエアB&Bに課税するなどの措置を取ったが、市民の中には、市長や市長派のビジョン・バンクーバー党が不動産開発業者とのつながりが強いことを批判している人も多い。

 昨秋行われたバンクーバー市議補欠選挙では、ビジョン候補が5位と惨敗。今年10月20日に実施される市長・市議選でもビジョンの苦戦が予想されている。

 

 

2018年1月18日 第3号

 カナダ銀行が昨年、金利を2回引き上げた影響が徐々に国民の家計を苦しくしている実態が浮き彫りになった。

 調査会社イプソスが昨年12月に実施したオンラインによる調査結果を今月16日に発表。それによると回答した約2千人のうち約半数が、各種料金を支払った後の毎月末に200ドルもしくはそれ以下しか使えるお金が残らないと回答したことが分かった。これは昨年9月に実施された前回調査から8ポイントも増加した結果となった。

 カナダ銀行の金利引き上げは各銀行の金利引き上げに直結する。そのため、住宅ローンやその他の負債を抱える世帯では負担が大きくなる。

 カナダは先進7カ国(G7)で国民の世帯当たりの返済負担率が最も高く、昨年12月に発表された第3四半期の返済負担率は171・1パーセント。カナダ銀行スティーブン・ポロス総裁は、これまで何度も国民に警鐘を鳴らしてきた。

 しかし記録的に低い金利が長い期間続いたため、国民の意識が金利上昇に伴う負担増に追いつかない状況になっていると専門家は分析している。 昨年に引き上げられた影響は徐々に表れ始め、国民もようやく危機感を募らせている状況が今回の調査で明らかになった。

 調査結果では、支払いを済ませた後の月末に手元に残る自由に使えるお金が平均で631ドルある家計が前回調査より15パーセント減少。さらに、12カ月後には借金をしなくては月々の支払いができなくなるだろうと答えた世帯が約半数に上った。40パーセントが借金の額に後悔しているとも回答している。

 カナダ銀行は17日、今年最初の報告書で大方の予想通り金利を引き上げた。今後ますます国民の苦しい家計状況に拍車がかかる可能性が高くなっている。

 

 

2018年1月18日 第3号

 メトロバンクーバーの交通量の規制とインフラ整備の収入増を目的に道路使用料の徴収をモビリティ料金独立委員会が検討していることが16日、分かった。

 同委員会は、メトロバンクーバーの公共交通機関と道路や橋などの交通網を管轄するトランスリンク社と、同地域の市長からなる市長委員会に、検討した事案を提供する。

 独立委員会の提案では、徴収方法として、一つはダウンタウンのような特定の地区に入る時やトンネルや橋を利用する時に料金を徴収する方法と、もう一つは運転距離や運転している時間帯によって徴収する方法が検討されているという。

 一つ目の方法は、ヨーロッパの都市などですでに導入されているが、二つ目の方法は例がないという。しかも問題も多い。

 第一に距離をどのようにして測るのか、個人の移動記録を市が管理するのかなど、プライバシーの問題にもかかわる部分がある。さらに、高騰する住宅事情で都市部に住宅を持てない通勤者の負担が大きくなるのは公平性に欠けるのではないか、といった議論も出ているという。

 今回発表されたものは草案であり、今後市民集会などを開き一般からの意見を聞くほか、関係者や専門家との会合も予定している。来月には独立委員会のウェブサイトからもオンラインで意見を投稿することができる。

 最終的な提案は今年4月に決定する。ただ、この提案を受け入れるかは市長や市に委ねられている。ブリティッシュ・コロンビア州では今年は10月に市長、市議選挙が予定されている。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。