2018年8月16日 第33号

 連邦新民主党(NDP)ジャグミード・シング党首が8日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市のバーナビー・サウス選挙区で実施される補欠選挙に立候補すると発表した。

 シング党首はバーナビー市で支援者を前に演説し、バーナビー市が抱える問題は、カナダ全体で共有できる問題。NDPはそれらの問題に真摯に取り組む用意があると語った。

 バーナビー市が抱える問題として、高騰する住宅問題、ヘルスケア、所得格差、環境問題を挙げた。特にバーナビー市は、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事を推進する連邦政府と対立している。シング党首は、トランスマウンテン・パイプラインはよくオイル漏れ事故を起こす古いパイプラインで、これに頼らずクリーンエネルギーへの移行を促進しなければならないと語った。

 NDPは環境対策を党の重要政策の一つに挙げている。ただこれまでは、問題となっているパイプラインが通っているアルバータ州とBC州の両州でNDPが政権を担っているにもかかわらず、アルバータ州はパイプライン推進、BC州は反対と両極端の立場を取っているため、シング党首はこのパイプライン問題に対して明確な立場を示してこなかった。

 しかし、今回バーナビーから補欠選挙に立候補することを決めたシング党首は、パイプライン反対を明確に示した形となった。

 シング党首は、オンタリオ州出身で党首に就任するまでは、オンタリオ州議会議員だった。党首に就任後も、自身が連邦議会に議席を持たないまま党首を務めることに「問題はない」としていたが、党首に就任してすでに10カ月が過ぎ、来年の連邦選挙を見据えて、国会で存在感を示す必要があるなどの意見があったため、補欠選挙に出馬することになった。

 そこで、当選する確率が高い選挙区としてバーナビー・サウスに白羽の矢が刺さった。補欠選挙はバーナビーの他にも、ケベック州モントリオールのアウトレモント選挙区で実施される予定になっている。

 ここはトーマス・マルケア元NDP党首の選挙区で、党首交代で議員を辞職したため、空席になっている。現在ケベック州での支持率が低いNDPにとって同選挙区を確保することは最優先事項だが、シング党首がインド系カナダ人のシーク教信者であり、カラフルなターバンを巻き、長いひげをたくわえた異色の党首であることから、モントリオールよりもバーナビーの方が受け入れられやすいとの判断が働いたとみられている。バーナビー市の人口分布でもアジア系を含めた少数派民族が多い。

 シング党首は、これまで全くバーナビー市と縁がなかった落下傘候補者として、有権者に受け入れられるかとの記者からの質問に、バーナビー市の抱える問題は全国が抱える問題に共通すると繰り返し、当選したらバーナビーに引っ越すのかとの問いには、「当然」と答えた。

 バーナビー・サウス選挙区は2015年に設置された選挙区だが、バーナビー市南部の選挙区は、これまでNDPが5期連続で当選してきた。現在は、ストゥワート・ケネディ議員が2期連続で当選しているが、今年10月に実施されるバンクーバー市長選に立候補することを表明し、今年の9月15日で議員を辞職することを明言しているため、空席となることが決まっている。

 ただ補欠選挙が行われるかどうかは、ジャスティン・トルドー首相の判断にかかっている。

 

 

2018年8月16日 第33号

 ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市議会は9日、同市役所前に設置されているカナダ初代首相ジョン・マクドナルド元首相の銅像を撤去することを決定、11日に撤去した。

 撤去の理由は、初代首相がカナダ先住民族に対するレジデンシャル・スクール制度を実質的に指揮した人物で、現在カナダ自由党政権が進める先住民族との「和解」政策に逆行するとして市議会で決定した。

 しかし、カナダを建国した英雄として称えられている一面もあり、初代首相の撤去には賛否両論が沸き起こった。

 11日の撤去作業中には、撤去反対派と賛成派が市役所前に集まり、それぞれの主張を繰り広げた。撤去作業は厳重な警備の中で行われた。

 撤去反対派は、銅像を撤去したからといって初代首相の先住民族に対する政策の歴史まで掻き消せるわけではないと主張。一方、賛成派は、「和解」政策が進められる中、銅像を見るたびに嫌な思いをする国民がいることは市役所前の銅像としてはふさわしくないと理由を語っている。

 ビクトリア市リサ・ヘルプス市長は、今回の決定は1年間の話し合いを重ねたうえでの市議会の決定であり、撤去することで賛否両論が巻き起こることは覚悟していると語った。

 撤去した後には、銅像跡の説明をしたプレートが設置された。しかし、12日には、そのプレートに傷がつけられていることが発見された。市はすぐに修復したと発表した。

 また14日になって、オンタリオ州進歩保守党(PC)政権シルビア・ジョーンズ旅行相から、撤去した初代首相像を引き受けたいという申し出があったことが明らかになった。この日のオンタリオ議会でジョーンズ大臣は、ビクトリア市の決定を非難、オンタリオ州が喜んで引き受けると語った。

 ビクトリア市長は、銅像は市に寄贈されたものであり、ビクトリア市で大切に保管すると語り、オンタリオ州の申し出を断ったことを明らかにした。

 

 

2018年8月16日 第33号

 イギリスの雑誌「エコノミスト」のエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが毎年、発表している世界で最も住みやすい都市ランキングに、今年もカナダから3都市がトップ10入りした。

 13日に発表されたランキングでは、アルバータ州カルガリーが世界4位でカナダの都市の中ではトップとなった。次いで、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーが6位、オンタリオ州トロントは7位に入った。

 毎年発表されているランキングで調査対象となる項目は、犯罪発生率などの社会的安定性、保健制度、気候から飲食まで含まれる地域文化と環境、教育、交通機関から電気・通信網までを含めたインフラ整備の大きく5つ。さらに細かく30の項目に分けて調査される。対象となるのは世界140都市。

 しかし、この中に住宅価格や物価、給与など生活環境を大きく左右する項目は含まれていない。そのため、住宅価格が高騰し続けるバンクーバーやトロントでは世界で住みやすい都市トップ10に選ばれてもあまり意味がないとの声も聞こえている。

 2018年世界一住みやすい都市に選ばれたのは、オーストリアのウィーン。7年連続1位だったオーストラリアのメルボルンを抜いてトップに立った。3位は大阪。5位はオーストラリアのシドニー。8位に東京がランクイン、9位デンマークのコペンハーゲン、10位にはオーストラリアでは3都市目のアデレードが入った。

 

 

2018年8月16日 第33号

 カナダ統計局が10日に発表した7月の失業率が5・8パーセントに改善したことが分かった。前月の6パーセントから0・2パーセント下がった。

 7月の就業者数は54000人、パートタイムが82000人増加したのに対し、フルタイムは28000人減少した。

 公共機関への就業は49600人、一方、民間企業では5200人に留まった。

 地域別ではブリティッシュ・コロンビア州とオンタリオ州で失業率が改善したものの、その他の州ではほぼ横ばいか、やや悪化した。

 

 

2018年8月16日 第33号

 米ワシントン州シアトル空港から10日、乗客を乗せていない旅客機が管制塔の許可なく離陸、海岸沿いを南下しながらアクロバットに近い飛行を行うなどし、約1時間後に空港から40キロメートルほど南西にある、ほとんど無人の小島に墜落した。

 事件が起きたのは、同日午後8時過ぎ。ホライズン航空の76人乗り双発旅客機、ボンバルディア製Q400を無許可で操縦したのは、同社の地上係員リチャード・ラッセル容疑者(29歳)。同社での勤務歴約3年半のラッセル容疑者は、駐機している飛行機の牽引のほか、冬場に機体に着いた霜を除去する作業や荷物の積み下ろしを担当していた。この飛行機には、同容疑者以外誰も乗っていなかった。

 同容疑者が盗み出した飛行機は、ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア空港から到着して、その日の運行を終了、ゲートから離れた貨物・整備エリアに駐機されていた。

 ラッセル容疑者は牽引車を運転して飛行機の向きを180度変え、滑走路につながる誘導路に出やすいようにした後、エンジンを始動し滑走路へ向け移動を開始した。FBI(米連邦捜査局)などは、飛行機免許を取得していないラッセル容疑者が、どうやって飛行機を操縦する技術を身につけたのか、調査している。

 なお民間の小型機以外、ほとんどの航空機には自動車のような鍵はなく、複雑な手順ではあるものの、十分な知識と始動方法を経験・習得していれば、エンジン始動は誰でもできる。

 離陸後、ラッセル容疑者は航空管制官と交信を続けている。普段と同じ落ち着いた口調で、飛行機を人口密集地から避けようと誘導する管制官。ラッセル容疑者の、着陸がうまくいったら自分はパイロットとして採用してもらえるだろうかという問いに対しても、うまくできたら、きっと仕事を与えてくれるだろうと返答、近くに軍の空港があることを伝え着陸を促していた。しかし同容疑者は、しばらく飛び続けたいと、これを拒否している。

 またラッセル容疑者は、アクロバット飛行の一つ、バレル・ロールを試すと言い、実際にこれを行っている。この様子は、地上で目撃していた人が携帯電話で動画撮影している。しかし、旅客機はアクロバット飛行ができる設計ではない上、同容疑者も適切な操縦でこれを行わなかったため、飛行機は急激に高度を失い、最後は海面すれすれまで降下している。

 管制官との交信の中でラッセル容疑者は、自分のしたことで、これまで世話になってきた多くの人を失望させてしまうことを謝ったり、地上に戻って捕まったら終身刑だろうかと心配したりしていた。その一方で、自分のことを頭のねじが2〜3本ゆるんだ『壊れた男』だとも形容している。

 ラッセル容疑者が離陸した2〜3分後には、オレゴン州ポートランドの州兵空軍基地から緊急発進した戦闘機2機が、この飛行機の追尾を開始した。しかし攻撃はせず、旅客機が人口密集地に向かわないよう、警戒していた。

 飛行中、ラッセル容疑者は管制官に対し、燃料の減りが思った以上に早いことを何度か伝えている。やがて管制室では同型機の現役パイロットが交信に加わり、ラッセル容疑者に対し必要な操縦方法を伝え、何とか飛行機を着陸させるよう努力していたが、同容疑者は着陸する意思がないような返答をしていた。

 そして離陸から約1時間後、飛行機は人口20人足らずのケトロン島の森に墜落炎上、ラッセル容疑者の死亡も確認された。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。