2017年6月22日 第25号

 馬好きの夫が親しい友人4人と「フォーエース・ステーブル」という馬の会を作った。そして、馬を飼い始めた。何頭持っていたか知らないが、多い時は11頭は居たらしい。

 メンバーの1人は昔上海で乗馬の騎手だった。彼らは米国の馬市で馬を買い、ラングレーにある牧場でトレーニングした。馬は2歳になると、最初はPNEの競馬場に条件付きで、レースに出せる。

 もう忘れたが、1頭、川の名前がつけられた安い馬を買った。1歳馬だ。彼の名は仮に『フレーザー』としておこう。彼は美しい女性のトレーナーについてトレーニングを受けることになった。1年後、2歳になりPNEのレースに出場が決まった。そして、なんとその駄馬は出場1回目で1位になった。その後しばらくは、とても良い成績でみんなを喜ばせた。

 とうとう6回目の出場となり、また素晴らしい成績で優勝。もう、観ていた私までが幸せ気分だった。夫と息子は記念写真を撮影しに下に降りて行った。まもなくして息子だけ、目に涙を浮かべて悲しそうな顔で席に戻り、「ママ、フレーザーがクレームされたちゃったよ」と言う。私は「なんでクレームされたのよ、ちゃんと勝ったじゃない。2位とあれだけ差があって何で文句があるのよ。クレームされるなんて、おかしいわよ!」と言い返す。

 息子は初めて私が「クレーム」の意味が分かってないのに気が付き、説明を始めた。つまり彼の言うクレームは『フレーザー』が誰かに「買い取られた」ということなのだ。要するに2歳馬をレースに出場させるには、「買い手がついたら売る」という条件付きのレース出場なのだそうだ。6回連続で優勝した『フレーザー』には買い手がついたから売らなくてはならない。そういうことらしかった。

 まもなく席に戻ってきた夫に、「買い戻すことはできないの?」と聞くと彼はこう言った。「うーん、あの馬はね、もう勝てないよ…。あのトレーナーと離れたらダメなんだ」。随分変なこと言うなぁ、と私は思い、更に理由を問いただすと、「『フレーザー』はトレーナーが大好き、あのトレーナーに恋をしている、だから勝てたけれど彼女から離れたらもうだめだ。そして、買い戻しても同じトレーナーにつけてあげられないからね」と答えが返ってきた。不思議な感じがしたが本当だった。その後、どのレースに出場しても『フレーザー』の優勝はなかった。

 フォーエース・ステーブルは馬市で良い馬も買っていた。その1頭が『ラッキーババ』という。彼はフォーエース・ステーブルに来てから、ノースアメリカ一帯、あちこちでレースに出場した。そして4歳馬の時「カナダで最も優れた4歳馬」賞を受賞し、夫はトロントまで授賞式に飛んで行った。『ラッキーババ』がシアトルで最も人気の馬『キャプテンコンドー』を抜いて、「ガバナーズカップ」を取った時の新聞の書き出しが、「Lucky Baba Plays Thief, Steals Condo Thunder -- Captain Condo Loses First Start This Season In Governor's Handicap」であった。馬が人に恋…本当かなぁ?

許 澄子

 

 

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