2019年1月24日 第4号

 ママ、それは間違っているよ。「世界青年の船」と「ピースボート」は違うのよ、ママったらぁ。「ピースボート」はねぇ、お金を出せば誰でも乗れるのよ。そして、「世界青年の船」はね、日本の政府が日本と外国の若者を招待し、約3カ月程船上で世界中の若者が共に生活し、いろいろな国を訪問し、国際親善をする船の旅、その船を「世界青年の船」というのよ。私が乗ったのは、日本政府がカナダの青年を10名招待し、各州から一人ずつ代表がでて乗船したのよ。私は最初リッチモンド代表で、やがてBC州代表になれて乗船が決まったわけ。ユニフォームは帽子から全員揃いの立派なスーツ、靴に至るまでぜーんぶ、日本政府が用意してくれたの。ママは見て知っているでしょう。

 新宿のホテルに私たち参加者全員が集合し、数日、講習会みたいなのがあってね。横浜港から出発したのよ。紀子様がいらしてさぁ。そして、その時は太平洋岸に面したカナダ、アメリカ、メキシコ、グアテマラ、ニカラグア、トンガといろいろな国から若者が招待されたわけ。だからねぇ、もしママが自慢したければねぇ、「世界青年の船に、娘がカナダを代表して乗船できた」と言ったらいいのよ。「ピースボート」ではないのよ、ママぁ!

 この娘は幼い時から本好きで、小遣いはほとんど全部本のために使っていた。今、50歳。彼女の買い集めた本を老婆は捨てられずガレージに段ボールにぎっしり詰めて置いてある。掃除はダメ、整理整頓ダメ、おしゃれもしない、絵も音楽もダメ、旅行が好き。とにかく何より本が好き。探偵小説に始まり、政治、経済、歴史、スポーツ、報道、最初は何でも読んでいたらしい。小学校からずっと大学卒業時もトップ10%の成績、いつも優等生だった。中学卒業の時は最も英語の優れた生徒という賞をもらい、会場全員のスタンディングオベーションに夫と私は涙した。高校の時、学校から作文コンテストに参加。カナダ全国第2位でタイプライターをもらった。雑誌PHPに彼女の書いた話が掲載され、やがて日本で「ジャパンタイムス」の記者になる。ある時、千葉にある孤児院に取材に行った。在日外国人と日本人の間で出生し捨てられ、または親が育てられず送られた子供の家は「野の花の家」と言った。娘はその子供たちに、毎年クリスマスに「各自の希望」を聞いてプレゼントを送ると決め、そのためのグループを作った。最初、参加者はわずか数人だったが、今は150人位になっているという。「野の花の家」も大きくなっていた。プレゼント企画は始まって20年以上、今も続けられている。全ては日本在住の老婆の友人が、たまたま気付いてPHPの雑誌を送ってくれ、「野の花の家」の件もこれまた、娘の企画で始まったと教えてくれた。とにかく、本人は何故かそんな話をしない。しかし、彼女のことを自慢したいのはこの【老婆】だった。それでも、老婆はどうも日常、彼女には自慢より、実はいろいろ文句が多い。それでも何とか自慢しようと、せめて「ピースボート」と言ったら、そうじゃない!「世界青年の船」と訂正された。

 2018年12月13日、老婆は「新報」の第50号に掲載の「青年の船50周年神戸大会に参加して」という投稿を読んだ。それには「僕の人生に輝かしきものがあるとすれば、若い日に日本全国から選ばれし若人と共に、明治百周年記念行事の一つとして総理府(内閣府)により企画された青年の船で1968年秋に東南アジア7カ国を親善訪問できたこと」だったと…。  

 「ああ、これだ!」と老婆は新聞片手に部屋中を歩き回った。さらに内容をよく読めば投稿者は「遠い青春の思い出の中で感じた多様な文化や、人と人の出会いで感じた平和の大切さは、子々孫々まで伝えなければと思うのである」と書かれてあった。この数年、いつの間にか忍耐力が必要な自閉症の子供の研究に取り組む娘を見ながら、この投稿者と同様、彼女が得た貴重な体験が、社会のどこかに生かされるなら、どんなに素晴らしいんだけれどなぁと老婆はつぶやく。

許 澄子

 

 

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