2017年3月23日 第12号

 2月28日、朝起きると、ああ、いいお天気だ! ニュースを見ながらコーヒーを飲み、ちょっと外を見ると、えー、そんなことが! …雪だ!!!「お天気雨」ってあるけど、「お天気雪」って初めて…。へー、お日様が照っているのに、雪が降っているのよね。

 家中が静まり返っている。サンルームへ出ると、昨年暮れから、あれだけの香りを楽しませてくれた白いジャスミンの花は終わり、ブーゲンビリアが薄黄緑色からどんどんピンクに色付いていく。もう20年以上育てているから、私の背よりずっと高くなって年に3回は立派な花(正式には花ではないそうだ)が色を付けてくれる。月下美人もいってみれば、昔日本から友人が1枚の葉を密輸し、私の鉢に植えたもので、これまた私の背よりズーンと大きい。昨年は4回花を咲かせ、香りも楽しませてくれた。今年はどうだろうか?

 娘は「話す相手のいない老人が植木と話しているのですって、淋しいねぇ」と言った。私も毎日話すのはサンルームの植木たち。「淋しい老人」なのだ。そして、またひとり昔話を始める。花や植木は聞いているかは知らないけれど…。

 昔ね、そこで働いていた若い日本人女性、つまり、この老婆が78歳になっても、忘れられない出来事があるの。そこというのは香港の飛行場でね、ベトナム戦争終戦当時のある日、空港のトランジットラウンジの床に、白い布を広げて百数十人の新生児が寝かされていたの。びっくりでしょう?そのころ、米国軍用機がよく飛んできたけれど、ある時、胴体の太い、ちょっと角ばった特殊形飛行機がアウトベイに駐機されてね、それから後に赤ちゃんが床に並べられたのだからね。あの飛行機で運ばれて来たのだと思う。

 「ふにゃふにゃ赤ちゃん」百数十人が白布に包まれ一体ずつ運び込まれ、白布の上に置かれ、皆生きている。普通なら病院のベッドに寝かされているような小さな赤ちゃんなの。でもさ、よくも、これほど沢山の新生児がいたものよねぇ。そして、泣き声もない。本当に母親の身体から今出たばかりのような赤ちゃんばかりでさ、考えてみれば、その赤ちゃんを産んだ百数十人のお母さんがいる訳でしょう? 軍用機でベトナムから運ばれた新生児は香港から客便で米国へ送られていった訳だけど…。あの赤ちゃんたち、米国で育てられ、今はもう50歳は過ぎているはず。あれからどうなったのだろう。

 あの日の帰宅時、空港ビルを出ると、空港の金網フェンスに沿って、たくさんの人が遠く滑走路末に駐機している飛行機に、見えるはずもないのに手を振ったり叫んだりしているの。どうしたの?と聞くと、「あの飛行機内の乗客はベトナムからの難民なのですって。そこに集まっている人たちは親族やら友人で、香港政府が入国許可を下さないから、飛行機は国へ帰ったのよ」。本当に悲しいよねぇ。今起きている難民問題は今さら始まったことではなく、きっと人類の歴史が始まってから、ずっと続いていることなのよね。ああ、私は来世がないと占い師に言われたけれど、「花」になら生まれ変わりたいなぁ。一瞬でも人と安らぎを分かち合えるからねぇ。

許 澄子

 

 

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