アメリカのバラク・オバマ大統領は12月28日、ジャスティン・トルドー首相をワシントンのホワイトハウスでの公式晩餐会に招待する日にちが3月10日に決まったと明らかにした。エネルギーや環境問題、安全保障、経済などが話し合われるとみられている。
アメリカとカナダの関係は、世界でも最も広く親密であり、今回のトルドー首相のホワイトハウス訪問で、その関係はますます強固なものになるだろうとホワイトハウス報道官が声明を発表した。
アメリカとカナダは、保守党前政権時代には、環境問題やエネルギー問題などで意見の食い違いなどがあり、足並みを揃えられなかった。アルバータ州からテキサス州までのパイプライン建設では、昨年大統領が計画している区間の建設を承認しないと発表。長年待たされた末に、環境問題を理由に承認しないと発表したことでギクシャクした感じは否めない。しかし、10月に自由党が政権を奪取したことで、トルドー首相とこうした問題の関係修復もするのではとみられている。
アメリカの大統領がカナダの首相を公式晩餐会に招待するのは1997年以来。当時のビル・クリントン大統領がジョン・クレティエン首相を招待している。
フランスのパリで開かれていたCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に出席していたキャサリン・マッケナ環境・気候変動相は12月9日、これからのカナダの環境政策が国内の天然資源産業、特に石油産業にどのような影響が出るのかは今のところ不透明との見解を示した。
カナダはこれまでCOP会議では環境対策について国際社会と協調することを拒んでいた。それは、保守党政権の天然資源産業保護が最大の理由で、カナダ経済を支える石油産業が、環境対策に積極的に取り組むことにより経済に悪影響が出ることを避けるためと説明していた。
しかし、2015年10月の総選挙で自由党が圧勝。自由党政権ジャスティン・トルドー首相は、環境対策に積極的に取り組むことをCOP21のオープニング演説で自ら公言した。
マッケナ環境相は、「カナダはこれから低炭素経済へ向け努力していく。それがどういう意味を持つのかもう一度検討する必要がある」とパリで記者団に語った。政権は交代したが、天然資源産業がカナダにとって重要な産業であることに変わりはない。
マッケナ環境相は、カナダとして環境対策に積極的に取り組みながら、天然資源産業を含めカナダ全体を通して対策を考える必要があると語った。
カナダの石油産業は、アルバータ州のオイルサンドを海外市場へと販路を拡大していくために、輸送するパイプラインの建設が必要となるが、2015年はアメリカのオバマ大統領がテキサス州までのパイプライン建設計画の承認拒否を発表した。トルドー首相は、アルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州北部沿岸までのノーザン・ゲートウェイ・パイプライン建設に反対で、アジア市場へと販路を拡大しようとしている石油産業にとっては厳しい状況となっている。望みはエナジー・イースト・パイプライン建設計画で、アルバータ州からニューブランスウィック州までをつなぎ、海外へと輸出する。
今回のパリ協定でカナダの石油産業にどのような影響が出るのか、原油価格が下がり続ける中、カナダ経済への影響も大きい同産業への自由党政権の政策が注目される。
カナダ不動産協会(CREA)は12月15日、11月の住宅市場は、販売戸数、価格ともに前年同月比で上昇したと発表した。
11月の住宅販売件数は前年同月より10・9パーセント増加し、住宅価格指標は7・1パーセント上昇した。
全国住宅市場予測では2015年は上方修正。住宅販売数では、9月の予想時の3・3パーセントから5パーセントに、住宅価格では6・2パーセントから8・4パーセントに修正した。2016年はやや落ち着くと予測。住宅販売数は1・1パーセント減、住宅価格は1・4パーセント上昇としている。
ただ、地域的に大きな差があるとも予測。不動産の高騰が続くトロントやバンクーバーのあるオンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州では、相変わらず販売数、販売価格とも2015年、2016年とも上昇傾向が続くが、アルバータ州、サスカチワン州、ニューファンドランド&ラブラドール州の石油産業が盛んな州では、原油価格の急落による影響が大きく、住宅市場も落ち込むのではと予想している。
カナダ統計局は12月14日、第3四半期の国民の負債が過去最高になったと発表した。一世帯の返済負担率は163・7パーセント。第2四半期の162・7パーセントから悪化した。
負債はクレジットカードや住宅ローン、自動車ローンなどが含まれ、最も伸び幅が大きかったのは1・4パーセント増の住宅ローンだった。専門家は、消費者は自分の許容範囲以上の負債を抱え込んでいるのではないか、特に住宅市場の高騰が続く市場でその傾向があるのではないかと危惧している。
カナダ銀行スティーブン・ポロズ総裁は12月15日、金融制度報告を行い、不安定要素として世帯当たりの負債が過去最高に膨らんでいること、住宅市場が不均衡に高騰し続けていることをあげた。
国民の負債については、前日、カナダ統計局が第3四半期の負債返済率が過去最高となったと発表。その原因の一つが住宅ローンだった。
カナダ銀行は2015年に入り、2回金利を引き下げ、現在は0・5パーセントとなっている。2日に発表した金融政策では金利は据え置いたが、現在はその必要がないが必要ならばマイナス金利という措置も念頭に置いていることを13日に明かした。
しかし、カナダ銀行が懸念している負債増額の要因が住宅ローンであり、低金利政策が国民の住宅購買意欲を促進している。そのため、特定の住宅市場で高騰が続く要因をカナダ銀行が作っているとの批判もある。
ポロズ総裁は、住宅市場の高騰を抑える規則変更はまだ可能と語り、住宅バブル崩壊のシナリオを避ける方法があることを示唆した。しかし、詳細については語らなかった。
自由党政権は11日、モルノー財務相が住宅購入時の最低保証金額を引き上げると発表。影響は小さい範囲に止まるとみられているが、これ以上は今のところ規則を変更する予定はないと語った。この日、カナダ不動産協会が発表した11月の住宅価格は前年同月比で上昇。トロント、バンクーバーは特に上昇幅が大きかった。
このまま住宅価格が特定の市場で高騰し続けると、負債増額率が所得成長率を上回る状況が続くことになる。現在、原油価格の下落でカナダ経済が伸び悩む中、失業率も悪化し、負債額の増加と住宅価格の高騰は、カナダ経済にとって大きな危険をはらんでいるという認識は変わらないと語った。