イスラム教の創始者、ムハマンドを歌った伝統的な歌『タラ・アル・バドル・アライナ』。
イスラム教の国々では子供から大人まで幅広く知られているこの歌を、12月3日にカナダの小学生が歌った動画がインターネット上で公開され、世界中から賞賛されている。
7世紀に起こったとされるタブクの戦いから、メディナに凱旋したムハマンドを迎え入れるために住民が歌ったというこの歌は、1400年の歴史を持ち、イスラム教関係の歌としては最古のもののひとつ。
この歌を合唱したのは、オンタリオ州オタワ地区の小学校から集まった4年生から6年生を主体とする300人近くの生徒たち。そのほとんどはフランス語公立小学校からの生徒だと、合唱を企画したオタワ・ラサール高等学校の合唱ディレクター、ロバート・フィリオンさんは取材に語っている。同高校は、この合唱が行われた会場でもある。
ちょうどシリアからの難民の第一弾がカナダに到着するのと同時に公開されたこの動画。そのタイトルにも『Welcome To Canada Syrian Refugees』とあるが、「毎年このイベントでは異なった文化の歌を取り上げてきており、ほぼ1年前からイスラム教文化の歌を取り上げようと企画してきた」ので、カナダ政府のシリア難民受け入れとは偶然時期が重なっただけだと、フィリオンさん。
合唱に参加した生徒の親が撮影した動画がインターネット上で公開されているのを、フィリオンさんが知ったのは12月11日のこと。その翌日には、彼の元にはこの動画について世界中からの電子メールが次々と寄せられるようになった。
「こんな反響があったことは今までにはなかった、信じられない」とフィリオンさん。自分たちのちょっとしたコンサートが、世界中の人々に楽しんでもらえてうれしいと語っている。
動画のサイトには、「自分はアラブ人だが、このビデオには泣けた。たっぷり泣けた」、「世の中には、まだ希望がある」などのコメントのほかに、カナダに対する感謝のメッセージなどが数多く寄せられていた。
「音楽でインパクトを与える。これこそが音楽を続ける理由だ」とフィリオンさん。しかし、これほどのインパクトを与えられるとは彼にも予想できなかったようだ。