2017年3月9日 第10号

 カナダ国内のシェフやメディア関係者、ライター/ブロガーなどによって選ばれる、カナダのベスト・レストラン100。その2017年版が2月28日に発表された。

 今年は82人の投票によって順位が決定したが、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー・イーストサイドのレストランが、新規開店レストラン部門の最優秀賞に輝いた。

 このレストランは、同市ペンダー通りぞいにある、キッサ・タント(Kissa Tanto)。ベスト100のランキングでは14位だが、オーナーのタニス・リンさんは、かつて訪れた東京のジャズ喫茶のような、ロマンチックで落ち着いた雰囲気を目指して、このレストランを作ったという。

 同市の中華街にある中華レストラン、バオ・ベイ(宝貝)も経営するリンさんとともに、長年料理長を務めてきたジョエル・ワタナベさんとスーシェフ、アラン・チョウさんらが提供するのは、和食とイタリアンのフュージョン料理。メニューの一部を紹介すると、ホームメードの発酵生地を用いたパン(オリーブオイルと海苔バター添え)、揚げオリーブ、サフランとパルメザンチーズを盛った茶碗蒸し、ラム肩肉のナスフリッター(ガーリック味)と卵黄添えなど。

 BC州からトップ10入りしたのは、ローズウッド・ホテル・ジョージア内のホークスワース・レストラン(6位)のみ。ちなみに1位はオンタリオ州トロントのレストラン、アロ(Alo)。そのほかもトロントとモントリオールのレストランがベスト10を席巻、10位に辛くもアルバータ州カルガリーのピジョンホールが滑り込んだ。

(ベスト100のランキングは、『Canada’s』、『100』、『Best』、『Restaurant』で検索)

 

 

2017年3月2日 第9号

 ジャスティン・トルドー首相は2月22日、4選挙区での補欠選挙を実施すると発表。19日発表した1選挙区と合わせて5選挙区で4月3日に補欠選挙が行われる。

 自由党が2015年10月に政権を取って以降、初めてとなる選挙。首相に就任して1年半、トルドー首相への国民の評価が示される。

 補欠選挙が行われる選挙区は、元自由党議員の3選挙区と元保守党議員2選挙区。ケベック州セイント・ローレント選挙区はステファン・ディオン前外相の選挙区で、1月の内閣改造で欧州・ドイツ大使に任命された。オンタリオ州マーカム・ソーンヒル選挙区はジョン・マッカラム前移民相の選挙区。マッカラム前移民相も内閣改造で中国大使に任命され、議員を退いた。同州オタワ‐バニエ選挙区は元自由党モーリル・ベランガー元議員の選挙区。ベンラガー元議員はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症、ギリギリまで議員として活動していたが昨夏に死去。8月23日から空席となっていた。

 アルバータ州カルガリーヘリテージ選挙区は保守党スティーブン・ハーパー前首相の選挙区。2015年に保守党が大敗し党首を辞任したが、昨年議員を辞職した。同州カルガリーミンドナポール選挙区は保守党ジェイソン・ケニー元雇用社会開発相の選挙区。ケニー元雇用相は国会議員を辞職し、現在はアルバータ州進歩保守党党首選に立候補している。

 保守党は現在14人が立候補している党首選の真っ只中で、ローナ・アンブローズ暫定党首にとってこれが党首として最後の大仕事となる。

 ただ、自由党、保守党ともに、前回の選挙では得票率55パーセント以上という元閣僚級議員の選挙区だけに、どちらかの党が全議席を獲得するような大きな番狂わせはないのではとみられている。

 新民主党(NDP)も現在党首選が本格的に始まったばかりで、補欠選挙までにNDPが大きく躍進するということもないとみられている。

 

 

2017年3月2日 第9号

 ブリティッシュ・コロンビア州自由党政権が来年度予算案を2月21日、発表した。マイク・デヨン財務相は「州民還元予算」と名付け、好調なBC州経済の恩恵を州民に還元する予算案だと強調した。

 今年5月に行われるBC州議会議員選挙直前の予算案は、選挙をにらんだ大盤振る舞いな内容となった。

 ヘルスケア、児童福祉、教育、住宅などで減税や負担減などが目立った。企業への減税も盛り込まれた。一方で、環境問題対策や弱者救済にはほとんど手は付けられていなかった。また所得税や州税の減額も盛り込まれなかった。

 最も注目されたのは健康保険料(MSP)の減額。年間世帯所得が12万ドル未満の世帯で保険料を50パーセント減額するとした。これにより大人1人当たり年間約450ドル、家族4人の場合約900ドル減額になるとしている。実施は2018年1月1日から。減額は自動的に行われるわけではなく、申請しなければならない。デヨン財相は将来的にはMSP廃止も視野に入れていると語った。

 これに野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首が反論した。これまでBC州政府は保険料をずっと引き上げてきたと指摘。選挙前になって急に減額という自由党政権の子供だましな予算案に州民は騙されないだろうと批判した。「クリスティ・クラーク州首相は自分の州首相としての地位を保持したいだけだ」とホーガン党首。保険料減額はNDPがずっと主張してきた政策。「NDPの政策を近々発表する。自由党とは違った選択肢で州民に貢献できると確信している」と語った。

 法人税減税では、中小企業への法人税をこれまでの2・5パーセントから0・5パーセント減額する。マニトバ州に次いで低い税率と胸を張った。さらに企業の電気料金にかかる州税を2年で廃止するという。まずは2017年10月1日から現在の7パーセントを3・5パーセントに減額。2019年4月までに完全に廃止するとしている。市町村、病院、学校は対象外。個人住宅ではすでにPSTは課税されていない。

 その他には、教育に対しては3年間で3億2千万ドル、児童福祉には子供家族開発省へ2億8700万ドルの予算を計上、さらに5700万ドルが子供のメンタルヘルスケアや薬物問題解決に充てられている。

 他にもデイケアの確保、住宅初購入者への支援などが盛り込まれた。

 来年度予算案は、歳出が502億ドルとなり今年度の491億ドルより2・3パーセント増加する。来年度の黒字額は2億9500万ドル。今年度(今年3月31日末まで)は15億ドルとなると発表。昨年11月に試算した22億ドルから下方修正した。

 今後のBC州の経済見通しについては、好調な州経済を強調しながらも、現在アメリカとの間で続いている製材取引交渉の行方や不動産による収入減に不安材料があるとしている。経済成長は、今年度は3パーセントと予測。来年度は2・1パーセント、2018年度は2パーセントしている。

 BC州の来年度負債額は700億ドル。今年度の670億ドルから増額する。負債額は増額を続けているが、今後もその傾向は変わらず2019年度には730億ドルになるだろうと政府は予測している。

 企業や社会保障に大盤振る舞いな一方で、所得税、州税の個人への減税は盛り込まれなかった。また環境問題対策も盛り込まれず、環境保護活動家からは非難の声が上がっている。クラーク州首相はキンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張工事を承認したばかり。環境対策が期待されていた。

 他にも障害者に対する社会福祉には手が付けられず11年間連続予算凍結となった。

 前回総選挙前の予算案でBC州の将来の確実な歳入源として盛り込まれた液化天然ガス(LNG)についても今回の予算案では見られなかった。高騰する住宅価格への対策も盛り込まれなかった。

 

 

2017年3月2日 第9号

 連邦保守党党首選に向けた党首討論会が2月24日、オタワで開催された。今回はいつもの全員がステージで討論する形式から、グループ分けでの討論形式を導入。ヘルスケア、環境、天然資源開発、トランプ大統領、北米自由貿易協定(NAFTA)などカナダが抱える問題について議論を交わした。

 この日は1980年代に現在の保守党の基礎を築いたプレストン・マニング氏が講演。「トランプ信者のような人々の台頭への対抗策は、トランプ信仰否定ではない。本質を明確にできる党首が有権者をまとめ、否定的な政治的エネルギーを肯定的なものへと方向転換することだ」と語った。

 保守党党首選ではケリー・リーチ元労働相が、全移民に対して「カナダの価値」を審査する制度を導入すべきとして議論を巻き起こしている。リーチ議員のトランプ的政治手法には同党からも批判の声が上がっている。さらに28日には同議員は、自身の主張を動画で紹介した映像を発信。内容よりは、そのカメラ目線の不自然さにソーシャルネットワークが反応したが、移民対策についての主張を繰り返した。

 党首選のもう一つの注目オラリー氏は、24日の討論会には出席したものの、28日にエドモントンで開催された討論会へは「形式に納得いかない」として欠席した。しかし同日に討論会会場のすぐ近くでサポーターを集めて持論を展開した。エドモントンでの討論会は保守党公式のため、欠席した場合は1万ドルの罰金を科せられる。オラリー氏は個人の財源から支払うと発表している。

 このエドモントン討論会は英仏両語で開催された。他の立候補者は仏語が得意でないオラリー氏が逃げたと批判された。

 保守党党首は5月28日に決定する。

 

 

2017年3月2日 第9号

 テレビパーソナリティーとして知られるケビン・オラリー氏が党首選に立候補して14人という候補が出揃い、熱を帯びる保守党党首選の陰で、新民主党(NDP)の党首選がようやく動き出した。

 2月27日ケベック州選出ガイ・キャロン議員が立候補を表明。26日に出馬表明したオンタリオ州選出チャーリー・アンガス議員、1月に一番乗りで出馬表明したブリティッシュ・コロンビア州バーナビー‐ニューウエストミンスター選挙区選出ピーター・ジュリアン議員に続いて3人目となった。

 NDPは2015年10月の総選挙で大きく議席を減らし、それまでの野党第一党から第二党に転落。2016年4月の党大会でトム・マルケア党首続投の是非について投票し、党首交代が決定した。昨年7月には党首立候補者受付開始となったが、今年1月まで一人も手を上げなかった。

 党首決定は今年10月。それまでに党首討論会は7回行われる予定。第1回は3月12日オタワで実施される。これまでのところ3人しか立候補していないため、最初の討論会までどのくらいの立候補者が名乗り出るのか注目されている。

 すでに3人とも出馬は表明しているものの、正式に立候補登録は終えていない。立候補希望者は登録料3万ドル、党員500人の署名、そのうち半分は女性から、最低100人はビジブルマイノリティー(白色人種、先住民族以外の民族グループ)、先住民族、同性愛者、障害者から署名を集めなければならないとされている。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。