2017年3月2日 第9号

 カナダ交通安全委員会は2月20日、2015年に起きた乱気流による乗客負傷事故の調査報告書を発表、同時にシートベルト着用がいかに重要であるかを啓蒙する動画も公開した。

 この事故は2015年12月30日、中国・上海を出発、トロントに向け飛行中だったエアカナダ88便(乗客332人、乗員19人)が北米大陸に差しかかった時に起こった。

 航路上で激しい乱気流を予報する連絡を受けた同機は、予想される空域に差しかかる35分ほど前にシートベルト着用のサインを点灯させると共に、乱気流が予想される空域に入ることを英語、フランス語、中国語で何度もアナウンスし、シートベルトの着用を求めていた。

 しかし飛行機が乱気流に突入した時には、まだ多くの乗客がシートベルトをしていない状態だったと、報告書は指摘している。この激しい乱気流で、重傷者1人を含む21人が負傷。同機はアルバータ州カルガリー空港に緊急着陸して、負傷者をカルガリー病院に搬送した。

 当時の状況を乗客の一人は、シートベルトをしていなかった乗客の体や、固定されていなかった様々なものが一瞬にして宙に浮いたと表現。浮いた乗客のひとりは、そのまま頭でプラスチック製の天井を突き破ったあと、座席に落下したという。

 報告書は、乱気流が予想される空域に突入する前に、パイロットはシートベルト着用を求めると共に、乱気流遭遇時の機体へのダメージを避ける飛行速度まで減速する措置を取っていたことで、甚大な被害には至らなかったと結論付けている。その一方で、パイロットに対する乱気流や、その原因となるジェットストリームの教育には、網羅されていない部分があったと指摘している。この事故を受け、エアカナダは運行管理業務(ディスパッチ)に、乱気流回避に必要な情報をパイロットに提供する指針を通達している。

 

 

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