2017年3月2日 第9号

 ブリティッシュ・コロンビア州自由党政権が来年度予算案を2月21日、発表した。マイク・デヨン財務相は「州民還元予算」と名付け、好調なBC州経済の恩恵を州民に還元する予算案だと強調した。

 今年5月に行われるBC州議会議員選挙直前の予算案は、選挙をにらんだ大盤振る舞いな内容となった。

 ヘルスケア、児童福祉、教育、住宅などで減税や負担減などが目立った。企業への減税も盛り込まれた。一方で、環境問題対策や弱者救済にはほとんど手は付けられていなかった。また所得税や州税の減額も盛り込まれなかった。

 最も注目されたのは健康保険料(MSP)の減額。年間世帯所得が12万ドル未満の世帯で保険料を50パーセント減額するとした。これにより大人1人当たり年間約450ドル、家族4人の場合約900ドル減額になるとしている。実施は2018年1月1日から。減額は自動的に行われるわけではなく、申請しなければならない。デヨン財相は将来的にはMSP廃止も視野に入れていると語った。

 これに野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首が反論した。これまでBC州政府は保険料をずっと引き上げてきたと指摘。選挙前になって急に減額という自由党政権の子供だましな予算案に州民は騙されないだろうと批判した。「クリスティ・クラーク州首相は自分の州首相としての地位を保持したいだけだ」とホーガン党首。保険料減額はNDPがずっと主張してきた政策。「NDPの政策を近々発表する。自由党とは違った選択肢で州民に貢献できると確信している」と語った。

 法人税減税では、中小企業への法人税をこれまでの2・5パーセントから0・5パーセント減額する。マニトバ州に次いで低い税率と胸を張った。さらに企業の電気料金にかかる州税を2年で廃止するという。まずは2017年10月1日から現在の7パーセントを3・5パーセントに減額。2019年4月までに完全に廃止するとしている。市町村、病院、学校は対象外。個人住宅ではすでにPSTは課税されていない。

 その他には、教育に対しては3年間で3億2千万ドル、児童福祉には子供家族開発省へ2億8700万ドルの予算を計上、さらに5700万ドルが子供のメンタルヘルスケアや薬物問題解決に充てられている。

 他にもデイケアの確保、住宅初購入者への支援などが盛り込まれた。

 来年度予算案は、歳出が502億ドルとなり今年度の491億ドルより2・3パーセント増加する。来年度の黒字額は2億9500万ドル。今年度(今年3月31日末まで)は15億ドルとなると発表。昨年11月に試算した22億ドルから下方修正した。

 今後のBC州の経済見通しについては、好調な州経済を強調しながらも、現在アメリカとの間で続いている製材取引交渉の行方や不動産による収入減に不安材料があるとしている。経済成長は、今年度は3パーセントと予測。来年度は2・1パーセント、2018年度は2パーセントしている。

 BC州の来年度負債額は700億ドル。今年度の670億ドルから増額する。負債額は増額を続けているが、今後もその傾向は変わらず2019年度には730億ドルになるだろうと政府は予測している。

 企業や社会保障に大盤振る舞いな一方で、所得税、州税の個人への減税は盛り込まれなかった。また環境問題対策も盛り込まれず、環境保護活動家からは非難の声が上がっている。クラーク州首相はキンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張工事を承認したばかり。環境対策が期待されていた。

 他にも障害者に対する社会福祉には手が付けられず11年間連続予算凍結となった。

 前回総選挙前の予算案でBC州の将来の確実な歳入源として盛り込まれた液化天然ガス(LNG)についても今回の予算案では見られなかった。高騰する住宅価格への対策も盛り込まれなかった。

 

 

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