トロントでも活躍中!

「私には完全な英語の環境と、もっと北米の人の髪の毛を勉強できる環境が必要でした」
バンクーバーのヘアサロンで400人もの顧客を抱えてきた岩迫由夏さんは、2010年にトロントの「worldSALON」に移った理由をそう語る。転職後も乗りに乗って、果敢にチャレンジを続ける由夏さんに仕事への思いを聞いた。

多くのファンを得る秘訣は?
正直自分ではわかりません。ただ、切る前にしっかりコンサルテーションし、できるだけお客様の理想に近いもの、一人一人に似合うスタイルを探す努力はしています。あとは、あまり時間をかけすぎない事にも気を付けています。

地元顧客への対応から感じていること、対応で気を付けていることは?
まず自分の髪へのはっきりとした考えを持つ人がかなり少ないです。また考えがあっても、その国独自のファッション性を理解するのが大変ですね。人種によって、髪質、量、頭の形が違うので、そこに気を付けないといけないですし。他はどの国の人も変わりません。丁寧に心を込めて接客すれば、お客様にも伝わると思います。私はカットを始める前に、コンサルテーションに続くシャンプーで緊張感をほぐし、その後のヘッドマッサージでリラックスしてもらうようにしています。これだけでもお客様の心を少し開く事ができます。

バンクーバーで大人気となりながらも、トロントに移ることを選んだのはなぜですか?
バンクーバーで7年過ごし、何か変化がほしかったのが一番の理由です。安定した環境もいいのですが、やり残した事が多い気がしていました。そして英語力、仕事とも、次のステップに行きたかったのです。

現在のサロンでのトップスタイリストとして、スタッフの人たちに意識して伝えていることはどんなことですか?
何か問題があると、皆、他の人や環境のせいにしがちですが、重要なのは自分自身がどうあるべきかだと思うので、自分の仕事に誇りを持って、プロの美容師として責任を持った行動をするよう、次の世代に伝えていこうと心がけています。また一生懸命やらないと、感動も感謝も情熱も生まれないし、感じもしないという事もわかってほしいという気持ちでいつも皆と接しています。

この仕事にかかわっての印象的な経験は?
2012年5月、化粧品会社MACのプロモーションビデオ撮影とショーのお手伝いのため、フロリダに出向きました。そこにNYの有名なカリスマスタイリスト、ダフィさんが来ていて、とてもラッキーな事に彼から指名を受けて、彼のメインアシスタントを務める機会をいただきました。ダフィさんは、雑誌VOUGEの表紙なども手がけ、パリコレでも活躍されている方です。彼から “You can do this, I trust you. ”と言われ感激しました。一生の思い出となる経験です。

仕事を通じて何を実現したいと考えていますか?
私自身のスタイルを表現する事で、お客様にも表現する楽しみを伝えたいと思っています。夢はいつか自分で小さなオーガニックの店を持つことですね。

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「人種による髪質や頭の形の違いに驚き、違いを楽しみ、生まれ育った所ではない国でお客様の笑顔を見るのが、毎日の小さな感動」という。真剣な接客の中でもエンジョイする気持ちを忘れない。プロの仕事人、由夏さんの魅力の秘密がここにあるようだ。

(写真提供 岩迫由夏さん、取材 平野香利)

 

岩迫由夏(いわせこゆか)さん

高校卒業後、ヘアとエステサービス併設のサロンに就職。その後、美容師免許を取得。ハードな練習と長時間労働のために病気を患う。そこで美容から離れ、自分の人生を見つめた際に海外行きを思い立つ。2002年ワーホリでカナダへ。バンクーバーのヘアサロンでマネージャーを務めた後、知人の紹介で、トロントで名の知れたヘアスタイリスト、ジョン・スタインバーグさん(2011年他界)の仕事を手伝うチャンスを得る。ジョンさんから、彼のもとで長年経験を積んで独立したブライアンさん(ヘアサロン「worldSALON オーナー」)の紹介を受け、エコ、オーガニックに力を入れている現在の職場へ。

 

2013年1月1日 第1号 掲載

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