今シーズンで25周年を迎えたバレエ・ヨーガン・カナダ。トロントを本拠地とするこのバレエ団は、古典ものから新作までさまざまな作品を披露してきている。同団には斎藤浩人さんと赤塚華奈江さんの二名の日本人バレエ・ダンサーが活躍している。二人に話を聞いた。

 

Profile:斎藤浩人(さいとうひろと)

兵庫県神戸市出身。7歳で神戸の貞松・浜田バレエ学園にてバレエを始める。1996年に渡英し、英国国立バレエ・スクールに留学する。数々の賞を受賞して卒業後、18歳の時に香港バレエ団に入団。27歳より本拠地をトロントに移しバレエ・ヨーガン・カナダへと移籍する。

Profile:赤塚華奈江(あかつかかなえ)

北海道札幌市出身。7歳の時、石川みはるバレエ研究所でバレエを始める。17歳の時にドイツへ、その後ポルトガルへバレエ留学。ドイツのDresden Semperoper、カナダBC州のCoastal City Balletを経て、昨年よりオンタリオ州のバレエ・ヨーガン・カナダへと移籍する。

バレエ・ヨーガン・カナダでの活動について
斎藤浩人さん(以下斎藤):同団には最初からプリンシパル・ダンサー(主役等を踊るダンサー)として移籍してきたので、移籍以来ほとんど全ての作品で主役を踊らせてもらっています。今シーズンからは、Artistic Working Groupの一員として、同団のクラスを教えたり、リハーサルの指導もすることもあります。夏のサマー・プログラムでも指導を勤め、管理的立場にもなり始めました。

赤塚華奈江さん(以下赤塚):去年の夏から同団に移籍しました。今まで知ってるバレエ団とは比べられないほど忙しく公演数も多いですが、それが本当に自分を成長させてくれていると思います。ここで『踊る』ということがもっともっと好きになりました。「とにかく踊りたい」と自分をこんな気持ちにさせてくれるバレエ団には今まで出会ったことがなかったです。

今回公演を行った「白鳥の湖」での役どころについて
斎藤:今シーズンのツアー用の作品「白鳥の湖」では、主要男性役のジークフリード王子と、悪役ロットバルトの二つの役を交代で踊っています。

赤塚: 私は四羽の白鳥や、宮廷でのダンスを踊っています。その他にも色々な役をさせていただいてます。

これからの抱負について
斎藤:一つ一つの舞台を大切に踊りきることですね。このバレエ団はカナダ中をツアーで回るため、各地で素晴らしいお客様と出会えます。貴重な時間を割いて劇場に足を運んでくれた皆様に、その時に出来る自分の最大の踊りをお見せすることを何よりも大切にしたいです。後輩の育成、振付けや指導を通して、若いメンバーやトロントの芸術を愛している仲間達ともっと踊りに触れて頂けるような活動をしていきたいです。そして今まで活動してきた場所との繋がりをもっと強くしていきたいですね。日本、イギリス、香港、そして、カナダでバレエという芸術を通して、芸術の価値を高めるよう最大の貢献ができればと思っています。

赤塚: 踊りはもちろんですが、演技を含め自分自身をもっと磨いていきたいです。日々の生活から色んなことを観察して自分の中に取り込んでいきたいです。このバレエ団では舞台に立っている自分でさえも鳥肌が立つくらい感動的なシーンがあります。観に来て下さるお客様方にもきっと感動を与えられると信じています。会場まで足をお運び頂けたら嬉しいです。

バレエ・ヨーガン・カナダの「白鳥の湖」は記者が久しぶりに鑑賞した演目だった。バレエを見ていると途中で退屈になり居眠りしてしまったことのある人と同行していたが、「今回の舞台は見応えがあって目を見張った」と言っていた。
悪役のロットバルトに扮した斎藤さんは、マスクをつけて踊る部分が多かった。顔の表情が見えなくても、彼の表情豊かな身体の動きで役柄の感情が十分に伝わってきた。長年の稽古で鍛え、幾つもの公演をこなして磨いてきた技術を余すところなく披露してくれた。宮廷でのダンスや四羽の白鳥を踊った赤塚さん。小柄な身体でありながら、他のダンサーに引けを取らない細やかで繊細な踊りを見せてくれた。観に来て下さるお客様と一緒に素敵な時間を過ごしたいという気持ちを踊りを通して表現している姿が印象的だった。二人のこれからの活躍が楽しみである。

(取材 北風かんな)

バレエ・ヨーガン・カナダ公式サイト www.balletjorgen.ca

 

2013年2月28日 第9号掲載

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。